INNOVATION

【収益モデル】リカーリングビジネスとは?メリット・デメリット、成功例を紹介

SHAREこの記事をシェアする

リカーリングビジネスは、継続的な収益獲得を可能にする革新的なビジネスモデルであり、現代のビジネス環境において大きな注目を集めています。企業にとって安定した収益源となるだけでなく、顧客との長期的な関係構築にも役立ちます。

この記事では、リカーリングビジネスの基本概念やメリット・デメリットを解説するとともに、成功企業の事例を通じて、リカーリングビジネスを導入する際の重要なポイントを解説します。自社の事業特性を踏まえて、リカーリングビジネスの可能性を検討してみてはいかがでしょうか。

新たな収益機会の創出と顧客エンゲージメントの向上により、ビジネスの成長を加速させることができるでしょう。

リカーリングビジネスとは

リカーリングビジネスは、継続的に収益を上げるビジネスモデルです。ここでは、以下3つのポイントについて解説します。

     
  • リカーリングの意味
  • ビジネスモデルの特徴
  • サブスクリプションとの違い

リカーリングの意味

「リカーリング」という言葉は、英語の「recur」が語源となっています。recurは「再発する」「繰り返される」という意味を持っており、ビジネスの文脈では「継続的に収益が生み出せる仕組み」を指します。

つまり、リカーリングビジネスを取り入れることで、企業は安定的かつ継続的な収益源を確保することができるのです。

ビジネスモデルの特徴

リカーリングビジネスのビジネスモデルの最大の特徴は、1つの商品やサービスを継続的に提供・販売することで、定期的な収益を生み出すことにあります。

従来のビジネスモデルでは、商品を一度販売すればその時点で収益が確定するのが一般的でした。

しかし、リカーリングビジネスではサービスの継続利用により利益を上げることを目的としています。具体的な例としては、Webコンテンツへの課金やカーシェアリングサービスなどが挙げられます。

サブスクリプションとの違い

リカーリングビジネスは、サブスクリプションモデルと混同されやすい概念です。確かに両者は継続的な収益獲得を目的としたストック型のビジネスモデルという共通点を持っています。

しかし、リカーリングビジネスでは、顧客が機器本体を購入したり、プラットフォームと契約した上で、消耗品や従量制のサービスを追加購入するのが特徴です。例えば、スマートフォンの端末と通信サービスをセットで提供するプランなどがこれにあたります。

一方、サブスクリプションでは、顧客が商品・サービスを一定期間利用する権利そのものを定額で購入します。動画配信サービスなどがその代表例と言えるでしょう。

以上のように、リカーリングビジネスは継続的な収益化を実現する革新的なビジネスモデルです。今後さらに多様な業界へと広がっていくでしょう。

リカーリングビジネスのメリット

リカーリングビジネスには、従来のビジネスモデルにはない多くのメリットがあります。ここでは、特に重要な3つのメリットについて詳しく説明していきます。

     
  • 収益が安定しやすい
  • 顧客データを活用しやすい
  • SNSで拡散されやすい

収益が安定しやすい

リカーリングビジネスの最大のメリットは、収益が安定しやすいことです。顧客が長期間にわたって同じ商品やサービスを利用し続けるため、毎月一定額の収益を見込むことができます。

例えば、月額制のサービスでは、解約しない限り毎月決まった金額が入金されます。これにより、売上の予測がしやすくなり、安定した経営が可能になります。

顧客データを活用しやすい

リカーリングビジネスでは、定期購入の顧客を獲得することで、一定数の顧客データや購買データを蓄積できます。これらのデータを分析することで、顧客のニーズや行動パターンを把握し、より効果的な販売戦略や経営戦略を立てることができます。

例えば、購買履歴から顧客の好みを分析しておすすめ商品を提案したり、適切なタイミングでプロモーションを実施したりすることで、売上アップにつなげられます。

SNSで拡散されやすい

リカーリングビジネスでは、顧客とブランドの関係性が長期的かつ継続的なものになります。顧客がブランドのファンになると、自発的にSNSで商品やサービスの魅力を発信してくれる可能性が高まります。

