GREEN

プラントエンジニアリング業界の現状|今後の動向や課題について解説

SHAREこの記事をシェアする

プラントエンジニアリング業界は、エネルギー、化学、環境など多岐にわたる分野で社会インフラを支える重要な役割を担っています。市場規模の拡大や国内外の大手企業の活躍が進む一方で、技術革新や持続可能性への対応が求められる場面も増えています。

本記事では、プラントエンジニアリング業界の基本的な概要から、現状、課題、将来の動向までを幅広く解説します。国内外における将来性を把握し、課題解決への視点を得ることで、この業界が提供する新たな価値や可能性を理解できるでしょう。

プラントエンジニアリング業界とは

プラントとは、石油やガスなどのエネルギー、化学、医薬品、金属など、社会や経済を支える重要な物資を生産するための設備を指します。これらの設備は、複数の生産設備が組み合わさって構成されており、大規模な工場施設として機能しています。

プラントエンジニアリング業界は、これらの生産設備の企画から設計、調達、施工、管理までを一括して請け負う産業です。具体的には、プラントの基本設計や詳細設計を行い、必要な機器や資材を世界中から調達し、建設工事のスケジュールやコスト、品質を管理していきます。また、プロジェクト完了後のメンテナンスまでを含む、包括的なサービスを提供しています。

プラントメンテナンス業界との違い

プラントエンジニアリング業界とは別に、プラントメンテナンス業界という分野が存在します。プラントメンテナンス業界は、既存のプラント設備の管理や保全、整備、改善などを専門とする業界です。設備の安定稼働を確保し、事故を防止するとともに、定期的な修繕工事の計画や実施を担当しています。

両者の最も大きな違いは、プラントエンジニアリング業界が新規のプラント建設を中心としているのに対し、プラントメンテナンス業界は既存設備の維持管理に特化している点です。プラントエンジニアリングが企画から建設までの「創造」を担当するのに対し、プラントメンテナンスは完成後の「維持」を担当するという役割の違いがあります。

また、プラントメンテナンス業界では、突発的なトラブル対応や定期的な点検・修理が主な業務となるため、迅速な対応力と豊富な現場経験が重視されます。一方、プラントエンジニアリング業界では、大規模プロジェクトの管理能力や、最新技術を活用した設計力が求められます。

プラントエンジニアリング業界の現状

プラントエンジニアリング業界は、社会インフラを支える重要な産業として着実な成長を遂げています。市場規模の拡大とともに、各企業は技術革新や環境への配慮を積極的に推進しており、国内外で多様なプロジェクトを展開しています。

市場規模

経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、2023年のプラントエンジニアリング業界の受注高は約8兆9,626億円に達しています。このうち国内市場が約7兆4,342億円で全体の82.9%を占め、海外市場は1兆5,284億円で17.1%となっています。

2013年の受注高7兆6,855億円と比較すると、この10年間で1兆2,770億円、約16.6%の成長を遂げており、着実な市場拡大を示しています。

参考:特定サービス産業動態統計調査(長期データ)|経済産業省
(引用日2025-1月)

業界を牽引している国内の大手企業

プラントエンジニアリング業界において、各社は独自の強みと専門性を活かしながら、社会インフラの発展に貢献しています。特に以下で紹介する3社は、長年の実績と高い技術力を持ち、国内外で高い評価を得ている企業として知られています。

日揮ホールディングス株式会社

日揮ホールディングス株式会社は、1928年に創業した日本最大手のプラントエンジニアリング企業です。世界80カ国で20,000件以上のプロジェクト実績を持ち、売上高の約8割が海外案件という、グローバルに展開する企業です。

事業領域は石油や天然ガス、再生可能エネルギーなど幅広く、特にLNG(液化天然ガス)プラントでは世界の生産量の30%以上のシェアを誇ります。

近年は「エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立」「資源利用に関する環境負荷の低減」などの社会課題解決にも注力しています。

千代田化工建設株式会社

千代田化工建設株式会社は、1948年創業のプラントエンジニアリング大手です。LNG、石油などのエネルギーから、化学、環境、省エネ、新エネ、産業設備、ライフサイエンスまで幅広い分野でプラント建設を手がけています。

特に水素に関する技術開発に強みを持ち、水素の大量輸送・貯蔵を可能にする独自技術は世界的な注目を集めています。SDGsの達成に向けた取り組みも強化しており、持続可能な社会の実現に貢献しています。

栗田工業株式会社

栗田工業株式会社は、1949年にボイラ向けの水処理薬品事業で創業した水処理のリーディングカンパニーです。水に関わる「メンテナンス」「装置」「薬品」での事業を展開し、あらゆる産業に向けて水に関する問題を解決するための技術やノウハウを提供しています。

