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TQM(総合的品質管理)とは|手法や考え方、実際の進め方を解説

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TQMは品質向上を目的とした手法です。全社が一体となってTQM活動に取り組むことで、品質向上だけでなく、顧客満足度や従業員の満足度向上につながります。

当記事では、自社の品質に課題を感じている人に向けて、TQMの概要やTQMの原則について解説します。TQMに取り組む方法についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。

TQM(総合的品質管理)とは

TQMとは、Total Quality Managementの略で、「総合的品質管理」のことです。

TQMは製造業だけに限らず、さまざまな分野で活用できる考え方であり、分野によっては「品質」とする場合もあれば「質」とする場合もあります。

TQMの目的は、単なる部分的な品質向上だけなく、全社的または全部門的に品質を向上させることを追求することです。また、全社的または全部門的な品質向上を指すだけでなく、制約なくあらゆる業務に品質向上の取り組みを拡大する思考が含まれています。

TQMとTQCの違い

「TQM」と「TQC」の主な違いは、TQM(Total Quality Management)は「全社的な視点か」であることに対し、TQC(Total Quality Control)は「現場視点か」という点に違いがあります。

どちらも品質管理の考え方を組織全体に適用する経営手法ですが、TQMは、品質管理を経営戦略に組み込み、組織全体に適用する経営手法であるのに対し、TQCは、製造現場の品質管理に焦点を当てた手法です。

共にPDCAサイクルを活用しますが、TQMは「全社的な改善サイクル」であり、TQCは「主に品質改善のサイクル」に位置づけられています。

「TQM」は顧客ニーズの把握から改善の計画、実行、評価、改善までを繰り返し、品質改善を継続的かつ総合的に行うことが重視されます。

一方で「TQC」は、品質を包括的に管理する手法で組織の全員が参加し、全工程で品質向上を追求する活動が基本です。品質の改善には組織的アプローチが必要で、社内の品質管理プロセスに従って持続的な改善が求められます。

 TQMにおける原則

TQMは、効率的にアプローチするための代表的な原則として、以下の4つが定義されています。

  • 顧客重視の考え
  • 企業全体での取り組み
  • 継続的な改善の実施
  • 組織内における関係性の良好化

それぞれについて詳しく解説します。

顧客重視の考え

TQMの主要な原則の一つは、顧客の視点に焦点を当てることです。製品やサービスの品質は顧客が最終的な判断者であり、ユーザーの期待に応えられるような長寿命な製品であれば、高品質であると見なされます。

この原則を実践するためには、顧客のニーズを理解し、組織の目標を調整する必要があります。コミュニケーションを通じて顧客満足度を測定し、利害関係者全体に満足を提供できるような「バランス」を見つけることが重要です。

顧客重視の考えを実践することで、売上や収益の増加・市場シェアの向上・強力な顧客ロイヤリティの構築などのメリットが得られます。

企業全体での取り組み

生産性やプロセスの改善には、全従業員の積極的な参加が欠かせません。ビジョンや目標を理解させ、十分なトレーニングとリソースを提供することが重要です。

企業全体で取り組むために、まずは個人の貢献を明確にし、責任感を高めます。さらに目標に対する個々の責任範囲を明確にし、トレーニングを通じてリソースを効果的に使える環境を整えます。それにより、従業員のやる気向上やチームイノベーション、責任感の向上を促進し、結果的に従業員の定着率向上や問題解決、継続的改善への貢献が期待できます。

継続的な改善の実施

生産性と顧客満足度向上は時間がかかるため、継続的なプロセス改善が重要です。製品やサービスが変化する顧客のニーズに合わせていくための方法を見出します。

個人や部門の目標を設定し、製品やプロセスの改善を定着させ、イノベーションを促進させます。従業員のトレーニングを通じて知識と能力を向上させることで、組織の戦略的な目標の達成を目指していきましょう。

それにより、組織のパフォーマンス向上や不具合の早期修正などのメリットが期待できます。

組織内における関係性の良好化

目標達成のためには計画や戦略を組織全体で共有する必要があります。失敗のリスクを回避するために、従業員に変更や新プロセスについての公式なコミュニケーションを確立し、可能な限り意思決定に参加させます。

従業員は、自身の仕事が組織の目標にどう寄与するかを理解できるようになるとモチベーションが向上します。さらに部門の調整や協力が生まれ、方針の測定精度向上などのメリットが期待できます。

TQMに取り組む上で知っておくべき手法・考え方

TQMに取り組む上で知っておくべき手法・考え方として、以下について解説します。

  • QC活動
  • QCサークル活動
  • QC7つ道具
  • QC工程表
  • 業務標準化

QC活動

QC活動の「QC」は「Quality Control」の略で、企業内で製品・サービスの品質を改善させるための活動全てを指します。QC活動の中で、10名程度のQCサークルを作ります。

