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ディープラーニングとは?
ディープラーニングとは、AIの学習機能の一つです。
深層学習とも呼ばれ、ルールやパターンをAIに学習させ、人間の脳のような多層的構造で高度なパターン認識や予測をおこなう技術となります。
ディープラーニングの仕組み
ディープラーニングの構築には、ニューラルネットワークが利用されます。
ニューラルネットワークは、人間の脳神経ネットワークを参考として構成されたネットワークモデルです。ニューラルネットワークは入力層・隠れ層(中間層)・出力層の3層構造となっており、それらが互いに細かく結びつくことで、複雑な判断が可能となります。
- 入力層:分析・判断に使用するデータを入力する
- 隠れ層(中間層):入力されたデータを細かく分析する
- 出力層:分析を踏まえた結果を出力する
隠れ層を増やして多層化することで、より複雑な情報も分析できます。最近のディープラーニングで使われるモデルは「ディープニュートラルネットワーク」と呼ばれ、当初2~3層で構成されていた隠れ層が現在では150前後にまで増やされています。
ディープラーニングが注目される理由
ディープラーニングが注目されている理由として、おもに次の2点が考えられます。
- 学習によって情報処理の精度が上がる
- コンピュータの処理能力が向上した
ディープラーニングでは、利用頻度が増えるたびにそのデータを蓄積・解析し、情報を修正して最適解を導くように学習します。また、コンピュータの処理能力向上の恩恵を受け、大量のデータ分析が可能となった現在、情報処理のスピードが飛躍的にアップしています。
近年のソフト面・ハード面の向上によって、さまざまなデータの解析が素早くできるようになりました。ディープラーニングが実生活で利用できるレベルになってきたことで、幅広い分野での利用が期待され、各分野からの注目を集めています。
機械学習との違い
機械学習とディープラーニングは同じような意味合いで使用されますが、意味するところは少し違っています。
機械学習は、設定されたデータについて機械を用いて収集し、学習させるシステムです。集めるデータの定義や解析には人間の入力が必要となり、自分での判断は基本的にできません。
ディープラーニングは、自分で収集・学習したデータから自動で答えを出すシステムです。人間が介入しなくても学習する部分が、機械学習よりさらに進んだ技術であるといえるでしょう。
ディープラーニングでできること
ディープラーニングの活用で具体的にできることについて、順に説明します。
画像の認識
ディープラーニングの利用で、画像や動画の高度な認識が可能です。
手書き文字や顔認証など、曖昧な情報でも隠れ層で特徴を分析し、何の映像・画像かを判断します。
音声の認識
人間の声を認識し、テキストとして入力したり、個人を識別したりする技術も、ディープラーニングを利用することで可能となります。
自然言語の処理
日常的に使う話し言葉や書き言葉といった自然言語を、コンピュータに理解・処理させる技術です。
ディープラーニングによって、人間の言語処理能力に近い能力がつけられます。
異常の検知
過去のデータから得られた情報によって、機械の故障や異常をいち早く検知できる能力です。
その他
市場予測・危険予測などのシミュレーションや、将棋・囲碁などのゲームにも、ディープラーニングの技術が使われています。
ディープラーニングの活用分野
上記であげた方法を組み合わせて、幅広い分野のさまざまな場面で活用されています。
医療
医療の分野では、画像認識や異常検知の技術などを生かした活用方法が見られます。
- 画像認識を利用し、レントゲンやMRI画像からの病巣発見
- 薬の分子構造を解析し、新薬発見のプロセス短縮
- AIロボットによる手術支援
- カルテ電子化による治療法提案 など
金融
金融分野では、シミュレーションや認証技術がおもに活用されています
- 顔認証による不正アクセスの検知
- 株価の予測
- 自動売買システム
- 金融審査の効率化 など
製造
異常検知や画像認識技術の活用が、製造分野では多く見られます。
- 産業ロボットの制御・調整
- 画像認識による不良品検知
- 生産ライン・生産管理の自動化 など
自動運転
自動車の自動運転には、ディープラーニングが有効です。
