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共創ビジネスとは?意味やオープンイノベーションとの違い・事例を紹介

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共創ビジネスは、自社の強みを活かしつつ他社と協働し、新たな価値を生み出すビジネス手法です。本記事では、共創の意味やオープンイノベーションとの違い、共創が注目される理由について解説します。また、共創ビジネスの種類やメリット、課題、実践のポイントを整理したうえで、企業の共創事例を紹介します。

共創(コ・クリエーション)とは

共創とは、企業とさまざまな利害関係者(ステークホルダー)が協力して事業を推進し、新たな価値を生み出すことを表す言葉です。英語では「co-creation」と表現されます。利害関係者には、関連企業、自治体、消費者、パートナー企業などを含みます。

共創に取り組む目的は企業によってさまざまですが、主なものとしては、ビジネスモデルの刷新、現行の商品・サービスの改良、新たな商品・サービスの創出などが挙げられます。

なお、共創と類似した概念に「協業」と「協創」があります。協業は企業同士が利益追求のために協力することを、協創は、異なる価値観や個性を持つ主体同士が、課題解決に向けて力を合わせる仕組みを指します。共創はこれらを包含するより広義の概念と言えるでしょう。

オープンイノベーションとの違い

オープンイノベーションとは、自社の経営資源だけではなく、社外の知識や技術を積極的に取り入れることで、新たなイノベーションを生み出すことです。具体的には、他企業や大学、研究機関などとパートナーシップを組み、互いの強みを活かしながら共同で研究開発を進めるようなケースがこれに該当します。

一方、共創はオープンイノベーションを包含するより大きな概念と言えます。さまざまなステークホルダーとの協働を通じて、新しい価値を創造しようとする取り組みそのものを指す言葉です。つまり、オープンイノベーションは共創を実践するうえでの有効な手法の一つと位置づけられます。

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共創ビジネスが注目される理由

近年、共創ビジネスが注目されている理由として、以下のような背景が挙げられます。

     
  • 市場の成熟化に伴い、一つの企業だけで消費者のニーズに対応した商品・サービスを継続的に提供することが難しくなってきた
  • 異業種からの参入により、一度確立した競争優位性がすぐに失われてしまうケースが増加している
  • 消費者の価値観やライフスタイルの変化に対応するには、多様な視点からの事業開発が不可欠になってきた

このような状況下で企業が生き残るためには、さまざまなステークホルダーと連携して新たな価値を創造することが重要なのです。

共創ビジネスの種類

共創ビジネスは、企業とステークホルダーとの関係性によって、主に次の3つに分類できます。

     
  • 提携タイプ
  • 共有タイプ
  • 双方向タイプ

それぞれのタイプにおける共創の特徴や進め方について解説します。

提携タイプ

提携タイプとは、プロジェクトを進めるうえで自社に欠けている経営資源を補うために、他社と手を組んで進めることです。ここでいう経営資源には、人材、技術、研究開発予算、アイデア、販売チャネルなど、さまざまなものが含まれます。

提携タイプの共創を成功させるためには、企業規模や業界の違いによる力関係を意識せず、対等な立場で協力する体制を整えることが重要です。お互いの得意分野を活かしながら、足りない部分を補い合うことで、一社では難しいプロジェクトでも遂行できる可能性が広がります。

共有タイプ

共有タイプの共創とは、企業がコンソーシアムやコミュニティーを組成し、メンバー同士で課題解決に向けた議論を重ねていくことです。共通の関心事や目標を持つさまざまな組織や専門家が参画します。

同じ問題に対して多様な観点から意見交換を行うため、斬新な価値やアイデアが生まれる可能性が高まります。そのためにも、特定の人に依存した議論になってしまわないよう、参加者それぞれが積極的に関与することが重要です。

双方向タイプ

双方向タイプの共創とは、企業と消費者が対等な関係で直接対話を行い、そこで得られた知見をビジネスモデルの設計や商品・サービスの開発に活かすことです。

近年、SNSの普及によって消費者の意見を企業が収集しやすくなったことにより、双方向タイプの共創を取り入れやすくなりました。消費者の声に真摯に耳を傾け、そのニーズを正確に理解することで、競争優位性の高い商品・サービスの開発を実現できます。

