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ファクトリーオートメーションが重要視される理由|システムの種類や導入時のポイントを解説!

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ファクトリーオートメーションとは、工場を自動化する取り組みのことです。生産工程を自動化するシステムのことをファクトリーオートメーションと呼ぶ場合もあります。
製造業がファクトリーオートメーションを導入することで、生産性や安全性が向上します。厳しい競争にさらされている製造業にとって、ファクトリーオートメーションは企業の生き残り策や成長戦略にもつながります。

この記事では、ファクトリーオートメーションが重要視される理由について詳しく解説します。

ファクトリーオートメーションとは

ファクトリーオートメーション(Factory automation)とは、工場における自動化のことです。工場では加工、組み立て、運搬、管理などの作業がありますが、これらを自動化していくことがファクトリーオートメーション化です。

ファクトリーオートメーションを導入する目的は、従来型の工場と同じく以下の3つが挙げられます。

     
  • 品質の高い製品をつくること
  • 効率よくつくること
  • 安全につくること

ファクトリーオートメーション化された工場は、従来型の工場に比べ上記3項目について高い次元であることが求められます。

ファクトリーオートメーションが重要視されるワケ

製造業において、ファクトリーオートメーションが重要視される理由は主に次の2つになります。

     
  • 激化するグローバル競争で生き抜くため
  • 超高齢化社会の日本で企業を存続させるため

1つずつ解説します。

激化するグローバル競争で生き抜くため

製造業におけるグローバル化は、コストを抑えて製造できる海外工場との競争や、生産拠点を海外に移すことなどを意味します。グローバル競争が激化するほど、製造業における企業の生き残りは難しくなります。

製造業において、グローバル競争で生き残っていくためには、ファクトリーオートメーションの導入により「収益のあがる工場」にすることです。

超高齢化社会の日本で企業を存続させるため

国内における超高齢化社会は、製造業でも深刻化しています。

工場従業員の高齢化は、同時に若い従業員が減少していることを指し、将来的に労働力不足が悪化する可能性があります。高齢化した従業員はやがて退職してしまい、そのスキルや知識がやがて失われることになります。

さらに、高齢の作業者は筋力や反応速度などが若い人よりも低下してしまうので、工場の作業による危険がともないます。

ファクトリーオートメーションを導入することで、労働力の維持や人的リソース不足の軽減につながります。

ファクトリーオートメーションのメリット

製造業企業がファクトリーオートメーションを導入すると、次のようなメリットを得ることができます。

【ファクトリーオートメーションのメリット】

     
  • 人件費を削減できる
  • 業務を効率化できる
  • 不良品などのロスを削減できる
  • 安全性を確保できる

1つずつ解説します。

人件費を削減できる

ファクトリーオートメーションでは、人の代わりにロボットなどの機械やコンピュータが作業をするため工場内の人員を削減できます。

ロボットや機械やコンピュータの導入にはコストがかかり、メンテナンスの費用も必要ですが、長い目でみると人件費より少ないコストで運用できると言えます。

業務を効率化できる

ファクトリーオートメーションの導入により業務を効率化できます。
人の作業であれば、1日の稼働時間は約8時間です。昼休みや小休憩も必要で、シフト制であれば勤務交代時には作業の中断が発生します。

