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アジリティの意味とは
アジリティ(Agility)とは、機敏性や軽快さ、敏しょう性といった意味と定義されています。もともとは、犬の障害物競走の名称やスポーツ業界で使用されている用語です。
例えば、バスケットボールでチームの機敏性を強化したい際に、「もっとチームのアジリティを強化すべきだ」というような表現がされるのです。
最近では、ビジネスの世界においても、アジリティという言葉を使用するようになりました。
ビジネスにおけるアジリティとは、環境変化に柔軟かつスピーディに対応できる能力を意味します。経営戦略の意思決定のスピード感や、組織のメンバーの早い動きなどを「アジリティの高い会社」と表現します。
スピードやクイックネスとの違い
よく似たことばにスピード(速度)やクイックネス(俊敏性)がありますが、これらは物ごとの純粋な「速さ」を指すため、アジリティとは異なります。
アジリティには速さの要素も含まれますが、課題に対する対応力や的確性、適応力や統制力など、多様な意味が含まれています。
ビジネスシーンでアジリティが注目されるのはなぜ?
ビジネスシーンでアジリティが注目されるようになった理由は、近年の企業を取り巻く市場の変化が目まぐるしいスピードで加速しており、VUCA(読み方:ブーカ)の時代であると言われていることが挙げられます。
VUCAとは、社会やビジネスにおいて変動性や不確実性が高く、未来の予測が難しい状況を意味する以下の頭文字をとったことばです。
- Volatility(ボラティリティ):変動性
- Uncertainty(アンサートゥンティ):不確実性
- Complexity(コムプレクシティ):複雑性
- Ambiguity(アムビギュイティ):曖昧性
この20年で、現代社会は大きく変化しています。IT革命によって、産業の構造が劇的に変化した2000年、また2020年以降はコロナ禍によって今までのビジネスの常識が通用しなくなりました。
このようなVUCA時代に順応でき、変化に強くて柔軟性の高い組織づくりが現代の企業には求められているのです。
アジリティが高い企業の特徴
アジリティが高い企業には、以下に挙げるような特徴があります。
【アジリティが高い企業の特徴】
- ビジネス戦略が柔軟
- 意思決定のスピードが速い
- チームワークが強い
- 技術力が高い
- 顧客満足度を重視している
- 社員のアイデアが尊重されている
- ビジョンや価値観をしっかり共有している
- 問題解決力が高い・早い
- 発想力が柔軟
- 情報収集が入念かつ広域
- 学んだことの応用力が高い
- リスクの検討力が高い
- 置かれている状況の理解力が高い
アジリティが高い組織とは、社会の急激な変化にも柔軟に対応できるため、市場での競争力を維持できるのです。
ビジネスにおいてアジリティを高めるメリット
ビジネスシーンにおいて、アジリティを高めることで以下のようなメリットを享受できます。
【ビジネスにおいてアジリティを高めるメリット】
- 業務効率・生産性がアップする
- 環境の変化に柔軟に対応しやすくなる
- 製品やサービスの開発スピードが上がる
- コストの削減につながる
- 従業員のモチベーションがアップする
アジリティを高めることで業務の生産性が向上し、製品の開発スピードが上がります。またコストの削減や従業員のモチベーションアップにもつながります。
それぞれ、以下で詳しく解説します。
業務効率・生産性がアップする
アジリティを高めることで、組織の業務効率や生産性がアップします。素早い意思決定ができるようになると、即座に行動することによってすぐに結果を出せるようになるからです。
アジリティの高い組織は、学んだことの応用力が高いため、マニュアルにない事態に直面しても情報収集によって問題解決が可能です。
ビジネス戦略が柔軟なため発想力にも長け、新しいシステムの導入も積極的に行うことで業務の効率化を進められます。
環境の変化に柔軟に対応しやすくなる
予測不可能な変化が発生しても、最適な判断によって柔軟に対応しやすくなります。問題解決力が高いため、課題の解決ために即座に行動へ移せるからです。
例えば、顧客からの問い合わせへの対応に対して、どのように対応をするかを判断できずに担当者が一人で抱えてしまっていては、顧客からのクレームにつながってしまいます。
即座に情報を共有し、過去の対応履歴の確認、上長へのエスカレーションなどによって課題解決方法を即座に決定します。素早い回答をすることで顧客の信頼度を向上させるのです。
