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プロフィール
2001年7月9日に開館した国立のサイエンスミュージアム。「あなたとともに『未来』をつくるプラットフォーム」をテーマに、多様な常設展示や3D映像が楽しめるドームシアター、特別展やイベントを通して「未来を考える」時間と場所を提供している。
2023年11月22日より、「ロボット」「地球環境」「老い」をテーマにした4つの新しい常設展示が誕生。
なぜ、今ここに存在するのか――根源的な問いと向き合う「宇宙」
まずは、5階の常設展「世界をさぐる」の「こちら、国際宇宙ステーション」からスタートしよう。初代館長・毛利衛氏が総合監修を務めた展示で、地上400kmに浮かぶ有人実験施設・国際宇宙ステーション内で宇宙飛行士が生活する「宇宙居住棟」を再現したもの。
無重力空間である宇宙では、当然地上と同じようには暮らせない。では、どうやって食事をするのだろう?トイレはどうするのだろう?そんな素朴な疑問に応えてくれる展示が満載だ。
一歩外に出ると、吹き抜けに浮かぶ地球型のシンボル展示「ジオ・コスモス」がこちらを見下ろしており、宇宙視点を堪能できる。
果てしない宇宙の広さに思いを馳せた後は、素粒子ニュートリノの研究で2015年のノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章氏の監修による「ニュートリノから探る宇宙」へ。ニュートリノ観測装置「スーパーカミオカンデ」の10分の1の模型と解説から、物質の最小単位を通して宇宙を見る視点への転換を楽しもう。
5階では、H2Aロケットの最初の燃焼実験に使われた実物のロケットエンジンも必見。地上へと視点を戻し、華やかな宇宙開発の根底を支えるエンジニアたちの努力に思いを馳せたい。
「宇宙の先端技術が一堂に会していて、短時間ではとても見切れない!」と黒田さん。名残惜しそうに振り返りつつ、次の展示へ…。
より良い共存を考えるきっかけに。「ハロー!ロボット」
3階の常設展「未来をつくる」にある「ハロー!ロボット」は、ロボティクス研究の最前線を集約した、新たな常設展示の1つ。
パートナーロボット「ケパラン」は、来館者が掲げるさまざまなアイテムに応じて、豊かな感情表現を見せる。今後は、ケパランのふるまいや動作の在り方について来館者の意見を吸い上げ、求められる機能を搭載していく予定だそう。
動物を再現して理解するといった歩行技術の研究に関するロボットのほかに、不完全さを人が補うことで生まれるコミュニケーションに着目した「弱いロボット」などもあり、「ロボットが人を支える」以外の関係性の在り方に気づくことができる。
隣のブースにある「ナナイロクエスト」は、専用タブレットを使ってロボットと暮らす街「ナナイロシティ」を探索するツアー。物語を進める中で、ロボットとの共存を疑似体験し、未来の暮らしのイメージを膨らませよう。
老いることへの不安は、知ることによって解消される。「未来をつくる」
3階の奥に進んでいくとあるのが、新設展示の中で最も高い人気を誇る「老いパーク」。
来館者の意見や社会的な指標をもとに「何をもって老いたというのか」を考えてから、老化を自覚しやすい目、耳、運動器、脳の変化を疑似体験して「老いるとどうなるのか」を体感する。中でも、足首に重りをつけた状態で手押し車を押し、バーチャルで買い物をする「スーパーへGO!」は子供にも大人気。日常生活で出会う高齢者への優しさをはぐくむ契機としてもおすすめだ。
実際に体験した黒田さんは「思った以上につらい」とヘトヘトに。一方、実際に訪れるまでわからない「老い」を体感できるコンセプトには感心しきり。「作った人の思いが端々に感じられる展示。リピートして新しい発見を楽しみたいですね」。
パーク内には、先端の科学技術を駆使して老いと付き合う方法を学んだり、自分なりの老いについての回答を投稿したりできるコーナーもあり、楽しみながら老いについて体験できる。
理想の未来への糸口を、日本科学未来館で見つけよう
宇宙、ロボット、老い――。新たな常設展示が見せているのは、今ある豊かな地球を未来に受け継いでこその未来だ。理想の未来の形が見えてきたら、その実現に向けて「今をどう生きるか」を考えてみたい。
「未来逆算思考」は、実現したい未来から逆算して今やるべきことを考える「バックキャスティング思考」を学べるボードゲーム。50年後の未来に今の地球を受け渡すために、正しい道を選べるかどうかが問われる。起こりうるリスクと、回避の道をいかにリアルに想像できるかがカギだ。
「日本科学未来館全体を通して、さまざまな角度から未来を考え、主体的に未来づくりに参加することの大切さを学べますね」(黒田さん)。
視覚障がい者を支援するアクセシビリティー技術の研究開発に長年携わり、IBMフェローとしても活躍する浅川智恵子氏の館長就任を受けて、障害や年齢に関係なく未来にふれられる施設づくりを行う同館。ノーベル賞受賞者たちからのメッセージ「ノーベルQ」は、手話動画や点字でも紹介されている。
我々がつくった未来に生きる子供たちといっしょに、あるいは連れ添って老いていくパートナーとともに。日本科学未来館を足がかりに、より良い未来に向けた始めの1歩を踏み出そう。