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軟包装とは?
軟包装とは、柔軟性のある素材を使用して製造される包装の形態をいい、フレキシブルパッケージングとも呼ばれています。軟包装は、プラスチック・紙・フィルム・アルミニウム箔・バイオプラスチックなど、柔らかく軽い素材で作られています。
軟包装は柔軟性があるため、不規則な形状の商品でも梱包でき、私たちの生活の身近にある様々な商品に活用されています。
軟包装のエンドユーザー
身近に使われている軟包装の事例を紹介します。
【軟包装のエンドユーザー例】
- 食品・飲料:ポテトチップやキャンディなどのお菓子や乳製品のパウチなど
- パーソナルケア:化粧品、サンプル品、フェイスマスクなど
- 製薬:錠剤の個包装、医療機器や医療用具の包装など
- 家庭用品:洗剤、柔軟剤の包装や園芸用品など
- 産業:複雑な形状をした機械の包装や農作物の包装など
柔軟性があり、清潔な状態を保てることから様々な商品に活用されています。
軟包装の市場規模
軟包装市場規模は、2022年に2,310億米ドルに達し、2030年には最大で3,010億米ドルに達すると予測されています。また、2023年から2030年までのCAGRは4.1%の成長が見込まれています。新製品の開発が軟包装市場の成長を牽引し、リサイクル可能なフレキシブル包装の増加や持続可能性の意識の高まりも軟包装市場の需要を支えると考えられます。
国内の包装材料全体の市場規模は拡大していますが、鈍化傾向にもあります。レジ袋の辞退やストロー利用の中止など、環境問題に起因する軟包装は減少傾向にあるといえます。
一方で、軟包装市場で成長している分野があります。伸びている具体的な分野は、以下の通りです。
成長が見込まれる分野 | 市場拡大比率(対2016年) |
電子レンジ対応パウチ | 80%増 |
バイオプラスチック食品容器 | 30%増 |
脱酸素フィルム | 360%増 |
また感染症の流行によって、多くの人々が飲食店での食事や食品購入を制限し、持ち帰りの選択肢を選ぶようになりました。外出制限や在宅勤務の増加も食品ECの需要拡大を後押ししています。
軟包装の市場動向
軟包装の市場動向について、以下の通り紹介します。
【軟包装の市場動向】
- 持続可能であることが重要
- 食品ロスを低減できる鮮度保持フィルムが活性化
- CO2削減のためPET単一の提案
軟包装の市場動向から、環境問題への意識の高さが伺えます。新しい素材の開発においても持続可能であることが常に念頭に置かれています。軟包装の市場動向について詳しく解説していきます。
持続可能であることが重要
SDGsの観点から持続可能であることも、これからの軟包装市場で求められています。
軟包装は、湿気・光・酸素から製品を効果的に保護し、賞味期限を延長させられます。食品の腐敗や廃棄を減少させ、環境への悪影響を最小限に抑えることができます。廃棄される食品の削減は、環境に対する持続可能な貢献につながります。
また軟包装の素材として、バイオプラスチックが成長する見通しです。バイオプラスチックは再生可能な有機資源からつくられ、焼却しても大気中のCO2は増加しない特性から持続可能な素材として注目されています。
食品ロスの低減ができる鮮度保持フィルムが活性化
食品ロスの低減に貢献する注目の技術が「鮮度保持フィルム包材」です。
青果物の鮮度を長持ちさせ、褐変や変色を抑える効果があり、販売期間を延ばすことができます。特に持続可能な包材として、酸素や二酸化炭素のバランスをコントロールし、青果物の品質劣化を防ぐ技術が広く採用されています。
野菜や青果物の鮮度保持に特化した製品が多数投入され、日本の農産物の付加価値向上にも寄与しています。バイオマスインキの採用など環境への取り組みも進め、コスト削減や新たな提案に取り組んでおり、鮮度保持フィルムは今後も活性化していくと考えられます。
CO2削減のためPET単一の提案
