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HMI(ヒューマンマシンインタフェース)とは
HMI(ヒューマンマシンインタフェース)とは、人と機械が情報をやり取りする手段や、それに関連する装置やソフトウェアなどの総称のことです。
HMIは、人が手足の動きなどを通じて機械を操作すること、または機械が現在の状態や結果を人の視覚、聴覚、触覚などを通して伝える手段を指します。
特に製造・産業機器などでは、パソコンから遠隔で機械の状態を把握し、設定や操作を行うためのソフトウェアを「HMIソフトウェア」と呼びます。
HMI(ヒューマンマシンインタフェース)の種類
HMIは、形態や操作方法によって以下の4つに分けられます。
- 物理的なHMI(ハンドルやブレーキ、ボタンやスイッチなど)
- 視覚的なHMI(タッチパネルやモニター、LEDランプなど)
- 聴覚的なHMI(音声認識やスピーカー、アラームなど)
- 触覚的なHMI(バイブレーションや振動、温度、圧力など)
どれも、人間と機械を結びつける対話の部分に位置づけられます。
HMI(ヒューマンマシンインタフェース)の役割り
HMIは、人間と機械の間で情報をやり取りする役割を果たしています。具体的には、以下の役割があります。
- 機械の操作:ボタンやスイッチを押したり、ダイヤルを回したりすることで、機械を操作できる
- 機械の状態表示:機械の現在の状態や情報を、ランプやメーター、画面などで表示できる
- 機械の警告表示:機械に異常が発生した場合、警告ランプや音声などで警告できる
HMI(ヒューマンマシンインタフェース)の重要性と課題
HMIは、人間と機械の間で円滑なコミュニケーションを行うために重要な役割を果たしています。HMIが適切に設計・実装されることで、以下のメリットが得られます。
HMI(ヒューマンマシンインタフェース)の重要性
HMIは、機械と人間の間でのコミュニケーションを促進します。
HMIの重要性は以下のとおりです。
- 使いやすい機械を構築できる
- Webサイトを利用する全ての人が問題なくアクセスできる
- ユーザーがストレスなく目標を達成できる
- 興味、経験、態度に基づいて物事を選択できる
HMI(ヒューマンマシンインタフェース)の課題
HMIの導入は単なる技術的な取り組みだけでなく、ビジネス上の課題解決に寄与するためには現場との密接な連携と理解が欠かせません。
以下にHMIの課題をまとめます。
- HMIを導入する目的を明確にする
- HMIの導入では、現行業務に存在する課題を正確に把握する必要がある
- HMIを導入することによって得られる費用対効果を検証する
- HMIを利用するユーザー部門と調整する
HMI(ヒューマンマシンインタフェース)市場
ヒューマンマシンインタフェース(HMI)市場の規模は、2023年に約81億米ドルに達すると記録されています。さらに、2036年までには約231億米ドルに達すると予想され、市場は予測期間中に最大7.8%のCAGR(年平均成長率)で成長する見通しです。
市場が急速に成長する見込みなのは、IoTとIIoTの普及によるものです。HMIとIoTデバイス・産業用マシンIIoTの統合により、通信と制御がスムーズになっていくでしょう。ヨーロッパ企業の75%が自社を保護するためにIoTを利用し、経営幹部の85%以上がIoTが不可欠であると言及しています。
特に自動車市場は、大きな成長が見込まれています。高度なテクノロジーにより、車のダッシュボードのデザインは柔軟でダイナミックかつフレキシブルに変化しました。さらに、HMIを利用した音声入力や出力機能により、車両を制御する際のドライバーの注意が散漫となることが抑制されます。
スマートで相互接続された自動車の開発には、フォトニクス・先端材料・IoT・ビッグデータが不可欠となってきます。
HMI(ヒューマンマシンインタフェース)具体例
HMIがどのように活用されているのか、具体例を以下にまとめます。
【自動車業界】
自動車業界では「自動運転技術」の進展に伴い、車載HMIが注目されています。ADASではドライバーとの円滑なコミュニケーションが求められ、最新技術を用いた音声や画像認識、VRを活用したHMIの開発が進んでいます。
【パソコン・スマートフォン】
