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ポジショニング戦略とは
ポジショニング戦略とは、自社の商品やサービスが消費者にどのようなイメージで位置づけられるかを考え、そのイメージを強化するためのマーケティング戦略です。
そもそもポジショニングとは、市場における自社の商品やサービスの相対的な位置づけを指します。 例えば、高級感のある商品、安さが売りの商品、品質が高い商品など、消費者が商品を選ぶ際に重視する要素に応じてポジショニングは異なります。
さらにポジショニングは、マーケティングで分析を行う際に用いられるSTP分析という手法のなかの1部分でもあります。 STP分析とは、市場をセグメンテーション(細分化)、ターゲティング(対象選定)、ポジショニング(位置づけ)の3つのステップに分けて分析をするフレームワークです。
また、ポジショニング戦略はブランディングにも密接に関わっています。ブランディングとは、自社の商品やサービスに独自の価値や魅力を付加し、消費者へ認知させることです。
ポジショニング戦略によって、自社の商品やサービスの特徴や差別化要素を明確にし、消費者に強い印象を与えることができます。
ポジショニング戦略が必要な理由
ポジショニング戦略が必要な理由は、市場が多様化し競争が激化しているところにあります。
現代の消費者は、商品やサービスの選択肢が豊富にあり、自分のニーズや好みに合わせて購入できます。 そのため、企業は自社の商品やサービスが、消費者にとってどのような価値を提供するのか、どのように他社と差別化するのかを明確にする必要があります。
ポジショニング戦略によって、自社の商品やサービスの強みや魅力を消費者に伝えられるようにます。
例えば、ユニクロは「高品質で低価格なカジュアルウェア」、スターバックスは「コーヒーだけでなく、くつろぎの空間」というポジショニングを確立しています。両者のポジショニングによって消費者は、その商品を購入、または体験することでどのようなメリットを享受できるのかが根付いているといえるでしょう。
またポジショニング戦略は、消費者の購買意欲や信頼感を高めることにもつながります。
自分自身の価値観やライフスタイルに合った商品やサービスを選びたいと、消費者は考えます。 ポジショニング戦略によって、自社の商品やサービスが消費者のニーズや欲求を満たせるようになり、さらに自社の商品やサービスに対する消費者の認知度や好感度を向上させることも可能です。
ポジショニング戦略のやり方
ポジショニング戦略は、STP分析を用いて策定されます。
また、STP分析とはマーケティング戦略を練るためのフレームワークであり、それぞれ以下の頭文字から成り立っています。
- S:セグメンテーション(細分化)
- T:ターゲティング(対象選定)
- P:ポジショニング(位置づけ)
ポジショニング戦略は、STP分析を用いて以下の手順によって策定されます。
- セグメンテーションとターゲティングを行う
- ポジショニングマップの軸を決める
- ポジショニングマップ内で自社と競合も位置を決定する
- 定期的に見直しをする
それぞれ詳しく解説します。
セグメンテーションとターゲティングを行う
ポジショニング戦略は、市場をセグメンテーション(細分化)し、ターゲティング(対象選定)を行うことから始まります。
セグメンテーションとは、消費者の属性やニーズ、行動などによって市場を細かく分類することです。 例えば、年齢、性別、収入、趣味、価値観などがセグメンテーションの基準になります。
また、 ターゲティングとは、セグメンテーションした市場の中から、自社の商品やサービスに最も適した対象となる市場(セグメント)を決定することです。 ターゲティングを行う際には、市場の規模や成長性、競争状況、利益性などを考慮することが大切です。
セグメンテーションとターゲティングを怠ると、マーケティングや販売における戦略の見通しがつかず、方向性を見失ってしまいます。
ポジショニングマップの軸を決める
次に、セグメンテーションとターゲティングから得られたデータを活用して、ポジショニングマップの軸を決定します。
ポジショニングマップとは、市場における自社と競合の位置づけ(ポジショニング)を図を用いて可視化することです。この際のポジショニングマップの軸とは、消費者が商品やサービスを選ぶときに重視するポイントのことです。 例えば、価格、品質、機能、デザイン、イメージなどが軸になります。
また、ポジショニングマップの軸を決める際には、消費者のニーズや市場の動向を分析し、自社の強みや差別化できる要素を洗い出すことが重要です。軸の決定により、チームでの情報共有がしやすくなり、どのように戦略を立てていくのかの議論を深めやすくなります。それにより、社内での方針を確立させることにつながります。
ポジショニングマップ内で自社と競合も位置を決定する
ポジショニングマップの軸の決定後、ポジショニングマップ内での自社と競合の位置を決めていきます。 自社と競合の立ち位置を明確にすることで、自社の商品やサービスが消費者にとってどのような価値を提供するのか、どのように他社と差別化していくのかを明確にできます。
上図のように、マッピングは縦軸と横軸に相反する二つの用語をいれ、四象限をつくるものが多用されます。また、縦軸と横軸は関連性の低いものを入れることを意識することがポイントです。
ポジショニングマップ内に自社と競合を配置していく際には、消費者の認知度や好感度、購買意向などを調査し、客観的なデータに基づいて判断していくことが重要です。
なお、主観だけではなく、客観的に自社を観察する視点を持つことも、自社と競合の位置を決定する際に注意すべき点です。
定期的に見直しをする
ポジショニング戦略は、一度組み立てて終わりではなく、何度も定期的に見直しをすることで戦略をブラッシュアップするにつながります。市場や消費者のニーズは常に変化しているため、ポジショニング戦略も時代や環境に合わせて柔軟に変化させる必要があります。