ファクトリーオートメーションを導入すれば24時間の連続稼働も可能です。

製品の検品や運搬、生産物の処理はロボットの方が作業が高速です。人だけの作業よりも、はるかに業務を効率化できるのがファクトリーオートメーションです。

不良品などのロスを削減できる

人間が行う作業は、ミスや漏れが発生しやすいと言えます。

しかしファクトリーオートメーションを活用すれば、IoTセンサーなどを使用することで、生産ラインの情報を正確かつリアルタイムに確認できるようになります。

それにより不良品などのロスを軽減し、質の高い製品を継続して製造できるようになります。

安全性を確保できる

工場において、人が作業するには危険なケースも想定されます。

人が行う作業をロボットなどに置き換えていくことで、安全性を確保することにつながります。

例えば、プレス機に巻き込まれる危険がある作業をロボットに任せることで、人がプレス機に巻き込まれるリスクがなくなります。

ファクトリーオートメーションのデメリット

製造業におけるファクトリーオートメーション化のデメリットとしては、以下の2つが挙げられます。

【ファクトリーオートメーションのデメリット】

     
  • 設備やシステムの構築に費用がかかる
  • 人材の教育や確保が必要

それぞれ解説します。

設備やシステムの構築に費用がかかる

ファクトリーオートメーション化で使うロボットや機械、設備、コンピュータ、システム、ソフトウェアなどはどれも高額です。そのためファクトリーオートメーション化には、莫大な資金が必要になることがあります。

しかし、投資した資金は人件費の削減や生産性の向上によって回収できるケースもあるため、必ずしもデメリットとはいえません。投資をしなければ、人件費の削減や生産性の向上といったメリットを得られないでしょう。

コスト面でのデメリットは、自社工場の生産体制にマッチした設備やシステムなどを導入することで最小限に抑えることができます。

人材の教育や確保が必要

ファクトリーオートメーション化された工場の運営方法は、ファクトリーオートメーション化していない工場の運営方法とは異なり、作業員の教育が必要になります。

また、ロボットやシステムなどを導入すると動かしたり制御したり、監視したりする人が必要になります。

ファクトリーオートメーション化による人材の確保は、製造業企業にとって大きな課題になると言えます。しかし、トータルにおける経費の削減や生産性全体の向上を見込めるため、人的コストをかける意義はあるといえます。

ファクトリーオートメーション業界の市場規模

株式会社グローバルインフォメーションによると、世界のファクトリーオートメーションの市場規模は2028年までに約2,493億ドルに達すると予測されていて、2022年から2028年までの年平均成長率は8.2%と推定されます。

中国も成長を牽引しており、同国政府は大企業の70%をデジタル化するスマートマニュファクチュアリング開発計画を策定しています。この計画を支えるのがロボットの導入で、2020年の1年間だけで中国は約15万台のロボットを導入しています。

さらに中東とアフリカといったこれまで工業化が遅れていた国でも、今後自動車メーカーやその他製造業企業の工場が新設され、その際ファクトリーオートメーションが導入されるとみられています。

自動車業界はファクトリーオートメーションが進んでいる業界ですが、そのほかにも化学、飲食品、機械、半導体、エレクトロニクスの各業界でもファクトリーオートメーション化の波が押し寄せています。

ファクトリーオートメーション業界売上トップ5

日本のファクトリーオートメーション事例としてこの業界のリーダー企業を5社紹介します。( )内は2021~2022年の売上高です。

     
  • 三菱電機(7,559億円)
  • キーエンス(7,551億円)
  • ファナック(7,330億円)
  • SMC(7,273億円)
  • ダイフク(5,122億円)

三菱電機は総合電機メーカーであり、事業領域はビル、公共、エネルギー、交通、自動車機器などと多岐にわたります。そのうちの1つに産業・ファクトリーオートメーション事業があります。三菱電機の産業・ファクトリーオートメーション事業の商品は、シーケンサー、サーボ、省エネ支援システム、レーザー加工機、ロボット、配線用遮断器などとなっています。

キーエンスはファクトリーオートメーション用センサーなどを得意としていて、同社の製品は自動車、半導体、電子、電気機器、通信、機械、化学、薬品、食品などの業界で採用されています。

ファナックはロボット・メーカーとして知られていますが、ファクトリーオートメーション関連はそれだけではなくハードウェア、ソフトウェア、サーボ、IoTでもファクトリーオートメーション化を目指す企業や工場をサポートしています。

SMCの主要製品は、圧縮した空気で機械を動かす空気圧制御システムで、人に代わって働く設備、装置、ロボットに組み込まれています。

ダイフクは、ファクトリーオートメーションのうち運搬(マテリアルハンドリング)を取り扱っていて、自動車工場や半導体工場、物流センター内の保管、搬送、仕分け、ピッキングを自動化しています。