パソコンやスマートフォンは身近なHMIであり、キーボードやタッチパネル、音声認識などを通じて指示を受ける役割を果たしています。スマートフォンは感覚的なタッチパネル方式が主流となり、今後は人間同士のコミュニケーションに近いHMIへの進化が期待されます。
【SCADA】
製造業の現場におけるSCADA(読み方:スキャダ)は、多数のセンサーから情報を収集し制御を行うシステムです。製造ラインのトラブル防止や管理者への迅速な情報伝達が求められます。SCADA向けに開発されたソフトウェアにはダッシュボードやデータ分析、レポート出力機能が組み込まれており、将来的にはより高度なHMIが要求されると考えられます。
HMI(ヒューマンマシンインタフェース)と期待される分野
HMI技術は進化しており、音声認識など人間同士のようなコミュニケーションが可能です。
将来的には「機械の人間化」が進み、感情や感覚を理解できるよう期待できます。感覚を伝えて精緻な作業を機械に代行させる研究も進んでいます。
脳の信号を利用したブレイン・マシン・インタフェースも開発されていますが、実用化までにはまだ時間がかかる見込みです。今後のHMI技術の進化には大きな可能性があり、関連製品・サービスの需要も拡大しています。
車載HMI
車両HMIとは、ドライバーが車両に搭載されている機能を利用するための手段のことです。車両HMIの代表的なソフトウェア、ヘッドアップディスプレイについて解説します。
ヘッドアップディスプレイとは
ヘッドアップディスプレイとは、光学反射を使って車両の情報を運転席側のフロントガラスやメーターフード上に投影する機能のことです。ドライバーは直感的に情報を得られ、ドライバーの姿勢や目線に合わせて角度や高さを調整できます。
ヘッドアップディスプレイのメリット
ヘッドアップディスプレイのメリットは、運転中の視線移動が少なくて済むことです。特に高速道路での走行中は、瞬時に判断が求められるため、前方への視線を外さずに情報を得られることが安全面での大きな利点といえます。
車両の情報を得るために、焦点調整が少ない点もメリットといえるでしょう。手元のメーターであれば、焦点を合わせるのに時間がかかるのに対し、HUDでは情報を認識するまでの時間が短縮されるため運転作業がスムーズに行えます。
ヘッドアップディスプレイのデメリット
ヘッドアップディスプレイのデメリットは、ディスプレイが視界を妨げる点です。メーターフード上に表示されるタイプのヘッドアップディスプレイは格納できなく、運転中は常に表示されるので不快に感じる人もいることでしょう。
一般的には、ヘッドアップディスプレイはオプションや上位グレードで提供されるため、車両費用が割高になる点もデメリットといえるでしょう。車両を購入する際は、試乗を通してヘッドアップディスプレイの見え方に違和感がないかを確認し、費用対効果を感じられるかを十分に検討する必要があります。
ヘッドアップディスプレイに今後期待されること
これまでのヘッドアップディスプレイは、速度やナビゲーションの指示など基本的な情報を表示してきました。将来的には、車両の周囲状況や運転支援システムのアラートなど、より運転を支援する情報が表示されることが考えられます。
また、ヘッドアップディスプレイに表示する内容を個人でカスタマイズできるようになり、ニーズにあわせた情報提供が可能になるでしょう。利便性と安全面で、今後も非常に大きい役割を果たしていくことが期待されます。
ブレイン・マシン・インタフェース(BMI)とは
BMI(Brain Machine Interface)とは、脳と機械を結ぶ技術や装置のことです。BMIによって、脳と機械の間で電気信号を介して情報をやり取りし、機械が脳に影響を与えたり、脳が機械に直接指示を出したりすることが可能となります。
脳と機械をつなげる方法は、大きく分けて2種類あります。
1つ目の方法は、頭蓋に電極を埋め込む「侵襲式」で、外科手術が必要になります。脳の活動をリアルタイムに処理でき、高い精度で情報を得て機械を操作できます。
2つ目の方法は、センサーを用いて逃避から脳の情報を取得する「非侵襲式」で、手術が不要です。身体的負荷が少ないため、さまざまなサービスやソリューションに利用されやすく、一般社会に普及しやすい方法でしょう。
BMIは情報をやり取りする向きによって、「入力型」「介入型」「出力型」の3種類に分類されます。それぞれについて解説します。
入力型のBMI
入力型BMIとは、外部の刺激を変換し、脳に刺激を伝えるBMIです。
