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アンラーニングの意味とは
アンラーニングとは、これまで学んできた知識を捨てて新たに学び直すことであり、「学習棄却」とも呼ばれます。アンラーニングでは単に既存の知識を捨てるだけではなく、一時的に使用停止するにとどめて、必要があればまた活用することも可能です。
一般的な学習では、新たな知識をどんどん習得していきます。しかしこの方法では、既存の知識に囚われて新たな情報を理解できなくなる可能性があります。そのような欠点を解消するのが、アンラーニングです。
アンラーニングは、ビジネスの場でも用いられます。例えば、コロナ禍によって人と対面することが難しくなったことにより、既存のビジネスモデルから離れてオンライン上でも対応できるようになったこともアンラーニングの一例です。
リスキング(リスキル)との違い
アンラーニングと同様に注目を浴びているものとして、「リスキング」が挙げられます。リスキングとは、環境変化に対応するための従業員の再教育やスキルの再開発のことです。
アンラーニングもリスキングも新たな知識の獲得という段階を経ますが、リスキングは非連続系の知識のインプット、アンラーニングは既存の知識の棄却に主眼が置かれているという違いがあります。
またリスキングに似た言葉として「リカレント」があります。リカレントとは「生涯教育」のことであり、具体例としては社会人になってから大学に入り直すことなどが挙げられます。組織としては、社員が学び続けられるよう研修やセミナーの機会を設けていることも多いです。
アンラーニングがビジネスの場で求められる理由
なぜアンラーニングがビジネスの場で求められるのかというと、現代では技術の発展やグローバル化により、社会の変化スピードが加速しているためです。
それゆえ既存の知識や技術に囚われていては、変化する世間のニーズへの対応や、新たなビジネスモデルの構築ができなくなる恐れがあります。急速な社会の変化に対応するためには、アンラーニングによって古くなった知識を捨て去り、時代に合った知識の習得が必要です。
実際にコロナ禍においては、事態に対応できず業績を下げた企業があった一方で、アンラーニングの推進したことで業績をアップさせた企業もありました。今後もどのような変化が起きるか読めないため、いつでも変化に対して柔軟に対応できる体制を整えておくことが望ましいです。
アンラーニングのメリット
続いて、アンラーニングのメリットについて紹介します。アンラーニングのメリットを理解することで、自社にとってアンラーニングの導入が適しているかどうかの判断材料となるでしょう。アンラーニングのメリットは、以下のとおりです。
- 既存の考え方に囚われない革新性・柔軟性を獲得できる
- 業務効率化が期待できる
- マネジメント力が強化される
- 従業員が成長する
特に革新性と柔軟性の獲得は、アンラーニングにおける最大のメリットとされています。なぜなら、アンラーニングの目的は先述のとおり、時代の急速な変化に対応することであるためです。アンラーニングを導入し、新たな知識を習得する基盤を整えることで、組織は時代の変化についていけるようになるでしょう。
アンラーニングのデメリット
アンラーニングには多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。そのため、メリットとデメリット両方を把握したうえで自社に導入するか検討してみましょう。アンラーニングのデメリットは、以下のとおりです。
- 難易度が高い
- 従業員のモチベーション低下の恐れがある
- リフレクションと混同してしまう可能性がある
- 組織レベルで変化への抵抗を起こすことがある
特に難易度の高さは、アンラーニングにおける最大のデメリットといえます。なぜアンラーニングが難しいのかというと、自身の俯瞰視や客観視、知識を取捨選択する能力などが要求されるためです。特に熟練した知識や経験を持った従業員ほど、既存の価値観に囚われてしまい、知識の取捨選択などが難しくなる傾向があります。
アンラーニングを活かした学習のやり方
続いて、アンラーニングを活かした学習方法について解説します。このパートは、「仕事のアンラーニング -働き方を学びほぐす」を執筆した松尾睦さんの経験学習に関する研究を参考にしています。アンラーニングを活かした学習の手順は、以下のとおりです。
- 経験・認識する
- 反省(リフレクション)する
- アンラーニング(知識の棄却)
- 応用する
では、それぞれについて解説します。
経験・認識する
経験とは、その名のとおり自分自身で何らかの事象を実際に体験することです。例えば、業務中で発生したミスや、上司からのアドバイスなどが挙げられます。
その一方で認識とは、体験したことを自分の中に落とし込み、現状を正確に認識することです。経験したことは、認識をすることで学習に活かせるようになります。