上記5社に共通しているのはグローバル展開をしているところです。世界の工場のファクトリーオートメーション化を支えていると言えます。

ファクトリーオートメーションの事例

ファクトリーオートメーションの事例として、トヨタと植物工場を紹介します。

事例1:トヨタ自動車

トヨタ自動車は世界有数のファクトリーオートメーション工場保有メーカーです。

ウェルディングロボットは車体の組み立ての溶接作業に使われ、ペイントロボットは車両のボディの塗装に使われます。アセンブリロボットは組み立てに、ハンドリングロボットは部品の運搬に、ビジョンガイドロボットは製品の検査に使われています。

トヨタのファクトリーオートメーション化の注目するポイントは、歴史と思想にあるといえるでしょう。トヨタは1986年に制定した「取り組むべき有望事業」のなかにすでにファクトリーオートメーションを盛り込んでいました。

例えば自動運搬システムを導入するとき、「どの機械を使うか」を考える前に「運搬しないで済むレイアウトを検討しよう」と考えます。トヨタは自動化とともに省力化、省人化も進めていきます。

事例2:株式会社FAMS(植物工場システム)

株式会社FAMSは、モーターやロボットなどをつくっている安川電機の100%子会社で植物工場システムを製造しています。

種まき、搬送、収穫までをロボットで自動化し、光源にはLEDを用いて完全人工光で栽培しています。

従来の植物工場システムでは、2万株規模の植物工場には70人の作業者が必要でしたが、ファクトリーオートメーションMSの植物工場システムは20人の作業者で運用できます。

ファクトリーオートメーションを実施するときのポイント

企業や工場がファクトリーオートメーションを導入するときは、「解決したい課題を明確にすること」、「AIやIoTで稼働の見える化をはかること」の2点に注意する必要があります。

解決したい課題を明確にする

ファクトリーオートメーション投資は、ときに莫大な資金を必要とするため「何を解決したいのか」、「何が得られるのか」といった課題や目的を明確にしておきます。

そのためには現行の生産プロセスを、生産効率、品質管理、人材配置、コストなどの面から見直していく必要があります。

課題や目的が明確になると、自動化させる領域と自動化に必要なロボットや設備が判明するので効果的なファクトリーオートメーション投資が行えるようになります。

AIやIoTで稼働の見える化をはかる

AIもIoTも工場のファクトリーオートメーション化に欠かせない技術です。AIとIoTを使って生産過程を自動化していくのですが、この2つはそのほかにもロボットや設備の稼働状況を見える化することも可能です。

ファクトリーオートメーション化された工場は、省人化もしくは無人化されているので、人の目が届きにくいケースがあります。故障や事故が起きたときに発見が遅れ、生産ラインに悪影響を及ぼします。この課題を回避するため、ロボットや設備の稼働を監視するシステムを設置します。

それにより、担当者は生産ラインの状況や生産データなどをリアルタイムで把握することができます。AIが機械の不具合を予見してIoTで担当者に知らせることも可能です。

ファクトリーオートメーション化には「止めない工場」をつくるという目的もあるので、稼働の見える化は生産の自動化と並行して進めていくべきといえます。

まとめ

ファクトリーオートメーションは、グローバル競争や超高齢化社会といった課題の解決へ向けた取り組みです。人件費の削減や業務の効率化、不良品の削減や安全性の確保を実現します。

導入には多額の投資が必要ですが、ファクトリーオートメーション化が軌道にのればそのコストを吸収することも可能です。

ファクトリーオートメーション化によって、工場が抱えるすべての課題が解決できるわけではありません。しかし、課題を1つずつ解決することで生産性と安全性の2つを確保する工場の実現へとつながります。

製造業界において、企業は生き残り戦略のためにファクトリーオートメーション化について注目していく必要があると言えます。

PEAKSMEDIA編集チーム

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