音を電気信号に変換して聴覚神経に刺激を与え、聴覚を補助する「人工内耳」などに利用され、既に医療分野で実用化されています。人工内耳は保険適用が認められ、侵襲式(しんしゅうしき)の代表例として挙げられます。
介入型のBMI
介入型BMIとは、脳の情報処理や神経信号の伝達へ直接介入する技術です。例えば、脳深部刺激療法(DBS)は、特定の脳の部位に電気刺激を与えることで脳機能を調整し、症状を緩和します。パーキンソン病などの運動障害に対する治療に使用されています。
出力型のBMI
出力型BMIとは、脳の信号を読み取り、機械を操作するBMIです。出力型BMIでは、脳の信号を読み取り、手に装着した機械に命令が伝わることで手を動かせます。脳卒中の手の麻痺を改善するためのリハビリ機器の開発が進められています。
侵襲型の出力型BMIは、脳からの指示をリアルタイムで正確に伝えられます。非侵襲型は、侵襲型にくらべ精度は落ちますが、負担を少なく利用できる点に違いがあります。
BMIとVRを組み合わせたソリューションの例
BMIの研究は、仮想現実(VR)におけるデジタル空間を組み合わせた活用にも注目が集まっています。
国内のBMI研究では、防衛医科大学校が「防衛装備庁技術シンポジウム2018」で展示した「VR模擬戦遂行時の脳波計測」があります。VR空間内で軍事訓練を行い、脳波を取得して隊員のストレス耐性や回復力を分析・強化することを目指しています。
海外のBMI研究では、スイスのMindMaze社が開発した、脳に損傷を受けた患者の回復を支援する医療用VR製品が注目されています。この製品は、脳イメージングやVRを組み合わせて、直感的なリハビリを可能にしています。
車のインタフェース・車載HMI(ヒューマンマシンインタフェース)
車載HMIは、車に乗る人間が機械やシステムを簡単に制御したり管理したりできる仕組みを指します。
特に自動運転ができる自動車に欠かせない仕組みで、だれでも乗りこなせるよう開発が進められています。HMIについての理解を深めるうえで、車載HMIとADAS(先進運転支援システム)について考えます。
車載HMIは、人間と車の相互やり取りを指す用語です。人が機械に指示を与える手段としてスイッチやペダルなどがあり、実はハンドルやペダルなどもインタフェースに含まれます。
各種操作をタッチ式に集約する例は、高級車や電気自動車(EV)でよく見られます。例えば、米TeslaのEV「モデルY」は、HMIの機能を前席中央のセンターディスプレイに集約しています。カーナビやエアコンの操作、車両制御などを1つの画面で行い、速度計などの車両状況を表示するメーターディスプレイは独立して設置されていません。同様に、ドイツMercedes-BenzやPorscheのEVも物理スイッチを最小限にし、機能をディスプレイ内に集約しています。日産自動車のEV「アリア」や「サクラ」は、エアコン操作パネルをセンターディスプレイから独立させていますが、タッチ式としています。
共通して言えるのは、車内のデザインがシンプルで先進的であることで、未来のクルマに乗っているような雰囲気を感じられる点です。従来のクルマがシフトレバーやスイッチを設置していたセンターコンソールに大きな収納が加わりますが、運転中の操作が難しい点がネックです。これまでなら物理スイッチ1つで完結する操作も、ホーム画面からメニューを選択するなど何倍もの時間がかかるでしょう。各種アプリケーションの位置を覚え、円滑に操作を行うためにはタッチ式に慣れる必要があるでしょう。
ADAS(先進運転支援システム)の開発では、車載HMIが重要視されています。人と車載システムが協力して車の運転を行うため、円滑なコミュニケーションが重要になります。
一方で、完全自動運転は未だ実現しておらず、「どの場面で危険が生じるか」「異常事態にどのように対処するか」といった課題への対処法が模索されています。
未来の車のインタフェースについては、リスクに対する研究が鍵を握ると考えられています。
まとめ
HMI(ヒューマンマシンインタフェース)は、人と機械が情報をやり取りする手段であり、物理的なHMIや視覚的なHMIなどがあります。HMIの役割は機械の操作や状態表示、警告表示などがあり、適切な設計で使いやすい機械が構築できます。
HMI技術は進化し、自動車業界やパソコン・スマートフォン、SCADAなどで広く活用されており、今後の進化が期待されています。