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シェアリングエコノミーとは
シェアリングエコノミーとは、一般消費者が保有している時間・資産・スキル等を必要な人に提供・共有するビジネスモデルのことです。総務省でも、下記の通り定義されています。
『「シェアリング・エコノミー」とは、典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。』
シェアリングエコノミーは、ICT(=Information and Communication Technology・情報通信技術)の発達と共に盛んになりました。自分がシェアできるものを気軽に登録でき、かつニーズに応じて気軽に利用できるシステムが生まれたからこそ、シェアリングエコノミーが普及しています。
シェアリングエコノミーの特徴
シェアリングエコノミーは、CtoC(=Consumer to Consumer・個人間取引)で実行されることが多いです。シェアリングエコノミーサービスを開発するのは企業ですが、サービスを利用して実際に資産を貸し借りするのは個人です。
企業はあくまでもWebサイトやアプリケーションなどのプラットフォームを提供するだけであり、そこに参画することはほとんどありません。
少数ですが、BtoBのシェアリングエコノミーも存在します。「今使っていない自社の機材を他の企業に貸す」などの方式であれば、BtoBシェアリングエコノミーに該当します。
シェアリングエコノミーの市場規模
シェアリングエコノミーの市場規模は、2020年の段階で2兆1,004億円に到達しています。現状のまま成長すると2030年には7兆4,719億円に到達すると言われており、将来的に広告業と同程度の市場規模になる可能性を含んでいます。
シェアリングエコノミーが注目されるようになった背景として、下記2つが挙げられます。
- 購買に関する価値観の変化
- ICT技術の発展
第一に、「具体的なモノを所有する」ことに対する価値観が薄まっていることが関係しています。
レンタル品や中古品でも質が高ければ十分な価値があると考えたり、所有よりサービス品質や利便性を重視したりする人が増えたことで、シェアリングエコノミーのニーズが増大しました。
また、非対面でサービスを完結できるシステムや、スマートフォンアプリで24時間365日手軽に使える「シェアリングアエコノミー用のプラットフォーム」が開発されたことも追い風となりました。
シェアリングエコノミーの認知度が改善した場合、14兆1,526億円にまで市場規模が拡大する可能性があるとも言われており、急成長中であることがわかります。
シェアリングエコノミーの種類
シェアリングエコノミーには、下記の5種類があります。
- 空間のシェア
- モノのシェア
- スキルのシェア
- 移動のシェア
- お金のシェア
以降でひとつずつ解説します。
空間のシェア
空間のシェアとは、保有する場所をシェアする方法です。
例えば、空いている家・駐車場・農地・倉庫などを貸し出す方式が盛んです。CtoCだけでなくBtoBやBtoCでも取り入れやすい方法として注目されました。
空間のシェアの事例
- Airbnb(エアービーアンドビー)
- akippa(あきっぱ)
- スペースマーケット
世界最大級の民泊プラットフォーム「Airbnb」、個人宅や事務所の駐車場を貸し借りできる「akippa」、会議室やレンタルスペースを貸し借りできる「スペースマーケット」などが有名です。
いずれも遊休地を有効活用することに焦点を当てており、1日単位(会議室等であれば1時間単位)で利用できるのがポイントです。予約の受付から実際の利用・決済まで全てオンライン上で完結できるケースが多く、完全非対面にできるメリットもあります。
モノのシェア
モノのシェアとは、使わなくなったモノをレンタル等でシェアする方法です。
例えば、利用時期が限定されていて所有のハードルが高いスキー用品、サーフ用品のレンタルが該当します。
その他、使用期間が限定されているベビー用品や、流行性の高いファッション用品などもシェアしやすいアイテムです。
モノのシェアの事例
- airCloset(エアークローゼット)
- LAXUS(ラクサス)
- airRoom(エアールーム)
プロのスタイリストが選んだファッションアイテムを一時的に借りられる「airCloset」、ブランドバッグレンタルに特化した「LAXUS」、ブランド家具・家電をレンタルできる「airRoom」などが有名です。
いずれも「ちょっと良いものをお試し感覚で使える」点にメリットがあり、本当に気に入ったものだけを購入できるのがメリットです。無駄にモノを増やすのに抵抗を感じる、現代の価値観とマッチしたサービスとなっています。
スキルのシェア
スキルのシェアとは、個人が持つ業務能力や専門知識を一時的に提供する方法です。
副業ニーズの伸びとともに盛んになったシェアリングエコノミーの一種であり、限られた時間で効率よく稼ぐ手法として確立しました。スキルを利用する側にとっても人ひとり雇う労務コストより安価である点が注目を集め、活用の幅が広がっています。
スキルのシェアの事例
- CrowdWorks
- ココナラ
- ファストドクター
大手クラウドソーシングサイト「CrowdWorks」、スキルマーケット「ココナラ」、医師による時間外往診サービス「ファストドクター」などが代表例として挙げられます。
業務委託で仕事を発注したり、ピンポイントでの相談・手続きだけを依頼できたりするのが最大の特徴であり、スポット利用しやすいのがメリットのひとつです。
医師が24時間365日体制でサポートしてくれるサービスやオンライン診療なども、新型コロナウイルスの流行と共に注目されました。
移動のシェア
移動のシェアとは、移動手段をシェアする方法です。
代表的な例としてカーシェアが挙げられますが、近年はサイクルシェアやバイクシェアなども盛んになりました。その他、タクシーの相乗りマッチングサービスなども出てきており、効率よく安価に移動することの価値が高まっています。
移動のシェアの事例
- タイムズカー
- notteco(のってこ!)
