DIGITAL

データサイエンスとは?活用事例や手順、注意点を簡単に分かりやすく解説

SHAREこの記事をシェアする

DX化が進み、データの重要性が高まっている昨今、製造業を含むさまざまな業界で「データサイエンス」が注目されています。

本記事では「データサイエンスとは何か詳しく知りたい」「データサイエンスを活用する方法が知りたい」という方に向けて、データサイエンスの概要や実行手順、注意点などを分かりやすく解説します。各分野での活用事例などもあわせて紹介するため、実際の活用イメージも湧きやすくなるでしょう。

データサイエンスとは

データサイエンスとは、データの分析・解析から有益な知見を得ようとする学問のことです。ビッグデータの中から情報を収集し、分析したデータをもとに企業や社会に役立つ洞察を導き出します。

データサイエンスは統計学に近い学問だといわれますが、両者は領域の広さに違いがあります。統計学が「データの収集と分析」を専門としているのに対し、データサイエンスは「収集したデータを分析し、課題を解決するための価値を生み出す」というさらに広い範囲を担っています。

多くの企業や団体は日常的にさまざまなデータを蓄積していますが、こうしたビッグデータはそのままでは活用できません。そのため、ビッグデータの中から有益な情報を収集し、統計学やAIを用いて分析・解析を行うことで、品質や業務効率の向上、問題の解決などにつなげていくのです。

データサイエンスが注目される理由

データサイエンスが注目されるようになった背景には、ビッグデータやAIの普及があります。近年では、スマートフォンやSNS、インターネットの高速化といったデジタル技術の進化により、インターネット上に多くのデータが蓄積されています。

さらに、蓄積されたビッグデータを分析・解析するためのAIツールなども開発されています。このように、データを効率良く収集・分析し、簡単に活用できる環境が整ったため、データサイエンスに注目が集まるようになったのです。

データの重要性が高まる中、「データドリブン」という言葉がよく聞かれるようになりました。これまで3つの経営資源といわれていた「ヒト・モノ・カネ」にも「情報」・「時間」が加えられ、経験・勘だけに頼らずデータに基づいて意思決定や課題解決をする「データドリブン経営」が主流になりつつあります。

データサイエンティストの役割

データサイエンスにおける需要の増大に伴い、「データサイエンティスト」と呼ばれる専門職が生まれました。データサイエンティストとは、データサイエンスを駆使してビジネスに活かす職業のことです。以下では、データサイエンティストの具体的な仕事内容や求められるスキルについて解説します。

仕事内容

データサイエンティストの仕事は、企業のもつあらゆるデータを管理・分析し、その結果を課題解決や経営上の意思決定などに活用することです。データの分析だけでなく、ビッグデータを収集・分析するための環境構築から活用後の評価まで幅広い業務を行っています。

データサイエンティストの仕事を分かりやすくまとめると、次のような流れになります。

  • ビックデータを収集・分析するための環境を整える
  • データを効率良く分析するためにフォーマットを統一する
  • 多角的にデータを分析・解析する
  • 結果をもとに、新サービスの企画や業務プロセスの改善などを提案する
  • 実際に業務へ組み込み、評価と改善を繰り返す

求められるスキル

データサイエンティストには、特別な資格が必要なわけではありません。ただし、以下の分野においては、専門的な知識やスキルが求められます。

  • IT
  • 統計
  • ビジネス

それぞれどのようなスキルか、具体的に解説します。

IT

データの収集、処理や加工などを行うにあたり、プログラミングやデータベース運用のスキル、Hadoopなどビッグデータ分散処理のスキルが必要となります。その他にも、IoTやWebサイト、セキュリティなどの知識が求められます。

統計

収集したデータを分析・解析する際には、確率統計や線形代数、ラプラス変換といった数学の知識も必要です。また、統計学やパターン認識、AIといったデータ分析のスキルに加え、データ分析ツールの操作も習得しておく必要があります。

