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メタバースとは
メタバースとは、「仮想空間」のことを指します。インターネット上に構成される3Dの世界に、アバターと呼ばれる自分の分身を作成してメタバースの世界に入ります。
メタバースの世界では、これまでのゲームとは違って、基本的には現実世界と同様に自由に動けます。アバターの行動には制約が無く、ゲームやファンのイベント、展示会やオフィスでのミーティングなど、娯楽以外でもビジネスとして利用も可能なため、さまざまな可能性が期待されています。
VRとの違い
メタバースとVR(読み方:ブイアール)の違いを簡単に表現すると、メタバースは仮想空間そのものを指し、VRは仮想空間を現実と同じように体験するための手段を指します。
【VRとメタバースの違い】
メタバース | ・Metaverse=仮想空間 ・仮想空間そのものを指す ・仮想通貨を使ってショッピングができる ・土地を所有したり、建物を建設したりできる |
VR | ・Virtual Reality=仮想現実 ・メタバースを体験するための手段・技術 ・ゲームやシミュレーションに活用 ・トレーニングに活用 |
メタバース活用の具体例
メタバース空間は、以下のようなことに活用されます。
具体例 | 特徴と解説 |
ゲーム | ・3Dの仮想空間で、リアリティのあるプレイを体験できる・複数のユーザーで同時に楽しめる・キャラクターやアイテムをNFT(※)として売買することも可能 |
リモート会議 | ・自宅にいながら会社のメンバーとミーティングが可能・VRヘッドを装着することで、バーチャルオフィス上のホワイトボードにアイデアを書き込んでメンバーで共有するなど、ビデオ会議とは違った臨場感のあるコミュニケーションを体験できる |
ショッピング | ・VR技術によって作成したバーチャルショップで買い物を楽しめる・ユーザーはアバターを動かし、現実世界のような買い物体験ができる |
イベント・ライブ | ・コロナ渦でイベントやライブが中止になったことから、メタバースを利用して開催する動きが増えている・遠隔地にいても、臨場感のあるライブやイベントを体験できる |
投資・資産運用 | ・メタバース空間において、ユーザーや商業施設の集まりやすい土地は価格が高騰しており、土地の売買や賃貸で収益を得る企業も出てきている |
※NFT(読み方:エヌエフティー)とは、Non-Fungible Tokenの略語で、非代替性トークンを指す。ブロックチェーンを基盤として作成された代替不可能なデジタルデータのこと。仮想通貨によって売買が可能。
注目を浴びている理由
メタバースはなぜ注目を浴びるようになったのでしょうか。ここでは、その理由について説明します。
■テクノロジーの発達
インターネット回線の高速化やVR技術の発展など、テクノロジーの発達によって現在はメタバースにアクセスしやすい環境が整っています。特に、VR技術の向上が目覚ましく、より現実に近い感覚で仮想空間での活動が可能になっています。それにより、ユーザーが体験しやすくよりリアリティのある世界に対して興味が注がれたことから、注目が集まるようになりました。
■NFTなどの技術の発展
NFTとは、デジタル上のデータに対して、本物であるという証明書を付けて売買できるようにする技術を指します。例えば、メタバース上でアバターが着る服やバッグ、装飾品や、絵画などの美術品などもNFTとして売買されています。NFTが売買・所有できるようになったことで、メタバース上で活発にビジネスが行われるようになりました。
■コロナ渦に対応した新たなコミュニケーション
コロナ禍によって、非対面でのコミュニケーションが求められるようになったことも、メタバースが注目される理由です。企業の多くは、Web会議などのコミュニケーションツールを活用しました。その一方で、あたかもオフィスへ出勤して対面してミーティングを行っているかのような、リアリティのあるメタバースも大きく注目されました。
このように、メタバースの活用シーンは多岐にわたり、これまでなかったビジネススタイルの創造につながるでしょう。
メタバースを支える技術
インターネット上に構成されているメタバースは、さまざまな技術に支えられて提供されています。その技術は、以下のようなものがあります。
【メタバースを支える技術一覧】
- VR(読み方:ブイアール)
- IoT(読み方:アイオーティー)
- 通信技術
- AR(読み方:エーアール)
- 3D構築
- ブロックチェーン技術
- AI知能
各技術について、以下で詳しく説明します。
VR
