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リチウムイオン電池の歴史|発明者からノーベル賞受賞者まで紹介

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リチウムイオン電池は、科学の歴史・技術の進歩に革命を起こした技術といわれています。発明に携わった研究者がノーベル賞を授与されたことからも、その重要性をうかがい知ることができるでしょう。一方、「何が」「どう」すごくて重要なのかわかりにくいという方も多いかもしれません。

本記事では、リチウムイオン電池の仕組みや特徴・歴史を解説します。注目の理由や誕生の経緯について詳しく知りたい方は、最後までお読みください。

リチウムイオン電池とは?簡単に仕組みや特徴を紹介

まずは、リチウムイオン電池がどのようなものなのか、そしてどのような製品に使われているのか、その仕組や特徴・利点、用途を解説していきます。

リチウムイオン電池とは、正極と負極を持ち、その間をリチウムイオンが移動することで充放電を行う電池です。小型で軽量であるのが特徴の電池で、社会の仕組みを変えるほどさまざまな道具を生み出しました。

リチウムイオン電池の誕生以前にも二次電池は存在しましたが、高エネルギーをコンパクトに持ち運ぶことはできませんでした。リチウムイオン電池の誕生により、電気を動力とする機械は革命的な進化を遂げたのです。

その功績から、リチウムイオン電池を発明した研究者3名は、2019年にノーベル化学賞を受賞します。ここからは、そんなリチウムイオン電池の仕組みや種類などを解説し、その誕生と進化の歴史をみていきましょう。

仕組み

リチウムイオン電池も、その他の電池と電気が作られる基本的な仕組みは変わりません。

<電池の仕組み>

電池には正極と負極があります、これらの電極が電解質で溶かされるとイオンと電子に分かれ、電子が負極から正極に移動すると電流が生まれます。これが、電池が電気を作る仕組みです。

二次電池(充電して繰り返し使用可能な電池)では、充電で電子を負極側に貯め、使用時に正極へ電子が移動することで電気が生まれます。

これがリチウムイオン電池の場合は、正極がリチウムを含んだ金属化合物で、負極はリチウムを貯蔵できるカーボンでできています。通常の電池との違いは、電極を電解質で溶かす必要がないため、電池の劣化が抑えられることです。これにより、より大きな電気を蓄えられる、充電や放電を繰り返せるなど電池に革命を起こしました。

また、リチウムが軽くて小さな素材であることから、電池の小型化・軽量化も実現しました。

種類

ひとことでリチウムイオン電池といっても、形状や電極の素材などによってそれぞれ異なる特徴があります。

たとえば、以下の8種類があります。

     
  • リン酸鉄系
  • リチウムポリマー系
  • チタン系
  • 三元系(NMC)
  • マンガン系
  • ニッケル系
  • コバルト系
  • NCA系

この中でも、安全性やコストパフォーマンスから、リン酸鉄系、NCA系、三元系の3つがよく使用されています。簡単に特徴をまとめたのでご覧ください。

種類 特徴 主な用途
リン酸鉄系
  • 熱暴走が起こりにくく安全性が高い
  • 安価で製造できる
電動工具、電動自動車など
NCA系
(NCA=ニッケルコバルトアルミニウム酸化物)
  • 高エネルギー密度化に優れる
  • 低温時の放電特性に優れる
医療機器、電動自動車など
三元系(NMC)
(NMC=ニッケル、マンガン、コバルト)
  • コバルト系よりも安全性を高めて車載用に改良されたもの
  • 発熱量が少ない
  • 低温時の放電特性に優れる
医療機器、電動自動車など

利点と用途

リチウムイオン電池以外にも二次電池はありますが、なぜリチウムイオン電池が画期的な発明といわれているのでしょうか。

その答えは、リチウムイオン電池の特徴にあります。

<リチウムイオン電池の特徴>

     
  • 小型
  • 軽量
  • 繰り返し充電可能
  • 充電や放電を繰り返しても電極の消耗が少ない
  • 急速充電可能
  • ワイヤレス充電対応
  • 自然放電に強い

中でも、小さくてパワフルな点は、多くの機器の小型軽量化、長寿命化に貢献しました。

身近な製品では携帯電話やPCのバッテリー、ビデオカメラなどが有名です。産業用ではロボットや工場、車、航空機など幅広い用途で使用されています。

軽くて小さいのに大容量、それに加えて形状も豊富のため、さまざまな機器に搭載されているのです。社会の仕組みを変える技術としてノーベル賞で評価されたのも納得ではないでしょうか。