共創ビジネスのメリット

共創ビジネスには、以下のようなさまざまなメリットがあります。

     
  • 新規顧客を獲得できる
  • リソースを確保できる
  • シナジー効果が期待できる
  • 新規ビジネスを創出できる

それぞれの点について詳しく見ていきましょう。

新規顧客を獲得できる

共創を通じて多様な視点を持つ企業や消費者と協働することで、市場の変化を素早く捉えられます。これにより、顧客のニーズに合った商品やサービスを絶え間なく提供できるようになり、新規顧客を獲得することが可能です。

また、双方向タイプの共創を実践すれば、消費者に商品やサービスへの愛着を持ってもらいやすくなります。その結果、長期的な顧客ロイヤルティの向上も見込まれるでしょう。

リソースを確保できる

共創は、事業推進の障壁となっていたリソース不足を解消するのに役立ちます。これにより、リソース不足によって実現の難しかったアイデアを具体化できる可能性が高くなるのです。

たとえば、海外に顧客ネットワークを持つ企業との共創によるグローバル展開や、自社に不足している技術を持つ組織との共創による新製品の開発などが挙げられます。

サプライチェーンを一から構築したり、技術開発を独自に行ったりする場合と比べると、共創によるアプローチはコストと時間の両面でより効率的である点は、大きなメリットです。

シナジー効果が期待できる

シナジー効果とは、複数の企業や組織が協働することにより、単独では実現できない相乗効果を生み出すことです。特に生産面と販売面において有効です。

生産シナジーとは、生産に必要な設備や情報などを共同で活用することにより、得られる効果のことです。たとえば、複数の企業が共同で原材料を調達する場合、発注量が増加し、価格交渉力が高まるため、コストを削減できます。

一方、販売シナジーとは、生産設備や流通チャネル、販売ネットワークなどを共有することで得られる効果です。共創を通じて短期間でブランド価値を向上させ、販売効果を高めることを期待できます。

新規ビジネスを創出できる

共創を通じて、自社の視野を広げ、新たな発想を取り入れることができます。これにより、今までにない画期的なビジネスアイデアが生まれ、新規ビジネスを創出する可能性が高くなります。

また、共創では、自社だけでは手に入れにくいさまざまな経営資源を確保しやすいというメリットもあります。多様な経営資源を活用できることで、新規ビジネスの創出がより実現しやすくなるのです。

共創ビジネスの課題

共創ビジネスには多くのメリットがある一方で、いくつかの課題や注意点も存在します。

     
  • 共創相手に依存しすぎないようにする
  • パートナー間でさまざまなルールを定める
  • 機密情報の管理を徹底する

まず、共創相手に依存しすぎてしまうリスクがあります。外部の視点やアイデアを積極的に取り入れることは重要ですが、それに頼りすぎると自社の創造力が低下してしまう可能性があります。対等な関係を保ちながら、自社でもアイデアを出し続ける姿勢が必要です。

また、共創を進めるにあたって、パートナー間でさまざまなルールを定めておくことが求められます。利害関係やプロジェクトの進め方、成果物の帰属など、曖昧な点を残さないように細かく取り決めをしておかないと、後々トラブルに発展するリスクがあるのです。

加えて、情報漏洩のリスクにも注意が必要です。パートナー企業の技術やノウハウを利用する機会も多いため、機密情報の管理を徹底し、信頼できる相手とのみ共創を行いましょう。NDА(秘密保持契約)を結ぶなどの対策も有効です。

共創ビジネスの実践ポイント

共創ビジネスを実践する際のポイントとして、下記の3つを挙げられます。

     
  • 技術の共有
  • 経験の共有
  • 価値の共有

以降では、それぞれについて解説します。

技術の共有

共創における技術の共有とは、互いが持つ専門的なスキルやノウハウを持ち寄り、活用し合うことです。たとえば、AI技術に長けた企業とビッグデータを保有する企業が協力し、新たなサービスを開発するケースなどが該当します。

一から技術を構築するには、膨大な時間と費用、労力がかかります。しかし、パートナーから自社にない技術の提供を受けることにより、業界内での技術的優位性を短期間で確立できる可能性があるのです。

経験の共有

経験の共有とは、共創を通じてパートナー企業の事業や強み、課題などを直接体験し、理解を深めていくプロセスを指します。共創を進めていくなかで、お互いの企業文化や人材の特性、意思決定プロセスの特徴などに触れることで、自社の視野を広げ、新たな気づきを得ることができるのです。

