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プロフィール
ダッソー・システムズ
1981年フランスで設立。現在、世界60カ国以上に拠点を持ち、企業や人々が利用する3Dのバーチャル コラボレーション環境を提供、バーチャルツインプラットフォーマーとして世界をリードする。同社のソリューション群はデジタル時代のモノづくりに変革をもたらし、自動車、航空宇宙、造船、エネルギー、ライフサイエンス、消費財、建設、都市など、幅広い業界にソリューションと持続可能なイノベーションを提唱する。
ダッソー・システムズの年次カンファレンス「3DEXPERIENCE Conference Japan 2023」
本イベントのテーマは「バーチャルツインが実現する日本のDX」だ。ダッソー・システムズの3DEXPERIENCEプラットフォームを活用した、ビジネス変革の事例、デジタルトランスフォーメーションやサステナビリティへの取り組みを3つの基調講演と26のセッションで紹介した。
代表取締役社長フィリップ・ゴドブ氏や、各業界のリーダーによる基調講演はイベント申込開始早々に満席となり、デモセッションも当日席に長い列ができるなど、本イベントの関心の高さを窺い知ることができた。
AIについて言及したフィリップ・ゴドブ氏
フランス企業Dassault Systèmesの日本法人であるダッソー・システムズ株式会社代表取締役社長のフィリップ・ゴドブ氏は登壇冒頭、多くの米国上場企業のCEOが2023年1~3月期の決算会見で発言した内容に触れ「Chat GPT」をはじめとする生成AIなどAIの注目度の高まりを紹介し「誰しもがAIとは無縁ではいられない。DXは次の段階に入った」と語った。
ダッソー・システムズも自社独自のAI技術を開発しており、3DEXPERIENCEプラットフォームでのAIの積極的な搭載の方針を示した。
今後AIを活用した新しい製品やサービス、AIを使いこなす重要な要素として「エンジン」「データ」「レギュレーション」の3つを同氏は挙げる。
技術開発が加速し、専門特化が進むAIのコア技術。より膨大なデータ取得につながるリアルタイムでのデータサイクル構築の重要性。各国で議論が進むAIの規制や活用方法。新しい波が生まれるように常に変化・進化し続けるこれら3つの要素をバラバラに追うのではなく、全体を捉えアップデートしていくことが、今後AIを活用した新しい製品やサービスをつくる企業には必要となると語った。
そして、ゴドブ氏はダッソー・システムズを “AIを使いこなすための重要なパートナー”と表現した。
同社の提供する3DEXPERIENCEはバーチャルツイン、つまり“現実世界のレプリカ”を提供するプラットフォームだ。仮想現実ではデータの収集、分析、視覚化を容易にでき、個人、チーム、部門、外部の関係者などを多様な要素を結び付けプラットフォームに情報を集約する。AIはプラットフォームでリアルタイムに収集されたデータ活用し、より良い意思決定を下す手助けをし、イノベーションや革新的なアイデア創出を加速させる。
すでにスタートアップから大企業、自治体まで多くの企業で導入され、仮想世界で製品やサービス、都市計画までさまざまな検証や開発が行なわれている。不透明な世界を乗り切るため進化・変化にどう対応するか。
「バーチャルツインは何のためにあるのか、それは現実のため。3DEXPERIENCEプラットフォームを活用していただくことで、お客様の持続的なイノベーション創出のきっかけになることを願う」とゴドブ氏は結んだ。
バーチャルツインが実現する新時代のサステナブルなモノづくり
ゴドブ氏に続き、アクセンチュア サステナビリティ&イノベーション戦略マネージャーのリ-ブレニー・ソフィー氏とダッソー・システムズ サステナビリティ日本担当兼コンサルティング戦略本部長の由利直美氏が「バーチャルツインが実現する新時代のサステナブルなモノづくり」と題して対談を行った。
冒頭ソフィー氏は、企業がサステナビリティに向けた取り組みを推進する考え方として、「AI対応やテクノロジーだけが解にはならない」と述べた。テクノロジーの活用により実現できることは多い、しかしテクノロジーもエネルギーを使用するものでもあり、大切なことは何が課題であるか知ることだと話す。
サステナビリティやイノベーションに関する豊富な知識と経験を持つリ-ブレニー氏から見ると日本企業の現状は10年前 の欧州であり、大きく後れを取っている。その背景として日本の過度なコンシューマー思想を指摘した。
「例えばコンビニでは、製品が取り出しやすいよう多くの冷蔵庫が開いた状態で並んでいる。これでは冷気が漏れてしまいます。ドアを置くだけでエネルギーは半分にすることができます。温かいものと冷たいものが同じ商品棚にあるなどサステナビリティ視点ではないんです」。
また、日本では“サステナビリティはコスト”という認識がまだまだあると言う。世界ではサステナビリティはコストやリスクの低減、生産性向上に寄与し、価値をもたらすことを多くの人が理解しており、ESGパフォーマンスが高い企業こそ競争力を発揮していると数字で示した。
日本企業にとって耳の痛い話からスタートすることになったが、ダッソー・システムズの由利氏は、実はサステナビリティ実現に向けた活動を賛同する日本企業は非常に多いと話す。実際に2022年度CDP(Carbon Disclosure Project)のAリスト企業数、分野別でも世界最多であり、GXや水素基本戦略などの方針も早い段階から打ち出されてきた。
ではなぜ世界に比べ日本は遅れていると言われてしまうのか。
「目指す方向・理念は進むのですが、実行が進んでいないことがあると思います。さらに取組のスピードの遅さもあります。事業成長との同時実現を求められると実行はどうしても遅くなってしまいます。
複雑なサプライチェーン、技術革新にレギュレーションの変化など、1社でできることには限界がきています。また、サステナビリティの取り組みでの収益性を見通すためのスキルやノウハウを持つ人材が少ないことも課題です」。