- Uber
大手カーシェアサービス「タイムズカー」、長距離ライドシェアマッチングアプリ「notteco」、タクシー配車アプリ「Uber」などが挙げられます。
日本では営業許可を持つタクシー等を除き、有償で送迎サービスを提供することが禁止されています。
しかし、政府は2024年4月から、一般の個人が自家用車を使用して乗客を有料で運ぶ「ライドシェア」を解禁する方針です。
そのため、移動のシェアでは車や自転車など移動に必要な「モノ」をシェアする形か、すぐに利用できるタクシーや相乗り希望者を呼ぶマッチングアプリの形で提供されています。
お金のシェア
お金のシェアとは、資金調達に特化してお金をシェアする方法です。
クラウドファンディング用のプラットフォームに代表されており、企業や個人の資金調達を支援できるようになりました。支援した金額に応じてリターンを受けるクラウドファンディングの他、リターンを受けない募金サイト等も活用されています。
お金のシェアの事例
- CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
- Makuake(マクアケ)
- READYFOR(レディーフォー)
大手クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」、購入型クラウドファンディングサイト「Makuake」、購入型・寄付型どちらも選べるクラウドファンディングサイト「READYFOR」などが有名です。
特定企業だけでなく、業界・職種全体にクラウドファンディングできるなど、さまざまなスタイルが広がっています。
シェアリングエコノミーを提供するメリット
シェアリングエコノミーを提供するメリットは、下記の通りです。
- 初期コストを最小限にビジネス展開
- 遊休資産の有効活用
- 新たな資産的価値を持つものを発見できる可能性
下記で詳しく解説します。
初期コストを最小限にビジネス展開
人が所有するモノやスキルを有効活用することで、初期コストを最小限に抑えながらビジネスを展開できます。
シェアオフィスを使って固定費を削減しながら拠点を持ったり、事業が軌道に乗るまでの間は業務委託で有能なフリーランスを活用したりすれば、ランニングコストを減らせます。
企業だけでなく、新たにビジネスを考えている個人にもおすすめです。個人宅におけるエステサロン開業時に機材をレンタルで賄うなど工夫すれば、ビジネスチャンスが拡大します。
遊休資産の有効活用
遊休資産とは、今現在使わず持て余している資産を指す言葉です。
余っていて誰も使わない土地・不動産、閉店直後の店舗などは、保有しているだけでもコストがかかります。しかし、自分にとっては使わないものでも、他の人にとっては活用の道がある資産に映るかもしれません。
遊休資産を人に貸し出すことができれば、収入につながります。維持費の削減にもつながるので、有効活用が必要です。
新たな資産的価値を持つものを発見できる可能性
シェアリングエコノミーを活用することで、今まで価値がないと感じていたものでも、新たな資産価値を持つ可能性があります。
「所有しているけれど最近使っていないもの」「今後使う予定がないけれど思い出が多くて捨てられないもの」なども、人に貸し出すことで価値を持つようになります。
スキルをシェアリングエコノミーに活用すれば、フルタイムでは働けない育児中・介護中の人がクラウドソーシングサイトを使って働けるようになったり、価値の幅も増えていくでしょう。
思わぬ資産がお金になる可能性があるからこそ、シェアリングエコノミーへの注目度が上がっています。
シェアリングエコノミーを提供するデメリット
シェアリングエコノミーには多くのメリットがありますが、一方でデメリットもあるので注意しましょう。
- 専面識の無い人物とのやり取りによるトラブルリスク
- 保険・保証制度やルールが不十分
思わぬ落とし穴にならないよう、事前にデメリットをチェックしておくことも大切です。
面識のない人物とのやり取りによるトラブルリスク
CtoCのシェアリングエコノミーでは、面識のない個人とやり取りするシーンが多く、思わぬクレームやトラブルが発生する恐れがあります。
万が一トラブルになったときプラットフォーム側が仲介してくれるとも限らず、利用者間で解決するしかないこともあるので注意が必要です。
「全く話が通じない相手で困っている」「連絡を徹底的に無視されて泣き寝入りした」など、残念な結果に終わるケースもあります。価値観の違う人同士が単発かつオンラインで取引する危険性は、十分認識する必要があります。
保険・保証制度やルールが不十分
シェアリングエコノミーの保険・保証制度や、ルールが不十分であることが原因となり、トラブルに発展する事例もあります。
例えば「喫煙禁止のレンタルスペースで喫煙された」「貸していた機材が壊れて戻ってきた」などのトラブルが起きたとき、必ずしも希望する保証が受けられない場合も多いです。
手軽に利用できるからこそ利用中の監視も難しく、当事者同士の話し合いが上手くいかないことも想定しておく必要があります。
今後厳格な法整備がされる可能性もありますが、現段階ではプラットフォーム側のルールを細かくチェックしながら利用する他ありません。
まとめ
シェアリングエコノミーは、購買に関する価値観の変化や新型コロナウイルスの流行と共に注目されるようになったビジネススタイルです。
現在は手軽に使えるプラットフォームやアプリも増えており、遊休資産を活用しながら収入を得る手法としても確立しました。
今後、更に多くのシェアリングエコノミーが生まれる可能性があるので、自分にとって使いやすいサービスがないか探してみましょう。その際はプラットフォーム側のルールや取引相手を十分チェックし、トラブルにならないよう利用することも大切です。