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【MONOZUKURI HARDWARE CUP2023概要】
2022年3月3日に、MONOZUKURI HARDWARE CUP 2023が京都リサーチパークセンターにて開催されました。
MOZUKURI HARDWARE CUPは2015年から米国で開催されているハードウェアに特化したスタートアップが多数登壇するピッチイベントです。
2017年から日本でも国内予選が開催され、株式会社Monozukuri Venturesが主催。2022年開催からはMONOZUKURI HARDWARE CUP実行委員会が主催しており、世界への飛躍を夢見るハードウェアの原石達が各々のビジネスプランを競い合います。
Monozukuri Venturesの牧野CEOが、「Gateway to the global market」と力強く宣言し、ピッチイベントがスタートしました。
HARDWARE CUP2023では、計7社のスタートアップが4分間で自社のプロダクト、マーケティング領域、今後のビジネスの展開などを発表しました。
また質疑応答の時間が5分間設けられ、海外を含む4名の審査員が登壇者に質問。
計9分間の持ち時間での評価となり、結果は以下の通りとなりました。
【HARDWARE CUP2023結果】
1位:オモテテ株式会社 – 生理用品×フェムテック
2位:株式会社Liberaware – 産業用ドローンの製造・販売
2位:大阪ヒートクール – 皮膚のかゆみ緩和デバイスの製造・販売
生理用品×フェムテックという斬新なビジネスプランを披露したオモテテが見事優勝!
オモテテには賞金30万円と、5月1日~3日にピッツバーグで開催されるロボット・自動運転・AIのカンファレンス「The Cascadia Connect RAAI Conference」の参加権を獲得しました。
それではここから、私が感じた各社の印象、そして個人的に気になったスタートアップについて述べたいと思います。
【大阪ヒートクール】
大阪ヒートクールは皮膚のかゆみ緩和デバイスを開発。CEO伊庭野氏がこのデバイス開発に至った経緯として、「息子がアトピーに悩まされていることがきっかけ」と写真を見せながら話していたのが印象的でした。
同社デバイスの特長は、かゆみ防止で世の中に溢れているクリームやジェル、飲み薬とは違い、デバイスを使って疑似的にひっかき刺激を肌に与えます。肌を傷つけることなくかゆみに対処することです。
私も以前からじんましんを患わっておりその経験から分かるのですが、かゆみを感じその部分をひっかくと余計にかゆみが増します。しかもかゆみは他の部分にも一気に広がり、収拾がつかなくなります。その結果、かゆみを恐れて外出することが億劫になったり、行動したくても心身ともに難しくなったりと色々な気苦労が・・。
伊庭野さんはこの点に直接言及されていませんでしたが、息子さん、そして世の中のかゆみに悩む人を少しでも無くしたい。実直に見える立ち姿から、そのような印象を強く受けました。
【株式会社Liberaware】
Liberawareは産業用ドローンを製造・販売しているスタートアップ。
国内で大きな課題となっているインフラ、産業設備の老朽化を調査するのが目的で、同社が開発した小型ドローン「IBIS」は内部の動画を高精度で撮って、動画・画像を精査することが可能です。
ドローンだけでなく、画像解析を行うソフトウェアも独自に開発しており、オールインワンでユーザーに提案出来るのが強みです。特に人の立ち入りが物理的に難しい場所が同社のターゲットで、日本製鉄と炉の内部点検を22年7月から開始しています。例として挙げていたのが、台風や大雨が来た後の炉内のサビや劣化の状態を調査すること。製鉄の炉は産業全体にとって欠かせないモノですし、突然の不具合で炉が止まれば川下の製造業も工場稼働が一気に止まります。
同社の小型ドローンと独自の画像解析技術が、ますます日本の製造業を加速させていくかもしれませんね!
【オモテテ株式会社】
見事に優勝を果たしたオモテテ。同社は「生理ライフをもっと快適に」をキーワードに、女性用生理用品を、外出先のトイレで取得可能にすることを目指すフェムテック企業です。
CEOの高橋うららさんは元々モビリティー関係の会社を立ち上げたいと思っていたそうですが、ある日「生理用品を手軽に女性に届けるサービスがない」と思い、このサービスを立ち上げたそうです。
同社は「unfre(アンフリ)」という生理用品が用意されたトイレを確認出来るアプリを開発しています。外出時に生理用品を常に持ち歩くのは面倒だし、ついつい忘れてしまうこともあります。コンビニで買えば良いというけど、近くにコンビニがなかったら、そもそも生理用品を人前で購入するのは恥ずかしい。そういった時に、このアプリで生理用品が常備された近くのトイレが分かれば安心です。男性にはない、女性ならではの発想が非常に斬新に映りました。
同社の今後の課題は出資の獲得。そのため、「社会実装にむけた実証実験を加速する必要がある」。既に複数の大手企業と実証実験を開始していますが、今後も多くの企業との実証実験が行われそうです。
今後は「unfre(アンフリ)」の更なる改良にも力を入れていくとのこと。目指す社会の姿は「Make our cities more free for Woman」。何より、高橋うららさんの「私が一番早くこのサービスを使いたい!」という言葉が印象的でした。
【LEBO ROBOTICS株式会社】
番外編ですが、私が上記3社以外で気になったスタートアップを1社取り上げます。
LEBO ROBOTICSは2018年11月創業の風力発電機用メンテナンスロボットを製造・販売しています。その中でもブレードのメンテナンスに特化しており、人手のメンテが難しい高所でも同社のロボットを使えば手軽に行えます。(強風時は難しいそうです)
ロボットにはカメラが搭載されており、ブレード近接画像の撮影が出来ます。その画像をAIで分析する事も可能です。AIのアルゴリズムも自社で作成しています。
将来的に2024年に完全自動ロボットを上市したいと話されていました。
現在は風力発電が最も進んでいるドイツ市場をターゲットにしており、デュセルドルフに事務所も設立したとのこと。風力発電は陸上と洋上の2種類がありますが、世界の80%は陸上風力のため、陸上風力ブレードのメンテナンスでマネタイズしていくそうです。
ちなみにCEOの浜村さんによれば、陸上風力と洋上風力全体での市場規模は将来的に約1,500億ドル!陸上風力ブレードのメンテナンスがその内何%を占めるかわかりませんが、脱炭素で世界的に注目を集める風力発電、そのメンテナンスも莫大な人手と費用がかかることは明白です。同社のロボットがそこに一石を投じるか?注目したいと思います。
【担当者の感想】
最後になりますが、MONOZUKURIHARDWARE CUP2023ではその他に、リンクウィズ株式会社、RENATUS ROBOTICS株式会社、東京ロボティックス株式会社が熱いピッチを披露しました。登壇者の皆さんの短い時間で懸命にアピールする姿・挑戦に、心からの拍手と今後の活躍を祈念してこの記事を締めくくりたいと思います。