価値の共有

価値の共有とは、共創を行う目的や意義について、パートナー間で認識を一致させることです。どのような社会課題の解決を目指すのか、提供する商品やサービスを通じて実現したいことは何かなど、大局的な視点を共有することが重要となります。

この価値の共有があってこそ、プロジェクトの困難な局面においても乗り越えることができ、目標に向かって協力して進んでいけるのです。お互いの企業理念や中長期的なビジョンをすり合わせ、共創を通じて目指すべき方向性を一致させておくことが、成功のカギを握っていると言えます。

有名企業による共創ビジネスの事例

ここからは、有名企業同士による共創ビジネスの具体的な事例を3つ紹介します。商品開発からサービス提供まで、さまざまな分野で共創の取り組みが進んでいることがわかるでしょう。

ソニー×京セラ×ライオン|子ども向け歯ブラシの開発

ソニー株式会社、京セラ株式会社、ライオン株式会社の3社は共同で、子ども向け歯ブラシ「Possi(ポッシ)」を開発しました。

京セラの持つ小型圧電セラミック素子の技術と、ライオンのオーラルケア製品に関するノウハウを融合したものです。ブラシが歯に当たると振動が伝わり、磨いている間だけ音楽を楽しめるという、画期的な歯ブラシとなっています。

ソニーは自社の「Sony Startup Acceleration Program」を通じて、京セラの技術を生かした新事業立ち上げをサポートしました。さらに、デザインやクラウドファンディングの面でも協力しました。

3社の技術・経験・価値を共有し、「子どもが嫌がる歯磨きを楽しい時間に変える」という共通のビジョンの下、実用性とエンターテインメント性を兼ね備えた製品の実現に成功したのです。

出典:SONY|ニュースリリース 京セラ、ライオンが共同開発 ブラシを歯に当てると音楽が聴こえる 仕上げ磨き専用ハブラシ「Possi(ポッシ)」

ブラザー工業×Fitdex|家庭用ミシンや型紙販売の促進

ブラザー工業株式会社の販売子会社であるBrother Sewing Machines Europe GmbHと、ラトビア共和国に拠点を置き、AIを活用して消費者の体型に合わせた洋服の型紙データ作成を手がけているFitdex社は、自分の体型にマッチする洋服を作りたいという消費者に向けて、キャンペーン販売やSNS上でのイベント開催などを共同で実施し、型紙販売の利用や家庭用ミシンの普及促進を推進しています。

ブラザー工業にとっては、消費者がより裁縫を楽しめる機会を提供することで家庭用ミシンの販促につなげることができ、Fitdexにとっては、型紙を販売するサイトにブラザー工業のロゴやブランドイメージの提供を受けたことでサイトに対する信頼度の向上を実現しました。

ファミリーマート×TOUCH TO GO|無人決済システム導入店舗のオープン

株式会社ファミリーマートと無人決済システムの株式会社TOUCH TO GOは、資本業務提携契約を結び、無人決済システムを導入した店舗「ファミマ!!サピアタワー/S店」を東京都内にオープンしました。天井のカメラと棚のセンサーで入店から商品ピックアップまでの動きを認識し、商品と金額を自動で読み取ることにより、スムーズな買い物を実現しています。

ファミリーマートは全国約1万6千店を超える店舗網と、コンビニ事業で培ったオペレーションのノウハウを、TOUCH TO GOは独自開発の無人決済システムの技術を持ち寄りました。店舗の省人化やマイクロマーケットへの出店など、新たな価値の提供を共創で目指しています。

出典:株式会社TOUCH TO GO|ファミリーマートとTOUCH TO GOが資本業務提携 無人決済システムを活用した実用化店舗第1号店を東京都千代田区に3月31日(水)オープン

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まとめ

共創ビジネスは、企業の生き残りと成長を左右する重要な戦略です。自社の強みを活かしつつ、他社との協働により新たな価値を生み出すことで、競争優位性を確立できます。

共創の種類や進め方、成功事例を参考に、自社に適した共創の在り方を見出すことが求められます。共創の実践には課題もありますが、技術や経験、価値の共有を図ることで乗り越えていけるでしょう。

ビジネス環境が目まぐるしく変化する現代において、共創への取り組みはもはや選択肢ではなく、必須条件と言えます。共創の本質を理解し、スピード感を持って実行することが、企業の未来を切り拓くカギとなるのです。

PEAKSMEDIA編集チーム

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