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ダブルループ学習とは
「ダブルループ学習」とは、既存の枠組みや前提そのものを疑い、新しい考え方や行動の枠組みを取り込む学習プロセスのことです。アメリカ・ハーバード大学の名誉教授であったクリス・アージリスが提唱した学習法です。アージリス教授によると、組織における学習のプロセスには、「シングルループ学習」と「ダブルループ学習」の2つがあります。
既存商品の改良など、既存の枠組み内での改善を図るシングルループ学習に対し、ダブルループ学習では、前提となるビジョン自体を見直し、外部から新しい知識・情報を取り入れつつ、大きな改革を生み出します。
シングルループ学習もPDCAなどで行動を起こして結果を見直すことを繰り返し改善を図る優れた手法ではありますが、大きな変革は見込めず、急速な成長や壁を乗り越えるような躍進は難しいと言わざるを得ません。
ダブルループ学習のメリット
一方、ダブルループ学習では前提から見直すため、以下のようなメリットがあります。
【ダブルループ学習のメリット】
- 組織の成長スピードが急激にアップする
- 試行錯誤を繰り返して挑戦を続けられる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
組織の成長スピードが急激にアップする
ダブルループ学習では、既存のやり方・組織にとらわれずに解決策を探します。これにより、大きな変化を生み出し、組織の成長スピードが急激にアップすることがあります。
たとえば、訪問営業が上手くいかない場合、
- シングルループ学習では、訪問の回数を増やす
- ダブルループ学習では、SNSの活用を検討する
とその行動には大きな違いがあります。
この例を見れば、シングルループとは違い、ダブルループは成長の起爆剤となり得ることがわかっていただけるのではないでしょうか。成長スピードが重要視される近年の企業経営において、これは注目すべき効果と言えます。
試行錯誤を繰り返して挑戦を続けられる
大きな壁にぶつかった場合、シングルループ学習では「(現状の持ち物だけで)どうやって壁を越えるか?」を考えることしかできませんが、ダブルループ学習なら「壁を迂回する」「今は持っていない新しい道具を手に入れて使う」など自由な発想で柔軟にアイデアを実行できます。
行き詰まってしまうような状況でも、打破を目指して挑戦を続けられるのがダブルループ学習のメリットと言えるでしょう。一筋縄ではいかないような難題をクリアするためには取り入れたい手法です。
ダブルループ学習の取り入れ方
では、ダブルループ学習はどのように取り入れれば良いのでしょうか。ここからは、ダブルループ学習の習慣を導入し、定着させるために大切なことを紹介していきます。ポイントは、次の2点です。
【ダブルループ学習の取り入れ方】
- 規格外の目標を設定してみる
- ブレインストーミングをする
それぞれ詳しく見ていきましょう。
規格外の目標を設定してみる
ダブルループ学習は、既存の枠組みを超えた発想をすることをお伝えしてきました。しかし、これまでの考え方から抜け出すのは容易ではありません。そこでおすすめなのが「規格外の目標を設定してみる」ことです。
たとえば、「売上を10%伸ばす」など頑張れば実現できそうな目標ではなく、「売上を10倍にする」など、現状のままでは到底達成できないであろう目標を掲げます。そうすると、従来の方法を少し改善するくらいでは到底達成できないので、前提を破壊し、根本的な部分から変えるしかなくなります。
ブレインストーミングをする
役職や社歴に関係なく、フラットなディスカッションを行って意見を出し合うことで、お互いに刺激され想定外の発想が生まれることがあります。ほかの参加者の意見を聞くことで、自分一人で考えていたのでは思いつかないようなアイデアが思い浮かぶことも珍しくありません。
また、個人の考えを尊重する空気が生まれるため、前提を疑う助けにもなるでしょう。そのためにも、出た意見は否定しないことが大切です。無条件に受け入れろというわけではありませんが、意見を出した事自体を褒める風土を作りましょう。
ダブルループ学習の実践に役立つフレームワーク
ダブルループ学習は、理論上は理解していても、実践となると意外と難しいという声が多く聞かれます。その理由としては、ダブルループ学習が、当たり前と思っている大前提を疑う思考法である、ということが挙げられます。通常、日常ではあまり行うことのない思考です。
そこで、ここからはダブルループ学習の実践に役立つフレームワークを紹介していきます。
【ダブルループ学習の実践に役立つフレームワーク】
- リフレーミング
- 技術的問題と適応課題
- クリエイティブ・テンション
それぞれ詳しく見ていきましょう。
リフレーミング
リフレーミングとは、物事を見る枠組み(フレーム)を捉え直す(リフレーム)フレームワークです。有名な例として、半分水の入ったコップをどう思うか、というものがあります。「まだ半分ある」「もう半分しかない」と、同じコップ半分の水でも、捉え方によって喜び・満足または不足感・不安とまったく違う感情が生まれます。
ダブルループ学習で前提を捉え直す際に、このリフレーミングが役に立ちます。普段から「ほかの見方はないかな?」と意識して、定着させてみましょう。
技術的問題と適応課題
技術的問題とは、解決策がはっきりとしており、知識やスキルさえ習得すれば解決できる問題です。一方、適応課題とは、技術的な問題ではなく、ものの見方や周囲との関係性が変わらなければ解決できない問題のことです。
- 技術的問題・・・明確な解決策がある。知識・スキルがあれば解決できる
- 適応課題・・・技術的な問題はない。ものの見方や関係性を変えなければ解決できない
ビジネスにおいては、目先の技術的課題・知識や能力の不足にばかり着目し、その陰に隠れている適応課題を見過ごしてしまうことがよく起こります。たとえば、職場の人間関係がネックになっていることも少なくありません。
残念ながら、問題の根本を見極められていなければ、解決にはたどり着けません。課題の解決に取り組む際は、一見技術的な課題に思えても、適応課題である可能性も疑ってみましょう。
クリエイティブ・テンション
クリエイティブ・テンションは、ピーター・センゲにより『学習する組織』で紹介された考え方です。理想と現実のギャップを、ゴムを上下に引っ張ったときのようにテンションで表し、理想(ゴムの上)と現実(ゴムの下)がギャップをテンションの力(ゴムが縮まろうとする力)で勢いよく差を埋めることを表しています。ゴムが強く引っ張るほど縮む力が強くなるように、成長を促すエネルギーも目標が遠いほど高まります。
大切なのは、目標を明確にすることです。理想と現実のギャップが明らかになれば、その差を解消しようという真剣な取り組み・動きが生まれ、それが成長を促進してくれるのです。
シングルループ学習✖️ダブルループ学習の継続が重要
ダブルループ学習とシングルループ学習は、どちらが優れている・どちらを選べばいい、というものではありません。双方の特徴を理解して、上手く掛け合わせて使うことが重要です。
シングルループ学習では、同一の枠組みで改善を繰り返すことにより現場に知見が蓄積され、細かな運用が回を追うごとに洗練され、反復・強化されていきます。
ダブルループ学習では、組織全体でのものの見方や価値観をアップデートすることができ、外部から新しい知識・情報を取り入れられます。既存の枠組みを超えた大きな改革に適していると言えるでしょう。
この2つを循環させ、継続させられる組織は、個人の成長速度を上げ、他社との競争優位性を高めることができます。
まとめ
ダブルループ学習は、組織の成長スピードを上げるために重要であること、シングルループ学習との組み合わせと継続により、会社経営において欠かせないものとなることを説明してきました。
2つの学習は、どちらがより優れているというものではなく、バランス良く取り組むことが大切です。
「改善」のシングルループ学習と「改革」を生み出すダブルループ学習を組み合わせて、考えられないような大躍進を目指してみてください。