リチウムイオン電池の歴史

そんな素晴らしい発明のリチウムイオン電池がどのように生まれ発展したのか、その歴史をみていきましょう。

<リチウムイオン電池の歴史年表>

1958年 アメリカが実用化に向けたリチウムイオン電池の研究開発を開始
1970年代前半 リチウムイオン電池が一次電池として実用化
1980年代 リチウムイオン電池の二次電池としての実用化目処が立つ
1991年 ソニー・エナジー・テックが世界で初めてリチウムイオン電池を商品化
2019年 リチウムイオン電池の開発に貢献した研究者にノーベル化学賞が贈られる

ここからは、それぞれの出来事を詳しくみていきましょう。

1958年 アメリカが実用化に向けたリチウムイオン電池の研究開発を開始

1958年のW.R.ハリス博士が、リチウム塩を溶解させた有機溶媒からのリチウム電析に成功します。この有機電解質に関する論文が注目されたことにより、アメリカが実用化に向けた研究開発をはじめたのがリチウムイオン電池誕生へ第一歩となりました。

1970年代前半 リチウムイオン電池が一次電池として実用化

アメリカでは宇宙航空・軍事用、日本では民生用に開発を続け、1970年代の前半には、一次電池としてリチウムイオン電池が実用化されました。この段階ですでに、現在の繰り返し充電可能なリチウム二次電池につながる技術基盤が築かれていました。

1980年代 リチウムイオン電池の二次電池としての実用化目処が立つ

技術の進歩にともなう新しいエネルギー貯蔵媒体に対する期待の高まりから、化学の発展としては比較的短期間でリチウムイオン電池は進化を遂げました。1980年代にはついに二次電池の実用化の目処が立ちます。

まず、ジョン・グッドイナフ博士と水島公一博士により、1980年にコバルト酸リチウムを正極に採用することが発見・提案されます。しかし、この段階では、負極の材料候補だった金属リチウムが発火事故を起こすなど、商品化にはむずかしい状況でした。

そんな中、1981年に吉野彰博士らがプラスチックポリアセチレンを負極に採用することを発見。グッドナイフ博士と水島博士の発見であるコバルト酸リチウムの正極と組み合わせ、リチウムイオン二次電池が誕生しました。

1991年 ソニー・エナジー・テックが世界で初めてリチウムイオン電池を商品化

リチウムイオン二次電池の誕生後、1986年のプロトタイプ生産などを経て、1991年、ソニー・エナジー・テックが世界で初めてリチウムイオン電池を商品化します。独自に開発を行い、安全レベルを引き上げ商品化を実現したソニー・エナジー・テックが現在のリチウムイオン電池の礎を作ったともいえます。

この功績が認められ、1995年には、当時のソニーの開発者や技術者に大河内賞が授与されました。

2019年 リチウムイオン電池の開発に貢献した研究者にノーベル化学賞が贈られる

2019年には、吉野彰博士、ジョン・グッドイナフ博士、スタンリー・ウィッティンガム博士の3名にノーベル化学賞が授与されました。

小型で軽量なのにパワフルな二次電池が誕生しなければ、パソコンやスマートフォンなど、現在の私たちの生活に欠かせない製品は生まれていないか、今ほど持ち運び便利なサイズは実現していなかったと言えるでしょう。電気自動車も、1回の充電で走れる距離が短すぎて実用化できなかったかもしれません。その他、リチウムイオン電池がなければ生まれていない製品がたくさんあります。

なお、ノーベル賞以外にも、リチウムイオン電池の普及と基本構造の開発を評価され、工業分野のノーベル賞とも呼ばれる「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」をジョン・グッドイナフ氏、吉野彰氏、西美緒氏、ラシド・ヤザミ氏は受賞しています。

リチウムイオン電池の今後の展望

温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す「カーボンニュートラル」においても、リチウムイオン電池が実現の重要な鍵を握るとして注目されています。電池市場自体が各分野とも拡大の見通しで、中でも車載用電池の市場は、EVの市場拡大にともない急速に成長しています。モビリティの電動化に必要不可欠なバッテリーが注目されるのは必然といえるでしょう。

リチウムイオン電池は、5G基地局やデータセンターなどの社会インフラを支える要素としても重要な役割を担っています。このカーボンニュートラル社会の実現を支える秘術・生産基盤を国内で確保することが大切となってきます。

そのためには、技術を維持しつつ、サプライチェーン全体を維持・強化することが欠かせません。また、エコシステム、リユース・リサイクルシステムの構築も欠かせないでしょう。

日本でも政府が目標を掲げて支援をしています。官民一体となった取り組みが注目されています。

まとめ

リチウムイオン電池は、現在の私たちの生活を支える重要な技術です。その功績から、発見・開発に貢献した研究者にはノーベル賞が贈られるほど評価されています。実用化の裏には、独自に研究を続けたソニーの技術者たちの努力があります。

このように、製造業では、常に新しい挑戦が必要です。技術面だけでなく、DX化や組織のあり方など変化が求めらます。

PEAKSMEDIA編集チーム

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