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ソーシャルグッドとは?意味や取り組み事例をわかりやすく解説

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地球温暖化や貧困問題などの社会問題が深刻化するなか、政府やNPOの取り組みだけではなく、企業の積極的な参画が重要な局面を迎えています。

企業は広報活動としてソーシャルグッドへの取り組みを始める企業も多くあります。しかし、ソーシャルグッドへの取り組みといっても、具体的にはどのような取り組みを行っているのかまだわからない、詳しく知りたいと感じている人も多いのではないでしょうか?

本記事では、ソーシャルグッドの重要性と企業の取り組みについて、実際の企業の事例を交えて解説します。

ソーシャルグッドとは

ソーシャルグッドとは、地球環境や地域コミュニティなどの社会に対して良い影響を与える活動、社会貢献度の高いサービス、それらを支援する姿勢などの総称です。気候変動や貧困問題といった社会課題の解決につながり、社会貢献につながる取り組みとして、採用する企業が増えています。

取り組み内容としては、環境に配慮した製品の製造や、障がい者や高齢者の雇用促進、地域のコミュニティづくりなどが挙げられます。

ソーシャルグッドとSDGsの違い

ソーシャルグッドとSDGsの違いは、ソーシャルグッドはより広い概念であることに対し、SDGsは世界共通の目標であるという点です。

SDGsとは、2015年に国連総会で採択された持続可能な開発目標であり、17の目標と169のターゲットから構成されています。これらの目標は、環境、経済、社会の3つの側面から、2030年までの達成を目指すよう掲げられました。

一方ソーシャルグッドは、SDGsの目標に限らず、社会全体の課題解決を目指すものです。例えば、SDGsの目標17である「パートナーシップで目標を達成しよう」に関連する取り組みは、ソーシャルグッドにも含まれます。

ソーシャルグッドとCSVの違い

どちらもビジネスにおける社会貢献という意味では共通していますが、ソーシャルグッドとCSVは明確に目的が異なります。

CSVは企業がビジネスを通じて社会課題を解決することで、経済的価値と社会的価値を同時に創出するアプローチです。CSVとはCreating Shared Valueの略で、共有価値の創造を意味します。社会貢献により、自社の競争優位性から持続的な成長を実現するという考え方です。

一方でソーシャルグッドは、企業だけでなく個人やNPOなどの団体も取り組みを行います。CSVとは異なり、必ずしもビジネスのみを目的とした考え方ではありません。

企業がソーシャルグッドに取り組むメリット

企業がソーシャルグッドに取り組むことは、単に社会貢献をするだけではありません。

企業にとって以下のようなメリットをもたらします。

     
  • 企業イメージの向上
  • 企業の認知度向上
  • 従業員の帰属意識やモチベーションの向上
  • 社会の問題解決への貢献により企業成長できる

企業イメージの向上

企業がソーシャルグッドに取り組むことで、企業イメージの向上を図れます。

消費者や株主(ステークホルダー)は、社会的課題に対して積極的に関わる企業へ信頼感や好感度を高めることもあります。

例えば、環境に配慮した製品やサービスを提供する企業は、エコロジー志向の高いユーザーから支持を得やすくなります。また、社会的責任を果たす企業は、メディアやSNSなどで印象が良くなることで、ブランド力の向上や競争優位性の高まりへとつながります。

企業の認知度向上

企業の認知度を向上させる点も、企業がソーシャルグッドに取り組むメリットです。ソーシャルグッドな企業として、企業自体の存在意義や価値を明確にすることにもなります。

例えば、森林保護活動などの社会問題に関連したキャンペーンやイベントを実施する企業は、そのテーマに関心のある人々にアピールできます。

また、ソーシャルグッドに取り組む企業は、他の企業や団体との協力や連携を促進で大規模な活動を行うことも可能です。その結果、市場の拡大や新規顧客の獲得にもつながるでしょう。

