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循環型社会(サーキュラーエコノミー )とは
循環型社会(サーキュラーエコノミー )とは、資源を再利用・再生することで循環させ、環境負荷が軽減された社会を指します。
素材や製品の寿命を延ばして、なるべく廃棄物を出さないよう開発の段階から設計することで、原材料を削減できます。使用済みの製品や素材をリサイクルすれば、製品を製造する際に必要なエネルギー消費を低減でき、二酸化炭素排出量の削減も期待できます。
循環型社会が機能すれば、以下のような課題の解消を期待できます。
- 二酸化炭素の排出
- 大気汚染
- 有害物質の暴露
また、再生可能エネルギー、生物の生息地の回復、空気の清浄化などの活動により、大きな経済的メリットをもたらすことも期待されています。
注目される理由・背景
これまでの社会は、大量生産・大量消費・大量廃棄が前提とされてきました。しかし、天然資源には限りがあり、ゴミ処理場が不足している問題や、不法投棄などの課題が常にあがっていました。
また、石油や石炭などの化石燃料の燃焼や、モノの輸送や廃棄物の焼却によって排出される二酸化炭素が、地球温暖化が進む原因とされ脱炭素の動きが高まっています。
これらの課題を解消するためには、そもそも消費をおさえることで、環境への負荷を低減できるようになります。
持続的な社会の成長を維持するために、環境問題へ配慮することが注目されるようになりました。
また、持続可能な開発を目指す「SDGs」の17の目標においても、循環型社会に関連した部分が多くあることも注目される大きな理由です。
- 目標12:つくる責任 つかう責任(再利用・長期利用が可能な設計をする)
- 目標13:気候変動に具体的な対策を(限りある資源を有効に使い、 生態系を守る)
- 目標14:海の豊かさを守ろう(ゴミを排出しない設計で海へのゴミ捨てを防ぐ)
- 目標15:陸の豊かさも守ろう(資源の有効活用により資源の過剰利用を防ぎ生態系を守る)
3Rとの違い
循環型社会(サーキュラエコノミー)と3Rには、明確に違いがあります。「設計の段階からゴミを発生させない」という循環型社会に対し、3Rは「ゴミが少なからず発生する前提」である点です。
3Rとは、Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)の頭文字をとった用語で、それぞれの意味は以下となります。
- Reduce(リデュース):なるべくゴミを発生させない製品づくり
- Reuse(リユース):製品や素材をくり返し使用する
- Recycle(リサイクル):廃棄されたものを再活用する
循環型社会の実現には、これら3Rを実現することが不可欠です。
循環型社会の取り組み内容
循環型社会を実現することは、世界的な課題のためさまざまな国と地域で取り組みが行われています。
ここでは、国内および海外において、循環型社会を目指すためにどのような取り組みを行っているかを解説します。
日本国内の取り組み内容
これまで、家電リサイクル法・廃掃法の改正・容器包装リサイクル法の整備により、ゴミ問題やリサイクルの対策が行われてきました。
しかし、ゴミ処理場の不足や不法投棄の問題から、ゴミ処理と資源化の2つを総合的にとらえた取り組みが必要となりました。
循環型社会の実現に向け、国内では「循環型社会形成推進基本法(循環型社会基本法)」や、「廃棄物処理法」といった法整備が行われました。
循環型社会形成推進基本法とは、簡単に言うと循環型社会をつくるために必要な基本的なしくみを規定した法律です。
主に、以下の5つを規定しています。
- 天然資源や使用済みの製品を、価値の有無を問わずに「廃棄物等」とする
- 製品が廃棄物等とならないようにする
- 発生した廃棄物は循環資源とする
- 廃棄物は適正な循環的利用(再使用・再生利用・熱回収)を図る
- 循環的に利用されないモノは適正に処分する
これによって、「天然資源の消費を抑え、環境への負荷が可能な限り低減される循環型社会」を実現するとされています。
世界的な取り組み内容
循環型社会の実現は世界的な課題であり、各国や地域で様々な取り組みが行われています。
■アジア太平洋3R推進フォーラム
アジア太平洋3R推進フォーラムとは、アジアの経済と環境の両立を図ることで、循環型社会の実現を目指す取り組みです。
2008年、東アジア環境大臣会合において、日本の提案によって設立されました。日本以外では韓国や中国、シンガポールやオーストラリアなど、39ヶ国が参加し、各国の政府や国際機関、研究機関などの幅広い関係者との協力基盤となっています。
フォーラムでは、参加国の政策対話の促進や、3Rプロジェクトの実施支援、3Rに関する情報共有、関係者のネットワーク構築などが進められています。