経験や認識をおこなうためには、「As is」や「To be」などといったフレームワークの活用が有効です。As isとは現状把握のことで、To beとは理想のあるべき姿を描くことです。これらを活用することで、現在と未来のギャップが発生している原因の把握ができ、今後の指針となります。
反省(リフレクション)する
反省とは、自分自身の経験や知識、言動などについて見直すことです。反省をすることで、凝り固まった価値観の棄却や、自分自身にとって譲れない信念などが見えてきます。反省によって見えてきたものが、アンラーニングによる知識の取捨選択の手がかりとなります。
反省を促すためには、定期的に会議や面談などをおこなうことが有効です。なぜなら、反省は自分一人でよりも第三者の視点を借りた方がおこないやすいためです。したがって、上司や管理職は部下の成長のためにも、面談などコミュニケーションの機会を設けるようにすると良いでしょう。
反省の注意点は、自己否定にならないようにすることです。反省では確かに自分自身の価値観が否定される場面もありますが、それは自分そのものに対する否定ではありません。あくまで新たな自分を見つけるための機会として、前向きに取り組みましょう。
アンラーニング(知識の取捨選択)
反省ができたら、いよいよアンラーニングによって知識の取捨選択をおこないます。この過程がもっとも重要である一方で、自分一人でおこなうのは難易度が高いです。そのため、上司やチームメンバーなどの第三者の力を借りましょう。
具体的には、上司やチームメンバーとともにフィードバックし合いながら、必要な知識を取捨選択していきます。自分自身の価値観を他者の価値観と照らし合わせることで、より正確な知識の取捨選択ができます。特に「360度フィードバック」を活用することで、より多角的な視点からの自己評価が可能です。
アンラーニングの注意点は、フィードバックをネガティブに捉えないことです。自分の弱みを認識することはつらいかもしれませんが、それはあくまで成長の過程に過ぎません。
応用する
アンラーニングができたら、獲得した知識を応用します。例えば、業務フローの改善や、新たな人材育成計画などに活かせます。アンラーニングによって、既存の知識のみに頼る習慣が取り除かれるため、今までは思い浮かばなかったようなアイデアが思い浮かぶようになるでしょう。
アンラーニングで得た知識を応用する機会を増やすためには、定期的なマニュアルの改廃などをおこなうのが有効です。アンラーニングで得た成果が宝の持ち腐れにならないよう、常に変化を求めていけるような体制を整えましょう。
アンラーニングを活用した人材教育のポイント
アンラーニングは、人材育成にも活用できます。その際のポイントは、以下のとおりです。
- 認識・反省のプロセスをおろそかにしない
- 反省(リフレクション)による自責・後悔を引き起こさせない
- 人間関係の広がりを意識する
では、それぞれについて解説します。
認識・反省のプロセスをおろそかにしない
認識・反省のプロセスは、アンラーニングにおける肝となるポイントです。そのため、決しておろそかにしてはいけません。認識・反省をおろそかにすると、知識の取捨選択の軸がブレてしまい、成果に結びつくような学びを得ることが難しくなってしまいます。
上司や管理職の方は、部下の認識・反省がおろそかにならないよう、マインドセットの教育からおこないましょう。「なぜアンラーニングをおこなうのか」という根本から理解させることで、認識・反省の重要性も伝わりやすくなります。
反省(リフレクション)による自責・後悔を引き起こさせない
アンラーニングによる反省と自責は異なるものです。反省は成長のために必要なものですが、自責はただ単にネガティブな気持ちになるだけであるため、これらを混同させないようにしましょう。そのためにも、組織としてアンラーニングから気づきを得る風土や体制を整えておくと、自分の弱みを見つけてもそれを成長のチャンスだと捉えられやすくなります。
人間関係の広がりを意識する
アンラーニングを効果的におこなうためには、人間関係の広がりを意識することが有効です。なぜなら、さまざまな価値観を持つ人と接する機会を設けることで、多様な価値観を理解できるような柔軟性を得られるためです。柔軟性を得ることで、既存の知識に引きずられ続けるリスクが抑えられます。
人間関係を広げるためには、外部の講師によるセミナーや、グループ企業間の交流会などの機会を設けることが有効です。普段は交流がないような人と関わることで、新たに得られる気づきもあります。
まとめ
アンラーニングは、凝り固まった価値観からの脱却を促し、それにより時代の変化への対応を可能とします。企業の存続のためには、時代に合わないものを捨て去り、時代に合った価値観や知識を得ることが必要です。そのためにも、ぜひアンラーニングの導入を検討してみましょう。