近年は売上高が右肩上がりで、特に水処理薬品事業が好調です。2015年からは海外事業の拡大にも注力しており、欧米やアジア、南米へと事業を展開しています。

プラントエンジニアリング業界の課題

プラントエンジニアリング業界が直面している最大の課題は、深刻な人材不足です。特に案件遂行を担う現場のエンジニアの不足が顕著となっており、現場の高齢化と若手・中堅エンジニアの不足という二重の問題を抱えています。プラント建設には高度な専門知識と技術が必要とされるため、熟練エンジニアの技能継承が急務となっています。

さらに近年では、プラントのDX化やIoT化の進展に伴い、従来の工学系の知識に加えて、AIやデジタル技術に精通した人材の確保も課題となっています。DXの推進が急務 となっており、「デジタルツイン」技術を活用して、プラントのシミュレーションや遠隔監視を強化 する動きが進んでいます。また、AIを活用した予知保全(Predictive Maintenance) により、故障の事前検知やメンテナンスコスト削減が可能になっています。

企業は最新のデジタル技術を積極的に活用して新たな価値を生み出すデジタルトランスフォーメーションの推進を迫られていますが、それを担う人材の確保が追いついていない状況です。この人材不足を解消するために、企業には複数の取り組みが求められています。まず、新卒・中途採用を含めた積極的な採用活動の展開が必要です。同時に、ベテランエンジニアから若手への技術継承を円滑に進めるための体制づくりも重要です。

また、社内での人材育成プログラムの充実や、デジタル技術に関する研修の実施なども不可欠となっています。プロジェクトの大規模化や技術の高度化が進む中、これらの課題への対応が業界の持続的な発展のカギとなっています。

プラントエンジニアリング業界の今後の動向

プラントエンジニアリング業界の将来展望は、国内外で大きく異なる様相を見せています。また、急速なグローバル化と環境意識の高まりを背景に、業界は大きな転換期を迎えています。

市場の需要動向は地域によって特徴的な傾向を示しており、企業はそれぞれの市場特性に応じた戦略が求められているいのです。

国内における将来性

国内のプラントエンジニアリング業界は、すでに成熟期を迎えており、新規プラント建設の需要は頭打ちの状況にあります。新規案件は主に電力関連施設、廃棄物処理設備、医薬品製造工場、特殊化学品プラントなど、限定的な分野に集中しています。この傾向は今後も続くと予測されており、大幅な市場拡大は見込めない状況です。

その一方で、高度経済成長期に建設された既存施設の改修やメンテナンス需要は継続的に発生しています。施設の維持管理や性能向上のための設備更新など、既存プラントの保守・運営に関連する需要は今後も安定的に推移すると考えられています。

海外における将来性

海外市場では、エネルギー需要の上昇に伴い、プラント建設の需要は着実に拡大すると予測されています。米国では、豊富な天然ガス資源を背景に、新たな化学プラントや液化天然ガス(LNG)プラントの需要が高まっています。特に環境に配慮した最新鋭の設備への投資意欲が強く、今後も継続的な需要が期待できます。

アジア・中東地域では、経済成長を支えるインフラ整備の一環として、電力プラントを中心とした需要が見込まれています。特に発展途上国では、産業の近代化に伴うエネルギー需要の増加により、新規プラント建設のニーズが高まっています。

ただし、この地域では中国や韓国のエンジニアリング企業との価格競争が激化しており、日本企業は品質重視の顧客層を重点的に開拓する戦略を取っています。

まとめ

プラントエンジニアリング業界は、社会インフラの根幹を支える重要産業として、確実な発展を続けています。市場規模は10年で16.6%増加し、特に海外では新興国の経済発展やエネルギー需要の高まりを背景に、新規プラント建設の需要が拡大傾向にあります。デジタル技術の革新や環境配慮への要請など、業界を取り巻く環境は大きく変化しており、これらの変化に対応するための技術開発と人材育成が急務となっています。プラントエンジニアリングの発展は、持続可能な社会の実現と経済成長の両立に不可欠であり、今後も社会インフラの重要な担い手として、さらなる進化が期待されています。

PEAKSMEDIA編集チーム

PEAKS MEDIAは、製造業イノベーションをテーマに松尾産業㈱が運営するWebメディアです。大変革の時代に悩みを抱えるイノベーターの改革を1歩後押しする情報、製造業をもっと面白くするヒントとなる技術や素材、イノベーションを推進するアイデア、取り組みを取材し発信しております。読者の皆様からのご意見や、取材情報の提供もお待ちしております。

SHAREこの記事をシェアする