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メタネーションで脱炭素化社会に?仕組みやメリット・課題を解説

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皆さんはメタネーションという言葉を聞いたことがありますか?

メタネーションは、二酸化炭素をメタンに変換する技術で、脱炭素化社会に向けて注目されているテクノロジーです。

この記事では、メタネーションの仕組みやメリット・課題を解説します。メタネーションに興味のある方や、環境問題に関心のある方は、ぜひ読んでみてください。

メタネーションとは?

メタネーションとは、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を反応させて、メタン(CH4)と水(H2O)を生成する技術です。メタンは天然ガスの主成分であり、燃料として利用できます。

メタネーションのポイントは、二酸化炭素を有効活用することです。二酸化炭素は温室効果ガスとして地球温暖化の原因になりますが、メタネーションによってメタンに変換されると、その影響を減らすことができます。また、メタネーションに必要な水素は、再生可能エネルギーから発電した電気で水を電気分解することで得られます。

つまり、メタネーションは、再生可能エネルギーと二酸化炭素を使って、クリーンなエネルギーを生み出す技術なのです。

メタネーションの仕組み

メタンは燃焼時に二酸化炭素を排出します。しかし、発電所や工場などから回収した二酸化炭素を利用してメタネーションを行えば、燃焼時に排出された二酸化炭素は、回収した二酸化炭素と相殺されるため、大気中の二酸化炭素の量は増加しません。

つまり、二酸化炭素の排出は実質的にゼロになるわけです。なお、メタネーションにより合成されたメタンを「カーボンニュートラルメタン」または「合成メタン」と言います。

カーボンニュートラルメタンは、都市ガスの導管など、既存インフラや設備をそのまま活用できます。そのため、ガス設備の新たなインフラ構築によるコストを抑え、脱炭素化手段として大きな可能性を秘めています。

このカーボンニュートラルメタンを、再び発電所や工場で使用することでCO2を回収する仕組みを構築できれば、カーボンリサイクルを実現できます。将来的にCO2を資源化することで、持続可能な循環型社会形成に大きく貢献できるのです。

メタネーションのメリット

メタネーション技術は、脱炭素化社会への移行において重要な役割を果たします。この技術には、特に以下の3つのメリットがあります。

     
  • 脱炭素化が期待できる
  • 環境に負荷を与えない
  • 既存のガス用インフラ設備を流用できる

以降では、それぞれについて解説します。

脱炭素化が期待できる

メタネーションの最大のメリットは、脱炭素化が期待できることです。脱炭素化とは、二酸化炭素の排出量を減らすことで、地球温暖化の進行を防ぐことを目指す取り組みです。二酸化炭素は、化石燃料の燃焼などによって大量に発生し、温室効果ガスとして大気中に溜まります。これによって、地球の気温が上昇し、気候変動や自然災害などの深刻な問題が引き起こされます。

メタネーションは、この問題に対する解決策の一つとして注目されています。なぜなら、メタネーションは、二酸化炭素を有効活用することで、その排出量を減らすことができるからです。メタネーションでは、二酸化炭素と水素を反応させて、メタンと水を生成します。

メタンは、天然ガスの主成分であり、燃料として利用できます。メタンを燃やすと、二酸化炭素と水が発生しますが、これはメタネーションで使った二酸化炭素と同じ量です。つまり、メタネーションは、二酸化炭素を循環させることで、その排出量を増やさない技術なのです。

環境に負荷を与えない

メタネーションは、環境に負荷を与えない技術です。環境に負荷を与えないとは、CO2だけでなく、他の有害物質や温室効果ガスの排出も抑えることを意味します。環境に負荷を与えない理由は、以下の2点です。

     
  • カーボンニュートラルメタンは、CO2と水に分解されるだけの燃料である
  • メタネーションは、水を副産物として生み出す技術である

まず、カーボンニュートラルメタンはCO2と水に分解されるだけの燃料であるということです。カーボンニュートラルメタンは、天然ガスと同じ成分であり、燃やすとCO2と水になります。CO2は、メタネーションで再利用することができます。水は、環境に影響を与えない物質です。つまり、カーボンニュートラルメタンは、他の有害物質や温室効果ガスを出さない、クリーンな燃料です。

次に、メタネーションは、水を副産物として生み出す技術であるということです。メタネーションでは、CO2と水素を使ってカーボンニュートラルメタンを作ります。このとき、水も一緒にできます。水は、カーボンニュートラルメタンと一緒に保存や運搬することができます。水は、農業や工業など、さまざまな用途に利用することができます。つまり、メタネーションは、有用な物質を副産物として生み出す技術です。

既存のガス用インフラ設備を流用できる

メタネーションによって生成されたメタンは、既存の天然ガスインフラを用いて輸送・貯蔵することが可能です。これにより、新たなインフラの構築にかかるコストや時間を大幅に削減することができます。