QC活動は、TQMの下で全社的な品質向上を促進する手段として利用されます。

QCサークル活動

QCサークル活動は小集団改善活動とも呼ばれ、職場で製品やサービスの質を小集団で管理・改善する自主的な活動です。10人程度の小集団で構成し、メンバーはサークルリーダーや書記などの役割を共有します。

品質向上だけでなく、問題解決力や論理的思考の向上につながります。また、コミュニケーションを通じてチームワークが強化され、組織全体の活性化に寄与します。

TQMの一環としてQCサークル活動が組織に統合されることで、組織全体が総合的な品質向上を達成しやすくなります。

QC7つ道具

QC7つ道具とは、品質管理のための基本的な手法の1つで、統計的な手法を取り入れて問題解決に役立てるツールです。

QC7つ道具について、以下の表で解説します。

名称 概要
パレート図 項目毎にデータを整理して大きさ順に棒グラフで表示し、それに対応する累積比率を表す折れ線グラフ。大きな比率を占める要因を明らかにして、結果への影響度合いや重要度を把握する際に活用する。
特性要因図 問題の原因を特定するための手法で、問題となる特性とその要因を因果関係によって整理します。魚の骨に形状が類似していることから「フィッシュボーンチャート」や「フィッシュボーン図」とも呼ばれている。
グラフ データを折れ線グラフなどで視覚的に表現して使用することで、傾向や変化率を把握するのに役立ちます。
ヒストグラム 区間ごとにデータをまとめ、度数分布表にまとめて棒グラフで表した図。データのばらつきや分布状態、ピーク値など、グラフの形状を見ることで把握でき、工程上の課題点を推定したいときに活用する。
散布図 1つの事がらについて2つの数値データを表すグラフ。視覚的に関係を示すときに活用する。X軸とY軸にそれぞれ対応する項目を配置し、データを点の集合で表現、2つの項目の相関関係、また無関係について確認できる。
管理図 視覚的に品質や工程の状態を確認するときに活用する。中心線(CL)を目標値とし、その上下に上方管理限界線(UCL)と下方管理限界線(LCL)を配置して、収集したデータを時系列で折れ線グラフとして表示。正常値と異常値を整理できる。
チェックシート あらかじめ定められた項目に基づいてデータを記入する表。様式は固定されておらず、点検用と記録用の2つがあり、使用目的に応じてシートの設計が重要。

QC7つ道具は、TQMの実践において有用な手段として、組織が品質管理やプロセス改善に取り組む際に活用されます。

新QC7つ道具

新QC7つ道具は、変化する環境やビジネスの要求に対応し、より幅広い問題に対処するために導入されました。QC7つ道具とは違い、数値化が難しい複雑な問題に対処し、新しいアプローチを見つける手法です。

新QC7つ道具について、以下の表で解説します。

名称 概要
親和図法 言語データを整理するための手法で、似たような意味を持つ言葉をグループ化することで、問題の全体像を把握するのに役立ちます。
連関図法 2つの要素の関係を矢印で表したもので、要素間の因果関係や相互作用を把握するのに役立ちます。
系統図法 目的を達成するための方法や手段をツリー状に配置していく手法。また、問題を発生させる要因を、その発生順序や影響度に応じて整理する手法で、問題の発生原因を特定するのに役立ちます。
マトリックス図法 2つの要素を列と行に配置し、関連度合いを交点に表示する方式。要素間の関係を整理し、全体を俯瞰して結論を導ける。要素間の相関関係や差異を把握するのに役立ちます。
アローダイアグラム法 アローダイアグラムで作業順序を表すことでスケジュールを管理・検討する手法。各工程の進捗を管理し、遅延の許容度、期間短縮のポイントを検討するときに有益です。
PDPC法
(Process Decision Program Chart)
目的達成に向けて予測される障害や問題を図示し、対策を考える手法。スタートからゴールまでの全体の流れを確認可能で、問題解決策の実行と評価に役立ちます。
マトリックスデータ解析法 数値データを列と行のマトリックス形式で整理することで要素間の相関関係や差異を把握し、特徴をまとめられる解析手法。新QC7つ道具(N7)の中で唯一、数値データを扱う。

新QC7つ道具は、TQMの理念と組み合わせることで品質向上や顧客満足度向上、問題解決のための効果的なツールとして活用できます。

QC工程表

QC工程表は「Quality Control Chart」の略で、工程ごとに品質管理の特性や方法を示すチャートです。製造プロセス全体の品質管理を可視化し、どの工程で誰がどのように品質を管理するかが明確になります。

組織全体で品質向上を追求するTQMの中で、QC工程表は製造プロセスの品質管理を効果的に行うために使用されます。

業務標準化

業務標準化とは、特定の業務やプロセスについて、最適な手順やルールを定めた上で作業を行うことです。業務の指示が不明確であると、各自が異なるアプローチで非効率に業務に取り組むことになり、本来の目的が達成できません。