VR(Virtual Reality)仮想現実と訳され、リモコン操作で自分の動きをそのままメタバース内のアバターに反映できます。現実世界で、専用のコントローラーを操作しながら手をあげると、アバターも同様に手をあげます。仮想現実の世界へ入り込むためには、VRのアプリやVRゴーグル、コントローラーなどを活用します。
今後、さらにVRの技術が向上すれば、メタバース上で物理的なシミュレーションを体験することも可能になります。
IoT
IoT(読み方:アイオーティー)とは、Internet of Thingsの略語で、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。現実空間の「モノ」を、センサーなどを通じてインターネットにつなげる技術です。
IoTの技術を使い、現実世界の情報を収集してメタバースに現実世界をそっくり再現します。それにより、現実世界では実現できないようなシミュレーションや実験が可能となります。これを「デジタルツイン」といいます。
デジタルツインを活用することで、工場の生産ラインのシミュレーションや配送センターの倉庫の設計、商業施設での消費者の流れや道路の交通状況など、さまざまなシミュレーションに活用できます。
通信技術
メタバース上でデータ量の多い3D画像をリアリティのある動きにするためには、タイムラグの起こらない通信技術が必要です。高品質な光回線や5Gなど、超高速で大容量の通信が可能な環境が求められます。5Gとは、第5世代移動通信システムのことで高速通信の規格を指します。
5Gが普及することによって、通信センサーが搭載されたIoTから情報を高速でやり取りができるようになり、デジタルツインの活用が効果的に推進されます。
AR
AR(読み方:エーアール)とは、Augmented Realityを略したことばで、拡張現実と訳されます。現実世界にバーチャルの映像を重ねることができます。
例えば、スマホやタブレット画面を通して、自宅にゲームのキャラクターをバーチャルで映し出し、あたかも自分の部屋にキャラクターが存在しているような体験ができます。ARの技術は、メタバースの初期モデルとも言われています。
3D構築
3Dの技術は従来から存在しましたが、より現実世界と変わらない空間を表現することがメタバースの課題でした。3D技術の進歩により、現在はリアリティのあるデジタル空間を構築できるようになりました。
例えば、不動産業界においては、遠方からの引っ越しを検討しているユーザーに、バーチャルの物件を内見してもらうことが可能です。
ブロックチェーン技術
ブロックチェーンとは、暗号技術によって取引履歴(=ブロック)を1本の鎖のようにつなげ、正確な取引履歴を維持しようとする技術を指します。ブロックチェーン技術が活用されることで、メタバース上で仮想通貨やNFTの取引が可能となります。
AI知能
AI(人工知能)は、現代において家庭環境やビジネスシーンを問わず、さまざまな場面で活躍しています。メタバース上では、NPC(読み方:エヌピーシー)にAIが活用されています。NPCとは、Non Player Characte(ノン プレイヤー キャラクター)の略語で、ゲーム上でプレイヤーが操作しないキャラクターのことです。
メタバース上でサービス提供側の企業は、NPCにAIを適用することでユーザーとの交流や、さまざまなタスクを行わせることができます。例えば、アパレルショップでの店員や、イベント会場における視界進行役などです。
メタバースがもたらすメリット・デメリット
ここでは、メタバースがもたらすメリット・デメリットについて解説します。
メリット
- 自宅にいながらリアルな仮想体験ができる
- 非日常のユーザー体験
- 新たなビジネスの開拓
メタバースでは、現実世界と同じようなリアルな体験を得られます。そのため、音楽ライブやイベントなど、自宅にいながらあたかもイベント会場にいるような臨場感を味わえます。
今後、仮に新たなパンデミックが発生した際、ロックダウンとなり外出できなくなっても、バーチャルでイベントを楽しめるようになり、主催側もビジネス活用ができます。
非日常の体験や新たなビジネス機会を創出できるメタバース事業は、まだ発展途上であり、これからさまざまなサービスが生まれることが予想されます。
デメリット
- 活用にはコストがかかる
- セキュリティのリスク
- 依存性の問題
- 法整備が追い付いていない
デメリットとしては、メタバースを活用するためにはコストがかかることが挙げられます。メタバース空間を体感するためには、ユーザーはまず機材を用意する必要があり、企業側としてもメタバース上の土地を用意したり、テナントを賃貸したりと、環境の構築にはコストがかかります。また、インターネットを活用するため、メタバース特有のセキュリティ対策も必要です。