従業員の帰属意識やモチベーションの向上

企業のソーシャルグッドへの取り組みは、従業員の帰属意識やモチベーションを向上させることにもつながります。従業員は、自身が働く企業が社会に良い影響を与えていると感じると、自分の仕事に誇りややりがいを持つようになります。

例えば、ソーシャルグッドに関する教育や研修を行うことで、従業員のスキルや知識を高めるだけではなく、企業への帰属意識を向上させることが可能です。

その上、ソーシャルグッドに関するボランティアや寄付などの活動を行う企業は、従業員のチームワークやコミュニケーションを促進させる効果があります。

従業員の帰属意識やモチベーションの向上は、生産性や創造性の向上にもつながるといえるでしょう。

社会の問題解決への貢献により企業成長できる

企業がソーシャルグッドに取り組むことは、社会における問題の解決に貢献することを意味します。事業活動の本質となるミッションが明確である企業ほど、社会貢献への取り組みに積極的に参加する傾向にあります。

さらにソーシャルグッドに関連するサービスや商品を提供する機会が増え、競合他社がアイデアに行き詰まるようなときでも、打開策の参考になるでしょう。

社会問題の解決に貢献する姿勢が企業自身の成長へとつながり、多くの人々にとって生活が豊かになるきっかけにつながります。

企業がソーシャルグッドに取り組むデメリット

企業がソーシャルグッドに取り組むことは、ブランド力の向上や社会問題の解決につながるなどのメリットがありました。一方で、ソーシャルグッドに取り組むことには、以下のようなデメリットもあります。

     
  • キャンペーンやイベントの開催にコストがかかる
  • 本業に時間や人的リソースを割けなくなる
  • メッセージが受け手の解釈によって批判され炎上する

企業がソーシャルグッドに取り組む目的は、企業イメージや認知度の向上、社会問題へ貢献することによって自社が成長することと言えます。

社会貢献することが目的となってしまっては、ただコストがかかるだけでなく本業に影響を及ぼすことなどを理由に、社員のモチベーション低下につながってしまいかねません。

コストをかけず、SNSなどでソーシャルグッドの取り組みを自然に拡散することも可能ですが、「アイスバケツチャレンジ」のように、事故へとつながってしまった事例もあります。施策によっては「チャリティをこのようにして行うなんて」などの批判へもつながりかねません。

これらのデメリットへの対策として、企業のなかでも取り組みの予算や人員、スケジュールを事前に決めておくことが重要です。さらに、伝えるメッセージの内容や表現を慎重に選び、批判を受けないようなキャンペーンを実施することが重要です。

ソーシャルグッドの取り組み事例

企業のプロモーションや広報活動として、ソーシャルグッドに取り組む際に重要なのは、成功している他社の事例を参考にするのもアイデアの一つです。国内外を問わず、多くの企業でソーシャルグッドに取り組んでいます。

ここでは、以下の企業におけるソーシャルグッドの取り組み事例を紹介します。

     
  • 事例①:無印良品(良品計画)
  • 事例②:株式会社ユーグレナ
  • 事例③:NIKE
  • 事例④:パタゴニア
  • 事例⑤:グラミン銀行

事例①:無印良品(良品計画)

無印良品(良品計画)は、シンプルで美しい暮らしを提案するライフスタイルブランドです。環境や社会に配慮したサステナビリティの取り組みも積極的に行っています。

2018年にソーシャルグッド事業部を立ち上げ、自社の施設や商品の環境負荷を低減するだけでなく、地域社会とのつながりを大切にしています。

例えば、廃校となった旧老川小学校や旧長尾幼稚園・小学校を有効活用して、コワーキングスペースや菜園付き小屋の提供、また地元の農産物や特産品を販売するなど地域に貢献しています。

無印良品のソーシャルグッドの取り組みは企業の利益だけでなく、地球環境の改善や人々の幸せへつながるような試みです。消費者も無印良品の商品を通じて、サステナビリティに貢献できると感じられるでしょう。