新しく競合となる企業の台頭や、AIなどの登場によって消費者の価値観が変わるようなケースでは、作成したポジショニングマップを変化させなければなりません。定期的に見直しを図ることで、自社の商品やサービスの強みや魅力を維持し、消費者に選ばれ続けるようになります。
定期的な見直しにより、自社の商品やサービスの価値を変化させるきっかけにもなります。どのようなユーザーに使われているのか、なぜ使われなくなってしまったのかなど議論を深めることで、企業全体の事業計画の立て直しにもつながるでしょう。
ポジショニング戦略の注意点
企業のマーケティングやブランディングにおいて、ポジショニング戦略は重要であり、さまざまなメリットがあります。しかし、効果的なポジショニング戦略を行うには、注意しなければいけない点もあります。
自社の商品やサービスのポジショニング戦略には、以下の注意点を意識することが重要です。
- ポジションの把握は正確に行うこと
- 自社に合ったターゲティングを行うこと
- 顧客の視点を忘れないこと
これらの注意点を意識しなければ競合との差別化が生まれず、低価格競争の波に飲まれてしまいかねません。
ポジションの把握は正確に行うこと
ポジショニング戦略を成功させるためには、自社の商品やサービスが市場においてどのような位置づけにあるかを正確に把握することが重要です。
そのためには、主観的なイメージだけではなく消費者の認知度や好感度、購買意向などを客観的に測定する必要があります。例えば、アンケートやインタビューなどの調査方法を用いて、消費者の意見や感想を収集します。
また、競合の商品やサービスの分析も欠かせません。 競合のポジショニングや戦略を調べることで、自社との差別化要素や競争優位性を見つけることにつながります。
これらの活動により、自社の商品やサービスの強みや弱み、改善点や課題を明らかにできます。
自社に合ったターゲティングを行うこと
ポジショニング戦略を効果的に展開するためには、自社に合ったターゲティングを行うことにも注意しましょう。
ターゲティングでは、市場をセグメンテーションした中から、自社の商品やサービスに最も適した対象を選びます。その際、自社の商品やサービスの特徴やメリット、価値、市場の規模や成長性、競争状況、利益率などを考慮することも重要です。
例えば、高級感のある商品やサービスは、高収入層や富裕層、品質やデザインにこだわる層などにターゲティングします。安価な商品にニーズのある消費者に対してアプローチしても、消費者のニーズや欲求に応えることができず、無駄な広告費や販促費を費やしてしまいます。
顧客の視点を忘れないこと
ポジショニング戦略を実施する際には、顧客の視点を忘れないことも大切です。 顧客の視点を持って、消費者が商品やサービスを選ぶ際に重視する項目や価値観を洗い出します。
価格、品質、機能、デザイン、イメージ、感情などが顧客の視点です。顧客のニーズを正確に把握できていなければ、顧客が製品を決定する際にまったく重視しない要素を軸として選んでしまう可能性があります。結果、差別化できていたとしても、製品が売れないという状況に陥りかねません。
常に顧客の視点に立つことで、自社の商品やサービスが消費者にとってどのようなメリットや魅力を持つのか、どのように訴求すべきなのかを考えられるようになります。
また、消費者の満足度や信頼感を高めることはブランディングにもつながります。 消費者のニーズや動向を常に分析し、フィードバックやクレームにも真摯に対応することが重要です。
ポジショニング戦略の成功事例
効果的なポジショニング戦略をとるためには、他の企業における成功事例を確認することが第一歩です。
ここでは、以下の企業のポジショニング戦略の成功事例を紹介します。
- 事例①:ポカリスエット
- 事例②:スターバックス
- 事例③:坂本造機
事例①:ポカリスエット
ポカリスエットは、大塚製薬が製造・販売するスポーツドリンクであり、ポジショニングを変更しながら市場のニーズに応えてきました。 結果としてスポーツドリンク市場のトップシェアを獲得し、ロングセラー商品となっています。
発売当初のポカリスエットは「飲む点滴」というキャッチフレーズを元に販売していました。 しかし、消費者にとってあまり魅力的でなかったため、「スポーツ時に水分補給する飲み物」というリポジショニングへ変更したことでニーズにマッチしたのです。
ポカリスエットは、ポジショニングを変えることで競合との差別化を図ることに成功し、スポーツドリンク市場を牽引するという地位を確立しています。
事例②:スターバックス
世界最大のカフェ形態の店舗を持つスターバックスでは、ポジショニングを「サードプレイス」というコンセプトで統一し、高いブランド力を築きました。 それにより、低価格競争が激しいコーヒー市場で高い利益率を維持し、世界中に店舗を展開できたのです。
スターバックスは、「自宅や職場以外の第三の居場所」というポジショニングに沿った戦略を展開しました。 例えば、店舗の内装や音楽、Wi-Fiなどの環境を整えたり、バリスタと呼ばれるコーヒーの専門家の接客により顧客満足度の向上に努めました。 今では、消費者にとって魅力的なサードプレイスとして認知されています。
ポジショニングを「サードプレイス」というコンセプトで統一し、そのポジションを強化することで競合との差別化を図り、スターバックスはカフェ形態の店舗として世界的なブランドであり続けています。
まとめ
企業のマーケティングやブランディングには、ポジショニング戦略が欠かせません。ポジショニング戦略を立てる際には、STP分析が用いられます。
STP分析では、市場をセグメンテーション(細分化)、ターゲティング(対象選定)、ポジショニング(位置づけ)の3つのステップに分けて分析します。
また、ポジショニング戦略を効果的に行うポイントは、「ポジションの把握は正確に行う」「自社に合ったターゲティングを行う」「顧客の視点を忘れない」などが挙げられます。。
この記事が、効果的なポジショニング戦略の一助となれば幸いです。