さらに、スピードの遅さの原因として日本企業は調整事が多く、現場では紙ベースのプロセスが未だに多く残され、データ化もプロセス毎に分断され一貫性への課題も大きいなどDXの遅れを指摘する。そして、適切なデータなしではサステナブルは達成できない、データは強力なソリューションの提供につながると強調した。
リ-ブレニー氏も、データと人材の課題に触れ、日本企業にはESGに関する専門家が足りていないこと、正しい知識を持ってデータを扱う能力があってはじめてビジョンに向けて実行できると同意。また、サステナビリティの活動は企業単独でできることが限られるため、サプライチェーン全体で協力し合う重要性を強調した上で、日本企業がサステナブルなモノづくりを実行に移すヒントとして小さな成功体験を重ねることを説いた。
「最も重要なことは小さく始めることです。2030年、2050年といった長期的な目標をいきなり立てるのではなく、まずは1年、3年、5年後と短期的な目標をイメージする。
それが決まれば、KPI をだすことができ、KPIが決まれば今何が必要か実行に移していくことができます。
まず自分の企業が何をすべきか、そのあと技術を選んで欲しい。小さい取り組みからはじめて コストもサステナブルも両立できると証明しましょう」
3DEXPERIENCEで実現するライフサイクルアセスメント
由利氏は、サステナブルなモノづくりにバーチャルツイン技術は非常に親和性が高い、と同社のサービス3DEXPERIENCEを紹介し、3つの提供価値を挙げた。
「1つ目は、組織間でバラバラになっている情報を、プラットフォーム上で一貫性・継続性のあるデータとして提供し、ものづくりのプロセスをエンドツーエンドでつなげます。
2つ目はイノベーションの提供。ウエットでないとできない研究や開発があることも理解していますが、その上で多くの研究開発やテストがバーチャルツインに移行できると考えます。そうすることで、原材料の削減に貢献できます。
最後に3つ目として、プラットフォーム上で生まれる色々な役割の方々のコラボレーション。例えば、これまで モノづくりの中心であった設計者・エンジニアリングの方々にサステナビリティの専門家が加わることで、これまでにない組み合わせによる新しいモノづくりを考えていく。そんなことをお手伝いできればと思っています。」
さらなる、イノベーション・プロセスを実現するために、新ソリューションであるサステナブル・イノベーション・インテリジェンス(Sustainable Innovation Intelligence)では、LCAソリューションが統合されたことも紹介した。
「3DEXPERIENCEには、世界中で最も広く使用されているLCA(ライフサイクルアセスメント)ecoinvent(エコインベント)が組み込まれ、すでに皆様にご使用いただけるようになっています。製品やサービスの原料から、生産・流通、さらには廃棄・リサイクルに至るまでの一連の過程、これによって自然環境から採掘された資源、汚染物質、排出される温室効果ガスなどを試算、評価することができ、LCAってこういうことかと実感いただけるサービスになっているのではと感じています」。
サステナブル・イノベーション・インテリジェンスでは、バーチャルツイン技術とLCAデータを組み合わせることで、ESG担当者、デザイナー、設計者、エンジニアなどすべての関係者が、早い段階でサステナビリティ要件を策定することを可能とする。これによって、企業は、資材調達から廃棄まですべてをバーチャル環境で包括的に管理、環境評価、サステナブルなモノづくりを支援する。
最後に由利氏は、フランスの児童文学“星の王子様”から『未来については予測するではなく 可能にすることが大事』という言葉を紹介した。
日々、多くの情報にさらされている我々はどうしても批評家になりがちだが、サステナビリティに関しては、私たち一人ひとりが当事者になり、当事者として世の中を変えるひとりでありたいと伝える。トークセッションではペットボトルではなくガラスのコップで水が用意されていた。まさにリ-ブレニー氏が述べた小さな取組であり、由利氏が伝える当事者としての行動だ。
モノづくりの在り方を変えるバーチャルツイン
本イベントでは基調講演の他いくつかのセッションに参加し、宇宙開発などの大物から、分子モデリングまで3DEXPERIENCEのモノづくりの幅の広さを体感した。そして、技術革新が進むAIと合わせてバーチャルツインがモノづくりの在り方を根本的に変えると感じた。ゴドブ氏が言うように我々は新しいDXの段階に入ろうとしており、誰しもが逃れることはできない。
日本の製造業はこれまで現場(リアル)に強みをもってきた。強さの源泉は「人」であり、属人的な技術やすり合わせの感覚などだ。バーチャルツインはなんのためにとゴドブ氏が問いかけたように、現実があるからこそのテクノロジーである。今ある強みをデジタル技術を活かし標準化していくことで、より大きな強みへと転換することができるのではないだろうか。また、1つのプラットフォームに、多様な職種や企業が集まることで、新しいアイデア、コラボレーションによるイノベーションが生まれることが期待される。
今後も、モノづくりにイノベーションを起こす同社の活躍を注視したい。
3DEXPERIENCE、3DSロゴ、Compassアイコン、IFWE、3DEXCITE、3DVIA、BIOVIA、CATIA、CENTRIC PLM、DELMIA、ENOVIA、GEOVIA、MEDIDATA、NETVIBES、OUTSCALE、SIMULIAおよびSOLIDWORKSは、フランスの法律に基づいて設立された欧州会社(Societas Europaea)であり、ヴェルサイユの商業裁判所書記課に登記番号322 306 440で登録されているダッソー・システムズ、またはアメリカ合衆国やその他の国におけるダッソー・システムズの子会社の商標もしくは登録商標です。
▼ダッソー・システムズについて
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