バーチャルにのめりこみすぎて、依存症となって現実世界との境界線がなくなってしまう恐れもあります。新しい技術のため、法整備が追い付いていない点も注意が必要です。
メタバースで実現できる課題解決や未来
現代、現実社会において、労働人口不足や、障がい者や高齢者の雇用問題があります。
メタバースで行動するアバターは、必ずしも人間である必要はありません。自分が望む容姿や性別、現実世界における障がいなどのハンディキャップを超えて仮想空間に存在できます。
現在住んでいる場所や人間関係とは関係がないため、社会から距離を置いている人でも、メタバース空間では社会へ参加するハードルが下がります。障がい者の社会進出、高齢者の活躍という社会目標を実現することも期待されています。障がい者や高齢者の経済活動への参加が、不足している労働人口、および消費者を得ることにつながります。
メタバース上で、より良い社会を構築するためには、メタバース内で収入を得る仕組みを構築し、サービスや商品を消費するように、経済サイクルが完結できるようになることが理想です。
メタバースの注目の先行企業
ここでは、すでにメタバースで活躍している選考企業について紹介します。
日本の企業
クラスター株式会社は、2016年2月にバーチャルSNS、cluster(読み方:クラスター)のサービスを開始しました。クラスターは、バーチャル渋谷やバーチャル大阪など、行政とコラボレーションをする取り組みもあり、日本のメタバースの先駆者としてユーザーが増えています。
例えば、多くのサポーターと一緒に観戦している感覚を味わえる、スポーツのライブビューイングが人気のサービスです。cluster上に構築された、横浜DeNAベイスターズの本拠地である横浜スタジアムで、実際の球場さながらに野球観戦を楽しめる「バーチャルハマスタ」が人気を集めています。
clusterではさまざまなイベントを開催し、2021年時点では累計動員数は1,000万人を超えようとしています。
海外の企業
ナイキは2021年12月、バーチャルスニーカー企業RTFKT(アーティファクト)を買収しました。
小売部門にメタバース思考を取り入れ始め、デジタルでデザインすることでサンプルを製造するコストを削減できるようになりました。
バーチャルサンプルの実現により、今後は販売価格を抑えることも期待でき、先進的思考を活用したこのような傾向はますます加速していくと予想されます。
またナイキは、若者向けのオンライン体験プラットフォームの構築を目指す「ロブロックス」と提携しました。ロブロックスのプラットフォームは、ゲームのプログラミングや、他のユーザーが作成したゲームのプレイが可能です。プラットフォーム内で、ユーザーとゲームを通じて密接なコミュニケーションを図ることで、関係をさらに強化する狙いがあります。
現実世界での売上につながる、メタバース空間を活用したマーケティング戦略と言えます。
日本の動向
矢野経済研究所の調査によると、国内のメタバース市場規模は拡大傾向にあり、2026年度には1兆円を超えると予測しています。
【参考資料】2021年度の国内メタバース市場規模は744億円、2026年度には1兆円を超えると予測
国内のメタバース市場規模は、同所の調査によれば2021年度は「744億円」と推計され、2022年度は「1,825億円」と、前年比245.2%までに成長すると推計されました。
新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、企業でのミーティングや法人向けのオンラインセミナー、バーチャル展示会など、バーチャル空間で実施されるイベントの需要が増したことが要因です。
国内のメタバース市場は、法人向けのサービスが先行して立ち上がっており、ビジネス向けのコンテンツが普及した後、個人ユーザー向けの市場に広まっていくと予想されています。
その後、メタバース空間での技術的なシミュレーションやインターネット通販など、さまざまな産業分野における活用の拡大から、2026年度には1兆円を超える市場規模になると推測されています。
まとめ
メタバース空間を活用することで、まるで現実世界と同じようなリアリティのある体験ができます。スポーツ観戦やショッピング、企業のミーティングや展示会など、個人利用だけでなくビジネスシーンにおいても幅広い分野で活用されています。海外に比べて国内では、提供されるサービスがこれからさらに充実されることが予想されます。
この記事をきっかけに、一度メタバース空間を体験されてみてはいかがでしょうか。