また、メタンを既存のガスネットワークを通じて供給することで、エネルギー供給の安定性を高め、再生可能エネルギーの利用拡大に貢献することが期待されます。

メタネーションの課題

メタネーション技術は、二酸化炭素をメタンに変換することで、脱炭素化への大きな期待を集めています。しかし、この技術の実現にはいくつかの課題が存在します。

ここでは、特に重要な以下の3つの課題について解説します。

     
  • 高グレードのメタン生成設備が必要
  • コストの検討が必要
  • 証書化・クレジット化が困難

高グレードのメタン生成設備が必要

メタネーションプロセスでは、高い効率と安定性を実現するために高グレードのメタン生成設備が必要となります。このような設備が必要な理由は、メタネーション反応を効率的かつ安全に進行させるためには、精密な温度管理や触媒の選定が求められるからです。

また、生成設備の大規模化も大きな課題です。商用化には、現在の設備の規模を20~100倍まで拡大する必要があります。

コストの検討が必要

メタネーション技術の実装と運用には、高いコストがかかることが一つの大きな課題です。カーボンニュートラルメタンの生成に必要なCO2を回収するにも、水素を供給するにも高額の費用がかかります。

また、高グレードのメタン生成設備の導入と維持にも莫大な投資が必要となります。国内市場におけるこの技術のコスト効率を評価する際には、既存の天然ガスや他の代替エネルギー源との価格競争を考慮する必要があります。

さらに、国際的なエネルギー市場での需給バランスや価格変動も、この技術の経済性に大きく影響します。国内外の市場動向を踏まえた上で、コスト競争力を確保するための戦略が求められます。

証書化・クレジット化が困難

カーボンニュートラルメタンは、電気、水素、CO2など複数のプロセスを経て作られるため、全プロセスのカーボンニュートラルが確認できないとGO(Guarantees of Origin:原産地)証明ができない形となり、間口が狭くなる懸念があります。

また、カーボンニュートラルメタンが導管注入される場合は利用者が不特定多数となるため、すべての顧客への環境価値のクレジット化が困難になります。

メタネーションの現在

現在、メタネーション技術に関する研究は世界中で進行中であり、エネルギーの持続可能な利用方法として注目を集めています。以降では、海外と日本国内における事例を紹介します。

海外における事例

海外では、特にヨーロッパを中心にメタネーション技術の開発と実用化が進んでいます。例えば、ドイツでは数年前からメタネーションプロジェクトが始動し、再生可能エネルギーを利用してCO2をメタンガスに変換する実験が行われています。

これらのプロジェクトは、エネルギーシステムの脱炭素化だけでなく、再生可能エネルギーの貯蔵方法としても機能し、風力や太陽光エネルギーの不安定な供給を安定化する手段を提供しています。

日本国内における事例

日本では、エネルギー自給率の向上と脱炭素社会の実現に向けて、メタネーション技術の研究が進められています。国内でのメタネーションの実例としては、特定の地域でのパイロットプロジェクトが挙げられます。

プロジェクトでは、再生可能エネルギーを用いたCO2のメタン変換が試みられ、日本独自のエネルギー事情に合わせた技術開発が進行中です。これらの取り組みは、日本のエネルギー供給の多様化と安定化に貢献すると同時に、温室効果ガスの削減にも繋がることが期待されています。

将来的なメタネーション

メタネーションは、まだ実用化されていない技術ですが、将来的には、エネルギーの安定供給や脱炭素化に大きく貢献すると期待されています。

2050年には現在のLNG(液化天然ガス)と同⽔準の価格になることを目指しており、価格低減に向けて、メタネーションに必要な⽔素の製造やCO2の回収コストを低く抑えられるように技術開発が進められています。

カーボンニュートラルメタンの製造・商⽤化には、⼤量かつ低価格の⽔素やCO2、再生可能エネルギーを確保するとともに、安定した供給体制の確⽴が必要となります。そこで、国内外の適地での製造を念頭においたフィージビリティスタディ(実⾏可能性調査)が実施されています。また、サプライチェーンを構築するため、商社やエンジニアリングなどのさまざまな業界と連携しながら検討を進めていく必要があります。

なお、2025年には400Nm3/hの技術を確立し、2030年までには10,000Nm3/hの大量製造技術を確立する計画が立てられています。国内で製造したカーボンニュートラルメタンの供給を順次開始し、2020年代後半からはカーボンニュートラルメタンの海外サプライチェーンの整備を進めます。

また、国内需要サイドでの天然ガス燃料転換の拡大やオンサイト・メタネーションの活用が開始される予定です。2050年までには、都市ガス供給の90%をカーボンニュートラルメタンに置き換えることで、国内外でカーボンニュートラルメタン供給源の多様化と安定供給、エネルギーセキュリティの実現を目指しています。

まとめ

メタネーションは、脱炭素化社会への移行を加速させる有望な技術です。そのメリットは、CO2排出の削減、環境負荷の低減、および既存インフラの活用によるコスト削減にあります。しかしながら、この技術の普及には、技術的課題の克服や環境影響の詳細な評価が必要です。メタネーションが持続可能な社会の構築に貢献するためには、引き続き研究開発と政策支援が重要となります。

PEAKSMEDIA編集チーム

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