環境への配慮とリサイクルの重要性を踏まえ、バリア性や再生原料の利用に焦点を当てたPET単一の提案が増加しています。
独自技術により高いガスバリア性や遮光性を保ちつつ、アルミ箔の代替提案も現実化しています。再生原料を使用した製品でも機能維持を追求し、高水準のリサイクル原料を用いたシーラント基材が展開されています。
今後は、植物由来包材との組み合わせなど、多岐にわたる製品分野での開発が期待されています。
軟包装市場の企業動向
凸版印刷::モノマテリアル軟包材を開発
凸版印刷は、PET単一素材のモノマテリアル軟包材を開発し、2019年7月から販売を開始しています。
アルミ素材など複数素材からなる従来の包材と違い、PET基材の「GL FILM」とPETシーラントで構成されています。高い酸素バリア性や水蒸気バリア性・低吸着性を備え、単一素材化によるリサイクル適性も向上しています。
液体トイレタリー製品や医薬品、食品などの個包装に利用可能であり、プラスチックの減量化にも寄与します。凸版印刷は、これからも環境配慮型パッケージの開発に取り組み、プラスチック資源の循環に向けて取り組んでいく方針です。
ePac Flexible Packaging社:高品質・短納期・小ロット対応で急成長
2016年に登場した軟包装コンバーター「ePac Flexible Packaging社」は、デジタル印刷機を用いて軟包装を生産する革新的なベンチャー企業です。HP Indigoデジタル印刷機を使用し、高品質な軟包装パッケージを少ロットで短納期に提供し、急速な成長を遂げています。
革新的な海外企業の参入により国内の印刷市場は、品質ガイドラインが変化する可能性や、デジタル印刷の普及が期待されています。ただし、小ロット印刷のみでデジタル印刷ビジネスを成立させるには、工場の自動化と最適化の技術を実現しなければならない課題があります。
軟包装の今後の動向
軟包装の今後の動向は、以下の通りです。
- 軟包装はグローバル展開
- DXを活用した製造効率化が重要
- 脱プラスチック化とバイオプラスチックの動向に注視
新しいテクノロジーや消費者の要求に適応しながら、グローバル展開も見据えた持続可能性や機能性の向上を追求することが求められます。
軟包装はグローバル展開
包装印刷業界は、紙器と軟包装の分野において海外進出が本格化しています。
紙器分野では、医薬品関連の需要と単価が安定しているのですが、トイレタリー関連は洗濯用洗剤の液体化に伴い減少しています。また食品関連の受注量は一定していますが、受注単価が低下しているのが現状です。
一方、軟包装分野では需要が安定しており、高級品から安価品まで様々な製品に使われるため、エンドユーザーの嗜好の変化にも影響されにくい特徴があります。環境にやさしい軟包装は、今後グローバルに展開されていくことが予想されます。
DXを活用した製造効率化が重要
包装印刷業界において軟包装分野は安定していますが、既存の軟包装コンバーターにとっても現状を維持するだけでなく、持続的な成長を目指す必要があります。
高機能な複合素材のリサイクル性や代替材料の提案のほかに、コスト削減のためにDX技術を活用した製造の効率化が求められています。
脱プラスチック化とバイオプラスチックの動向に注視
軟包装市場は成長している一方で、脱プラスチックの動きや環境規制の強化といった逆風も存在しています。将来の展望を考える上で、中長期的な戦略が必要であり、経営者は現状だけでなく10年後や20年後の市場状況も考慮しながら戦略を検討しなければなりません。
脱プラスチック化とバイオプラスチックの動向に注視し、市場の課題に対応する取り組みを行うことが重要です。
まとめ
フレキシブルパッケージングとも呼ばれている軟包装は、柔らかく丈夫な素材で作られているため、私たちの身近にある様々な製品に活用されています。環境への意識が高まる中で、軟包装の持続可能性が重要な要素となります。
グローバル展開やDXを活用した効率化など、軟包装市場の動向に対応しながら競争力を維持し、中期的な戦略が求められます。