製品やサービスの開発スピードが上がる
業務スピードの早い企業は、組織で出た新しいアイデアを素早くサービスや製品に反映しやすいため、競合に先駆けて新製品やサービスを市場に発表できるメリットがあります。
それにより、顧客のニーズにマッチした製品やサービスの提供が可能となるのです。
コストの削減につながる
短期間で製品やサービスの開発が可能な組織は、人件費を少なくおさえられることになります。それにより、積極的業務フローの見直しやシステム化を行えるため、ムダなコストをカットできるのです。
従業員のモチベーションがアップする
柔軟かつ創造的なアイデアを出しやすい組織は、コミュニケーションが活発で従業員が目的意識を持って業務を実施しています。従業員のモチベーションも高くなりやすく、それぞれが自律的に考えて行動できる能力が身につくのです。
企業がアジリティを向上させる方法
企業がアジリティを向上させるためには、以下のような方法があります。
【企業がアジリティを向上させる方法】
- 従業員や現場スタッフに一定の決定権を与える
- データ分析を活用して意思決定をする
- ITツールやコミュニケーションツールを導入する
- スキルアップができる環境を整える
従業員や現場スタッフに一定の決定権を与える
組織全体がスピード感を持って対応するには、従業員や現場スタッフへ一定の権限を与える必要があります。大きな組織は、小さなチームの集合体だからです。
例えば、新規ビジネスの立ち上げ時には、企画からターゲット層の考案などの販売戦略や売上予測までのアイデアを募集します。その中から、より優れた企画を選出したら、その担当者を責任者として販売まで任せるのです。
こうすることで、その時落選した社員も次こそはと意気込むのです。
アジリティの高い企業は、実際の行動は従業員の判断に任せているところが多い傾向にあります。各チームが主体性を持って動くことで、結果的に組織全体のアジリティ向上につながります。
ITツールやコミュニケーションツールを導入する
ITツールやコミュニケーションツールの導入によって、組織のアジリティを向上させる方法もあります。
例えば、社内の連絡においては、Eメールよりも簡単でスピーディなコミュニケーションが可能な、SLACK(読み方:スラック)や、Chatwork(読み方:チャットワーク)などのビジネスチャットツールの導入です。
タスク管理やリマインダー機能、音声通話やビデオ会議も備えているため、チャットツールの導入によってスピード感のあるやりとりができるようになります。
特に、リモート業務を採用する企業が増えている現代においては有能なツールと言えます。
データ分析を活用して意思決定をする
ITの活用により、蓄積されたデータ分析を行うことで最適な意思決定をできるようになります。
外資系企業と比べて日本企業は、アジリティが低いと言われています。要因は、組織構造や判子の文化など、昔ながらのルールに固執している点や意思決定のプロセスに問題があるからです。
問題を解決するためには、データ分析を活用することで最適な意思決定を早期に行うことが可能となります。
例えば、SFA(読み方:エス・エフ・エー)の導入により、リアルタイムな顧客情報や案件情報を社内で共有することで、直近の経営戦略の策定に役立てられます。
営業担当者は、見積作成のために外出先からわざわざ帰社することなく、スマホで簡単に見積もりを作成して上司の承認を得られるようになり、スピーディな顧客対応が可能となります。
スキルアップができる環境を整える
スキルアップが可能な環境を用意することで、結果的に企業のアジリティ向上につながります。
従業員のアジリティを高める方法の失敗例として、スキルや能力が備わっていないのにもかかわらず権限を与えてしまうことです。最適な判断ができない従業員に任せてしまうと、かえって組織全体に混乱を招いてしまいアジリティが低下してしまいます。
したがって、経営理念や行動指針、業務に必要な情報を公開し、スキルアップできる環境を整えておくことで、従業員はそれをもとに行動できるようになるのです。
まとめ
アジリティの高い企業とは、目まぐるしく変化する社会の変化にも柔軟に対応できる組織を指します。
従業員は、スピード感をもって高いモチベーションで業務に励み、新しいアイデアを創出しながら主体性や一定の権限をもって行動をおこします。また、ITの導入により業務効率を高め、データ分析を活用することで早く最適な意思決定を行える組織に発展することが期待できます。
本記事をお読みいただき、変化に強く柔軟性の高い組織づくりを目指す皆さまの参考になれば幸いです。