- 過去データからの状況判断学習
- 画像認識での周囲の状況把握
- センサー・カメラによる障害物の検知 など
マーケティング
マーケティング分野では、オンライン・実店舗ともにディープラーニングが活用されます。
- 類似画像から欲しい商品を検索
- 過去の履歴から趣味嗜好を分析し、需要の高い商品を提案
- 来店予測・市場予測
- 実店舗における画像を使った棚割提案 など
ディープラーニングの活用事例
ここでは、実際にディープラーニングを活用している、具体的な事例を紹介します。
類似商品の検索
画像認識によって、類似商品の検索が可能となるシステムを導入する企業が見られます。
中古品売買をおこなうサイトでは、アプリ上で写真を読み込むことで商品検索が可能となる「写真検索機能」を導入しました。「商品名がわからない」「写真と同じ商品が欲しいが検索できない」といった意見に対応し、これまで探せなかった商品を簡単に探せるシステムを、ディープラーニング機能を用いて構築しています。
また、オークションサイトを運営する企業では、ディープラーニングによって偽物を判定するシステムを開発しました。これまでも機械学習で同様のシステムを運用していましたが、ディープラーニングを用いたシステムでは、検知精度が約3.1倍に向上しています。
画像を用いたシステムでは、検索・売買のどちらにも有効なシステム構築が可能となるよい事例です。
問い合わせへの自動応答
言語処理能力を活用し、問い合わせへの自動対応システムを構築した事例があります。
ある新聞社では「読者からの新聞販売店の連絡先に関する問い合わせ」に対して、ディープラーニングと日本語処理技術を組み合わせた音声対話に変更しました。2ヶ月間の検証の結果、自動応答での完結率は70%以上と高い数値となっています。
その結果を踏まえて自動応答の対応範囲を広げ、すべての問い合わせの2割程度を自動応答で完結させる見通しが立てられています。
ディープラーニングの利用によって、人的負担を減らした好例だといえるでしょう。
自動車業界での利用
自動車業界では、ディープラーニングは自動運転で取り扱われている印象が強いです。しかし、それ以外の分野でもディープラーニングが積極的に活用されています。
自動車に使われる部品製造の企業では、不良品検知に画像認識技術を活用した設備を開発しました。開発された検査設備は多種多様な部品検査に適用され、現在は自社だけではなく他の部品製造業者へも提供されています。
自動車製造工場でも、車体プレス工場における不良品検査でディープラーニングの実証実験に取り組みました。数百万枚の画像データを収集し、ピクセル単位の精度で不良品発見を目指して開発されています。
販売部門でもAIを活用した営業が進められており、業界全体でディープラーニングの活用が進められています。
新素材・新薬の開発
化学品の分野でも、ディープラーニングの活用が見られます。
ディープラーニングを利用して、化学式から化合物の特性を予測する技術があります。現状では最終製品の提案まではまだ進められず、現状はヒントを得るといった利用法が中心です。
しかし、データに基づき予測されるデータを利用してシミュレーション・実験を進めることで、新素材や新薬開発のスピードが速くなります。今後さらにデータ収集して学習させることで、近い将来には製品レベルの提案も期待できるでしょう。
医療分野でのさまざまな利用
医療分野では、過去に蓄積されたデータから早期治療を目指す取り組みが見られます。
がん病巣から発する臭気成分のデータをディープラーニングで学習させ、臭気によってがんを判定する技術も開発されました。また、超音波検査で見られる影の自動検出や、アルツハイマー・くも膜下出血など脳の分野でも画像を用いた早期発見が進められています。
人間では見つけられない病気を、ディープラーニングで早期発見できる技術開発は、今後も積極的に進められるでしょう。
まとめ
IT技術の発達とともに、ディープラーニングの活用が幅広い分野で進められています。ディープラーニングは人間の脳細胞をもとにして構築されたシステムで、今後さらなる発展が期待できます。
ディープラーニングの発展によって、人類を超える処理能力があるAIが、近い将来誕生するかもしれません。しかし、ディープラーニングはあくまでツールの一つです。うまく利用できるよう、ディープラーニングの知識をあらかじめ持っておくことが重要となるでしょう。