SNSでの口コミ拡散は、新規顧客の獲得に非常に効果的です。リカーリングビジネスを通じて顧客との絆を深めることで、SNSマーケティングの威力を最大限に活用できるでしょう。

以上のように、リカーリングビジネスには収益面、データ活用面、マーケティング面で大きなメリットがあります。これらのメリットを生かすことで、ビジネスの成長と安定化を図ることができるのです。

リカーリングビジネスのデメリット

リカーリングビジネスには多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。

     
  • 初期投資の回収に時間がかかる
  • 顧客管理・配送に対するコストが発生する
  • 新規参入は価格競争になりやすい

ここでは、それぞれのデメリットについて解説します。

初期投資の回収に時間がかかる

リカーリングビジネスを始める際には、初期の顧客獲得のために広告やキャンペーンに多額の費用を投じる必要があります。この初期投資が膨らんでしまう傾向があり、一定数の顧客を獲得するまでは収支がマイナスになりやすいというデメリットがあります。

つまり、初期費用の回収には時間がかかることを覚悟しておく必要があるのです。ビジネスの立ち上げ段階では、資金繰りに十分な注意を払わなければなりません。

顧客管理・配送に対するコストが発生する

リカーリングビジネスでは、商品やサービスを定期的に提供し続ける必要があります。そのため、物品の梱包・配送費用や製品管理、メンテナンスなどの人件費がかかります。

これらのコストは売上に対して固定的に発生するため、利益率を圧迫する要因になります。効率的な顧客管理と配送システムの構築が重要となるでしょう。

新規参入は価格競争になりやすい

リカーリングビジネスは、新たなビジネスモデルとして注目を集めています。そのため、新規参入者が増加し、市場が飽和状態になるリスクがあります。特に、模倣しやすく独自性の低いサービスの場合、価格競争に陥りやすくなるでしょう。

価格競争が激化すると、利益率の低下や顧客離れを招く恐れがあります。差別化要因を明確にして、価格以外の付加価値を提供することが求められます。

以上のように、リカーリングビジネスにはデメリットも存在します。これらのリスクを理解し、適切に対策を講じることがビジネスの成功につながるでしょう。

リカーリングビジネスの導入が進む業界

リカーリングビジネスは、さまざまな業界で導入が進んでいます。ここでは、リカーリングビジネスが導入されつつある業界について、事例を交えて紹介します。

機械業界

工作機械やコンプレッサ、航空機エンジンなどを扱っている機械業界が、予兆保全や保守パーツの販売だけでなく、機器の運用など顧客への便益を提供するリカーリングモデルを導入しつつあります。

事例として、エアバスの「スカイワイズ」を紹介します。スカイワイズでは、機体の運航記録や整備記録、パイロットからのレポートなどを活用して、運航の信頼性や古い機体の運航効率を向上させたり、部品交換の判断をサポートするような情報を、リカーリングモデルのかたちで提供しています。

エネルギー業界

エネルギー業界では、再生可能エネルギーの活用やICTの発展に伴い、従来の集中制御型システムから分散電源へと変化しています。そこで欧米の重電各社は、マイクログリッド(小規模電力網)の管理システムなどの領域を強化し、リカーリングモデルの構築を推進しています。

例えばシーメンスは、これまで電力会社に対して系統全体の運用・管理システムを提供してきましたが、エネルギー分散化の流れを受け、従来よりも小さい単位で管理するためのシステム開発を行っています。

システムを利用することで、電力会社は、従来の系統運用では管理できなかった小さい単位での管理が可能となりました。このシステムは、クラウドを通じてマイクログリッド運用事業者に提供されています。

エレクトロニクス・精密機械業界

エレクトロニクス・精密機械業界では、製品のコモディティ化と、それに伴う利益率の低下に対応するために、リカーリングビジネスモデルの導入が進んでいます。

フィリップスの「Lighting as a Service」はその一例です。これは、法人顧客に向けてインフラの運用を請け負うサービスで、照明を使用することで消費している電力量を削減する仕組みを提供する、成果報酬型のビジネスモデルです。