ビジネス

分析に必要なスキルだけでなく、分析結果をもとに活用方法を提案し、ビジネスの現場でマネジメントしていく力も求められます。具体的には、対象業務に関する知識はもちろん、課題解決に欠かせない論理的思考、経営陣に分かりやすく提案するためのプレゼンスキルなどが挙げられます。

データサイエンスの活用事例

業界や分野を問わず、さまざまな場面で活用されているデータサイエンスですが、実際にはどのような事例があるのでしょうか。データサイエンスの活用例を分野別に紹介します。

製造

製造の分野においては、品質管理や生産性向上などにデータサイエンスが活用されています。

例えば、製造ラインに設置したセンサーからデータを収集し、不良品の原因を分析して改善につなげたり、基準に満たない製品を感知してアラートを出したりすることで、品質向上に活用できます。

また、IoTから得たデータをもとに歩留まりやサイクルタイムを分析すれば、製造プロセスでの工夫やより効率的な人員配置を行うことができ、生産性の向上につながるでしょう。

製造部品の一つひとつに対し、原材料情報や仕入れ先情報、加工・組立工程での情報などを記録しておけば、トレーサビリティにも役立ちます。

営業・マーケティング

営業やマーケティングにおいては、顧客の行動データを分析することで成約につなげるという活用例があります。

例えば、顧客の過去の購入履歴やWebサイトの閲覧履歴データを分析し、より顧客に適した商材を提案営業することで、受注率を上げることが可能です。

また、マーケティングにおいては、検索エンジンの膨大なデータを分析し、ユーザーが求めている情報によりマッチングしやすい広告を表示するといった活用例もあります。

販売

販売においては、データサイエンスを用いて店舗や環境のデータ分析を行うことで、利益の増加や顧客満足度の向上を期待できます。

例えば、オンラインショップをもつ店舗ならば、実店舗とオンラインショップの在庫データを統合しておくことで、ユーザーがWebサイトから「いつ・どこの店舗で購入できるか」といった情報を得られるようになります。

複数の店舗をチェーン展開している企業であれば、全店舗の売上データを吸い上げて分析することもできます。「エリアごとの天候」や「周辺のイベント開催状況」といった地域性の高いデータを合わせてデータサイエンスを活用すれば、あるエリア・店舗で急激な数値の変動があるケースなどで、すぐに原因を特定し対策を講じることで、売上増にもつなげられます。

また、回転寿司店では、レーンに流すお皿のタグからデータを収集し、曜日や時間別にデータ分析を行うことで仕入れの最適化、廃棄の削減を実現している例もあります。

公共

データサイエンスはビジネスの場面だけでなく、自然災害や犯罪の発生予測などにも活用できます。

例えば、気象や地震などの観測データとシミュレーションデータを融合させると、豪雨や大地震などの自然災害を予測できます。また、水道・電気・ガスなどの使用状況データを分析して避難状況を可視化すれば、避難計画を立てる際にも役立ちます。

治安については、過去の犯罪発生データを分析し、犯罪が発生しやすい時間・場所を予測することで、未然に防ぐことができます。また、これまではプロファイラーの経験・勘に依存しがちだったプロファイリングにデータサイエンスを活用することで、より精度の高い防犯や犯罪捜査が可能になるでしょう。

データサイエンスのやり方・手順

膨大なデータを取り扱うデータサイエンスは、正しいやり方で行うことが大切です。データの消滅など取り返しのつかない事態を避けるため、正しい手順で効率的に進めましょう。

実際に取り組む際の手順は、以下のとおりです。

  • 目的の決定
  • データの取得・準備
  • データの見える化
  • データの前処理
  • モデリングの実行
  • 評価
  • レポートの作成
  • 意思決定

まずは、データサイエンスを用いて分析・解析する目的を明確に設定します。目的を決めたら、データの取得・準備を行います。なるべく質の高いデータを準備することがポイントです。