事例②:株式会社ユーグレナ

株式会社ユーグレナは、ミドリムシ(ユーグレナ)の栄養素へ着目して、ヘルスケア用品・バイオ燃料・化粧品など、幅広く手がけている企業です。ユーグレナでは2014年から「ユーグレナGENKIプログラム」というソーシャルグッドな取り組みを行っています。

このプログラムでは、バングラデシュの栄養不足に悩む子どもたちに、ユーグレナ入りクッキーを無償で配布しています。その結果、子どもたちの健康状態や学習能力が向上し、健やかに生活ができるようになりました。

また、ユーグレナは、グラミングループとの合弁会社や国連の世界食糧計画との連携を通じて、バングラデシュの農家の生計向上やロヒンギャ難民の食料支援など、社会課題の解決にも貢献しています。

事例③:NIKE

世界的なスポーツブランドNIKEは、スポーツの未来を守るために気候変動への対策に力を注いでいます。

その取り組みの一環として、2018年に「Dream Crazy」というキャンペーンを展開しました。これは、有色人種への暴行や差別への抗議が目的で、試合前の国歌斉唱で起立を拒否したコリン・キャパニック選手を起用したものです。キャパニック選手の姿勢をNIKEが支持し、人種差別への反対というスタンスを示しました。

また「Move to Zero」では、自社の生産拠点や店舗における炭素排出を削減し、2030年までに温室効果ガス排出を自社所有および運営拠点において65%、グローバルサプライチェーン全体の炭素排出を30%削減することを目指しています。

事例④:パタゴニア

アウトドアウェア用品を販売するアパレルブランドのパタゴニアでは、自然環境の保護や社会的責任を重視したビジネスを展開しています。

具体的には、自社製品の環境負荷を低減するために、再生素材やオーガニックコットンなどを使用したり、修理やリサイクルを促進したりしています。また、自社の利益の1%を環境保護団体に寄付したり、環境問題に関する啓発活動も行っています。

パタゴニアのソーシャルグッドに対する取り組みは、自社のミッションである「私たちが愛する野生の地を守り、危機に瀕している惑星を救う」という目的に基づいています。自社の製品やサービスを通じて、消費者や社会に環境意識を高めることに貢献しています。

事例⑤:グラミン銀行

グラミン銀行は、バングラデシュの貧困層に対して、無担保で少額の融資を行う金融機関です。グラミン銀行では、貧困層の経済的自立を支援することで社会的問題の解決に貢献しています。

またソーシャルグッドの取り組みは、自社のミッションである「世界から貧困をなくす」という目的に基づいています。そのため、自社の技術や商品の向上だけではなく、社会的なインパクトのある取り組みも積極的に進めています。

例えば、主に女性を対象としたグループ貸付制度を採用しています。これは、5人1組のグループを作り、互いに連帯保証を行うものです。この仕組みにより未収のリスクを低減するとともに、グループ内での相互支援や自己啓発を促進しています。

まとめ

ソーシャルグッドとは、地球環境や地域コミュニティなどに対する社会問題の解決に向け、企業や政府、団体が取り組むことです。それにより、企業のブランドイメージの向上から、顧客の信頼を獲得することにつながります。また、同業他社との差別化による競争優位性につながることもメリットです。

その上、ソーシャルグッドな取り組みは顧客だけでなく、自社の社員に対するインナーブランディングとしても効果的です。社員自身が働く企業が、社会に良い影響を与えていると感じることで、従業員の帰属意識やモチベーションを向上させ、自分の仕事に誇りややりがいを持てるようになるでしょう。

貧困や雇用、環境破壊といった社会問題に対して、企業のできる活動はさまざまです。他社の事例を参考にして、ソーシャルグッドへ前向きに取り組んでみてはいかがでしょうか。

PEAKSMEDIA編集チーム

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