これにより、顧客は照明器具やそれらを制御する装置を所有する必要がなくるだけでなく、電力料金の削減も実現しています。

自動車業界

自動車が「所有から使用」へとシフトしているなか、自動車業界でも各社がリカーリングビジネスを導入しつつあります。

例えば、トヨタ自動車の「KINTO」というサービスが有名です。これは、毎月定額の料金を支払うだけで、トヨタ自動車の新車を一定期間所有できるサービスで、車に必要な費用である税金や保険、車検・メンテナンス費用などもすべて月々の支払いに含まれています。

自動車業界では、従来にはなかったリカーリングモデルを通じて、顧客との継続的な関係構築に力を入れています。

リカーリングビジネスの3つの成功例

ここでは、リカーリングビジネスを導入し、大きな成功を収めている3つの企業を紹介します。それぞれの企業の成功ポイントに注目してみましょう。

     
  • 成功例1.ソニーの有料会員サービス
  • 成功例2.キリンの会員制サービス
  • 成功例3.Amazonの会員制プログラム

成功例1.ソニーの有料会員サービス

ソニーは、人気家庭用ゲーム機「プレイステーション」向けの有料会員サービス「PlayStation Plus」を展開しています。プレイステーションは、多くのユーザーから高い支持を得ている高性能なゲーム機です。

ゲーム機本体やソフトの販売だけでなく、月額料金が発生する「PlayStation Plus」の会員数を増やすことで、継続的な収益獲得に成功しています。特定のゲームタイトルの遊び放題やオンラインマルチプレイができる特典を用意することで、ユーザーにとって魅力的なサービスを提供しているのです。

成功例2.キリンの会員制サービス

キリンは、工場から自宅に直接届く生ビールを、専用のビールサーバーで楽しめる会員制サービス「キリン ホームタップ」を展開しています。専用ビールサーバーは無料でレンタルし、月2回ビールを配送するというモデルで成功を収めています。

生ビールを自宅で手軽に楽しめる利便性と、定期的にビールが届く楽しみが、ユーザーの継続利用を促しています。キリンは、自社の強みである高品質なビールを活用してリカーリングビジネスで新たな収益源を確保しています。

成功例3.Amazonの会員制プログラム

Amazonは、会員制プログラム「Amazonプライム」を展開し、一定数の会員獲得に成功しています。

Amazonプライムでは、会員限定セール、対象コンテンツの見放題、1億曲以上の楽曲の聴き放題など、さまざまな特典が用意されています。

Amazonプライムの強みは、動画配信だけでなく、ネットショッピングや音楽視聴など、生活に欠かせないサービスが多く含まれている点です。これにより、会員にとって解約しにくい環境が整っています。Amazonは、自社の幅広いサービスを組み合わせることで、強力なリカーリングビジネスを構築しているのです。

以上の3つの成功例から、リカーリングビジネスを成功させるためのポイントが見えてきます。自社の強みを活かしたサービス設計、ユーザーにとっての利便性や楽しみの提供、解約しにくい環境づくりなどが重要だと言えるでしょう。

まとめ

リカーリングビジネスは、安定した収益の確保と顧客との長期的な関係構築が可能なビジネスモデルです。メリットとデメリットを理解した上で、自社の強みを活かせる分野でリカーリングビジネスを導入することが成功への鍵となります。

本記事で紹介したソニーやキリン、Amazonの成功事例から学び、リカーリングビジネスの可能性を探ってみてはいかがでしょうか。

新たな収益源の獲得と顧客満足度の向上を実現し、ビジネスの成長を加速させることができるでしょう。

【関連記事】シェアリングエコノミーとは|種類や事例などを詳しく解説 | PEAKS MEDIA produced by 松尾産業 (peaks-media.com)

PEAKSMEDIA編集チーム

PEAKS MEDIAは製造業の変革やオープンイノベーションを後押しする取材記事やお役立ち情報を発信するウェブサイトです。

際立った技術、素材、人、企業など多様な「 PEAKS 」を各企画で紹介し、改革を進める企業内イノベーターを1歩後押しする情報をお届けします​。

SHAREこの記事をシェアする