データを準備できたら、分析しやすい形への「見える化」を行います。また、データはそのまま活用できない場合が多いため「前処理」が必要です。この段階でデータが足りない場合は、データを追加で取得しておきましょう。

すべてのデータの処理が終わったら、機械学習や統計学の手法を用いてモデリングを実行し、結果を確認します。

データサイエンスの評価が完了したら、結果を分かりやすくまとめたレポートを作成しましょう。データサイエンスの結果をどのように活用できるのかを明確に提案することが大切です。レポートを踏まえて、分析の成果をどう活用するかを決定します。意思決定の段階で躓くと、データサイエンスの結果が良くても業務に活かせなくなってしまう場合があるため、経営陣と認識のズレが生じないように注意しましょう。

データサイエンスの注意点

近年需要の高まっているデータサイエンスですが、ビジネスに活用する際には注意するべきポイントもあります。以下では、データサイエンスの注意点を3つ紹介します。

データサイエンティストを確保する

データサイエンスを導入するためには、優秀なデータサイエンティストの確保が必要不可欠です。実行できる人材がいなければ、データサイエンスの活用は難しくなってしまいます。

データサイエンティストは幅広い領域への専門的な知識が求められる仕事です。データ分析力だけでなく、企業の抱える課題を見つけ出し解決するための論理的思考力、データサイエンスで導き出した結果の活用を分かりやすく提案するためのコミュニケーション能力なども備えている必要があります。

採用難が叫ばれる中、幅広いスキルをもった優秀なデータサイエンティストの確保は難しい企業も多いのが現状です。将来的にデータサイエンスの実用化を目指すなら、自社においてデータサイエンスに特化した人材育成を行うことも有効でしょう。

分析のPDCAを回す

データサイエンスを有効に活用するためには、一度の分析で終わることなく、何度もデータ分析を繰り返すことが重要です。

一度目の分析と業務への組み込みを終えてからも、繰り返しデータ分析を行い、仮説を立てながら効果検証をしていく必要があります。異なるサンプルで何度も分析・解析を繰り返すことで、より実態に即した結果を得られます。

分析のPDCAをしっかりと回すことが、品質や業務効率の向上、ひいては企業全体への好影響につながっていくのです。

マネジメント層の理解を得る

いくら現場がデータサイエンスを求めていても、経営幹部層がデータサイエンスの必要性を感じていなければ、導入には至らないでしょう。そのため、マネジメント層の理解を得ることも重要です。

データサイエンスは、さまざまな分析方法対象データを用いて、試行錯誤しながら取り組んでいくものです。一度のデータ分析で終わるわけではなく、思うような結果が得られるまで何度も分析を繰り返す必要があります。そのため、採算性や実現性が不透明な点をデメリットととらえている経営陣もいるかもしれません。

一朝一夕では結果が出ないこと、それでも長期的に見れば必ず成果につながり、自社にとってプラスになることをあらかじめ説明し、データサイエンスへの理解を得るようにしましょう。

まとめ

データサイエンスは、ビッグデータの中から情報を収集し、分析したデータをもとに企業や社会に役立つ洞察を導き出す手法です。

企業がデータサイエンスを導入すると、ビッグデータの中から有益な情報を収集し、分析や解析を行うことで、品質や業務効率の向上、問題の解決などにつなげることができます。

最近では、ビジネスの分野にとどまらず、公共や教育の場においても活用が広がっています。技術の進歩に伴い、収集するデータの量や質が担保されることで、分析結果の精度も向上することが期待されるため、今後さらにデータサイエンスへの注目が高まっていくでしょう。

PEAKSMEDIA編集チーム

PEAKS MEDIAは製造業の変革やオープンイノベーションを後押しする取材記事やお役立ち情報を発信するウェブサイトです。

際立った技術、素材、人、企業など多様な「 PEAKS 」を各企画で紹介し、改革を進める企業内イノベーターを1歩後押しする情報をお届けします​。

SHAREこの記事をシェアする