■(EU)使い捨てプラスチック流通禁止指令
ヨーロッパでは環境保全に対する意識が高く、プラスチック製品の利用にかかわるガイドラインが制定されています。
2019年、EU理事会で「使い捨てプラスチック製品の流通を禁止する法案」が制定されました。
それにより、EU加盟国は国内法案を整備し、2021年より対応を開始しています。
循環型社会に向けた企業の取り組み事例
循環型社会に向けて、企業が取り組んでいる内容について実例を解説します。
ファーストリテイリング(ユニクロ)
ファーストリテイリング(ユニクロ)は、ユーザーから回収した服から、また新たに服を作る「RE.UNIQLO」というプロジェクトを実施しています。
第1弾で「リサイクル・ダウンジャケット」を発売しました。
また、ユニクロの店舗へダウン商品を持っていけば、500円分のデジタルクーポンがもらえるという活動も実施しています。
各店舗に「RE.UNIQLO」の回収BOXが設置されていて、ユーザーが必要なくなった服がいつでもリサイクル可能なしくみを取り入れています。
NEC
NECは、機器のレンタルサービスを提供し、返却された機器の再生資源の有効活用や、廃棄物の削減を積極的に行っています。
具体的には、使用年数を超えたルーターをユーザーから回収、プラスチック材を解体して粉砕し、再びWi-Fiルーターとして再商品化しています。
トヨタ
トヨタでは、以下3つの大義をかかげ、「循環型社会・システム構築チャレンジ」という取り組みを行っています。
- 廃車公害の未然防止
- 資源リスク対応(枯渇・高騰・供給)
- 地球温暖化対応
グローバルに展開するトヨタの特徴は、「新興国」と「先進国」によって実施内容に変化を加え、地域に合った活動をするという工夫をしました。
新興国では、水質汚濁・土壌汚染・温暖化防止を目指したフロンガス・廃油・廃液の適正処理を実施しています。
先進国では、新技術である燃料電池自動車(FCV)解体手順・工法を販売前に作成し、各地でデモンストレーションを実施しました。
自動車を販売して終わりでなく、廃車による公害がなくなるよう、解体モデル施設を世界中に拡充していく取り組みを行っています。
パナソニック
パナソニックでは、商品に使われている資源のほとんどがリサイクルできるようになっています。リサイクル工場「PETEC」を中心に、最新のリサイクル技術を活用して、使用済みの商品から資源を回収して、新しい商品へと活用しているのです。
また、資源循環を促進するために、あらかじめリサイクルを考慮した商品開発を行っています。リサイクル現場で得た知識やノウハウ、工夫すべきポイントは、開発部門へフィードバックされ新商品のアイデアに役立てられています。
TOTO
TOTOグループでは、限りある資源を有効活用するために、3Rの視点で廃棄物の減量化・再資源化の取り組みを進めています。
衛生陶器の製造工程から排出される粘土を原料に戻す再利用や、粘土の水量を減らすことにより再使用率を上げる取り組みを推進しています。
個人にもできる循環型社会への取り組み
近年では、3RにRefuse(リフューズ)、Repair(リペア)をプラスした「5R」が登場しています。
これまで、循環型社会の実現に向けて、3Rを軸とした取り組みが行われてきましたが、5R は我々が日常の生活で、気軽に取り組めるものとなっています。
循環型社会を実現するため、われわれ一人ひとりが天然資源を利用することを自覚し、普段からの行動を少しでも変化させることが重要です。
Refuse(リフューズ)
Refuse(リフューズ)とは、ゴミになる可能性のあるモノを「買わない」「もらわない」ことによって、ゴミの発生を抑える取り組みを指します。
普段の生活の中で取り組めるため、このRefuse(リフューズ)から実践すると良いでしょう。
【具体例】
- 本屋のブックカバーや店舗でのレジ袋は必要なければ断る
- 出かけるときは、マイボトル・マイバッグを持参する
- 使い捨ての割り箸やスプーン、ストローなどを受け取らない
- 必要のないダイレクトメールやチラシは断る手続きをする
Repair(リペア)
Repair(リペア)は、壊れたモノを修理し、廃棄物せずに長く使うことで環境に配慮することを意味します。
汚れたり壊れたりしても、捨ててしまうのではなく、直して使えないかを考えることが大切です。
【具体例】
おもちゃや時計などのモノが壊れても自分で修理ができないかを考える
機密製品など、自分での修理ができないモノは専門店に相談する
まとめ
循環型社会(サーキュラーエコノミー )とは、初めからゴミを排出しない製品設計によって、資源の再利用や再生をすることで循環させ、環境負荷を軽減する社会を意味します。
3Rや5Rを軸とした取り組みによって、企業だけでなく我々個人も、普段の生活の中で環境に配慮した行動を心がけることが大切です。