指示された業務を確実に効率よく遂行するためには、最も適切な方法を定める標準化が必要です。標準化といっても変更できないわけではなく、定期的な見直しと改善が必要です。

TQMの進め方

TQMの進め方は、以下のとおりです。

  • テーマの決定
  • 組織体制の構築
  • 現状把握・目標設定
  • 活用する手法の選定
  • 成果の確認・分析
  • 対策案の立案・実施

テーマの決定

最初に、TQMプロジェクトのテーマと目的を明確に設定します。メンバー全員で意見を出し合い、複数の課題をあげ、改善活動のテーマを決定します。メンバーで意見を出し合うことで、現場のさまざまな課題が共有されます。

提案された課題に優先順位をつけて最も重要なテーマを選び、ディスカッションを通して改善プロジェクトのテーマを決定します。

テーマを選択する際には、QCサークルで一般的に使用されるマトリクス図を利用すると効果的です

組織体制の構築

TQM活動は、組織を作り上げて参加者にそれぞれの役割を与え、全員の協力を得ます。リーダーの選定が特に重要で、意見をまとめて活動の進捗を確認し、成果を上げるためにリーダーシップを発揮できる人を選ぶ必要があります。

リーダーは職位や経験に限らず、新しいアイデアを持った若手社員も適任です。役職ごとに情報収集やデータのまとめ、報告などの具体的な役割を担当させます。それによりチーム内で協力し合い、目標へ向かって取り組むことで連帯感が生まれ、メンバーの成長を促進できます。

現状把握・目標設定

TQMの改善活動は最初に現状を明確に把握し、数値化して問題点を確認します。次に、数値化した現状から向上する改善目標を具体的かつ達成可能なものに設定し、中期的な計画や年次の目標を検討します。

目標達成までの活動期間を設定し、期限を持つことでメンバーのモチベーションを維持します。理想的な目標と期間の設定が重要で、達成可能な範囲で進捗を確認しつつ活動を進めるとより効果的です。

活用する手法の選定

TQMの次のステップでは、目標と現状のギャップを埋めるための具体的な手段を考えます。作業時間の改善例では、詳細な分解と無駄の確認後、費用対効果を考慮しながら最適な手段を模索します。

メンバー間でアイデアを出しあい、予備実験を通じて最適な施策を見つけ出します。また、取り組んだ施策と結果を経営者に報告・相談することも大切です。 

TQMは組織全体での協力と情報共有が不可欠な取り組みです。

成果の確認・分析

手法を活用して実際に取り組み、成果の確認と分析を実施します。

現状の分析と目標は、実質的には理想を示すケースがあります。TQMは理想と現状の差異を埋めるためのアプローチなので、分析することで初めて現状を把握した段階とは異なり、目標の見え方が変わってきます。

再度の分析により、気づかなかった問題や課題が初めて浮かび上がり、TQM活動の対策や実施プランを具体的に立案できます。

対策案の立案・実施

TQM活動では、対象となるテーマの現状と目標の差異を埋めるための具体的な対策を練ります。これはTQM活動そのものであり、業務の質を向上させるために必要な対策です。

対策の立案と実施は、全スタッフの積極的な関与と協働が不可欠です。TQMの本質は「トータルな取り組み」です。各スタッフに対策内容を明確に伝え、共有することが重要です。

TQM活動の事例

トヨタ自動車のTQM活動事例を紹介します。トヨタ自動車は、TQMの考え方をいち早く取り入れ、品質管理に取り組んできた企業です。

1990年代、組織の拡大とグローバル化に伴い、TQCの考え方が希薄化し、海外の事業拡大が進む中で異なる言語や文化による従業員とのコミュニケーションの必要性が生じました。アメリカではTQCに欧米的な要素を組み合わせたTQMが広まり、トヨタも1995年にTQCの考え方の再徹底を柱とし、組織全体の質を向上させるためにTQMを再整理しました。

TQMでは「人と組織の活力を高める活動」と定義し、「お客様第一」「絶え間無い改善」「全員参加」の3本柱を行動理念としました。

職場マネジメントの質向上を目的とするMAST(Management-quality Advancement System developed by Toyota-group)も導入され、マネジメントの可視化とグローバル通用性を高めました。

2004年からはQCサークル活動も進化し、グローバルな展開とともにグレードアップが図られ、2008年には「G-QCサークル活動の進め方ガイドライン(Grade up、Global、Toyota-Groupの3つのGを冠して命名)」が制定されました。

これらの変革は、TQMがグローバルな価値観に基づくものとして展開されています。

まとめ

TQM(総合的品質管理)は、全社的な品質向上を追求する考え方で、顧客重視、全員参加、継続的改善、組織内関係性向上が原則です。

TQMでは、QCサークルにおいてリーダーシップを発揮させ、現状の課題を数値化し、メンバー同士で協力し合うことが重要です。 組織全体においてプロセスの最適化を目指し、チームで協力しながら持続的な改善を追求します。

PEAKSMEDIA編集チーム

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