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アクセラレーターとは
アクセラレーターとは、シード期※以降のスタートアップ企業や起業家をサポートし、事業の成長を支援する事業者のことです。英語で「加速させるもの」を意味する「アクセラレーター」は、会社(または事業)立ち上げ期に必要なスタートダッシュを加速させます。
【スタートアップの成長ステージ】
ステージ | 概要 |
シード | その名の通り「種」。事業アイデアの段階である最初のステージ。 |
アーリー | 起業しマネタイズを進めるステージ。 |
ミドル | 安定した収益が得られ、事業のスケールを見込めるステージ。 |
レイター | 事業成長が軌道に乗り、イグジットの直前であるステージ。 |
なお、アクセラレーターは基本的に数ヶ月の期間を設けて成長プログラムの企画立案や実行支援をすることが一般的です。具体的には、企業ごとの事業内容や規模に合わせた内容で提案されます。
アクセラレーターとインキュベーターの違い
アクセラレーターとインキュベーターは、その目的に大きな違いがあります。「ビジネスの拡大」を目的としたアクセラレーターに対し、インキュベーターは「イノベーションやアイデアの創出」を目的としています。
アクセラレーターは、スタートアップやベンチャーが事業を開始する初期段階であるシード期以降の未上場企業に支援することが一般的です。
一方、インキュベーターはシード期以前において、アイデアを実際のビジネスへと成長させ、企業などを支援することが多いです。既にある事業を成長軌道に乗せるアクセラレーターより、支援期間も長くなります。
アクセラレーター | インキュベーター | |
支援目的 | ビジネスの拡大 | イノベーションやアイデアの創出 |
支援対象 | シード期以降のスタートアップやベンチャーなど | シード期以前のスタートアップやベンチャーなど |
支援期間 | 数ヶ月程度 | 数年または期限なし |
アクセラレーターはビジネスプランを公募して選考するのに対し、インキュベーターはビジネスパートナーから推薦を受けたビジネスプランを対象としている点にも違いがあります。
アクセラレータープログラムとは
アクセラレータープログラムとは、アクセラレーターからのサポートを受けてスタートアップ企業との共創・協業や出資を目的としたプログラムです。
アクセラレーターと、支援対象のスタートアップ企業双方の成長を目的とし、互いにメリットをを享受する事業モデルを実証します。主に大企業や地方自治体などが主催することが多く、大企業や地方自治体ならではのマーケティング力を頼りにできる利点があります。
その他、市場に関する情報収集やネットワークも活かしたビジネスに役立てられるため、支援を受ける側にとっては大きな力となります。
また、アクセラレータープログラムは支援する側である企業や地方自治体にもメリットがあります。スタートアップやベンチャーの強みであるアイデアを目の当たりにすることで、革新的なビジネスを生み出せる可能性が出てくるからです。
意思決定に時間がかかり、予算等の制約も多い企業・地方自治体だからこそ、フットワークを軽くするためアクセラレータープログラムを活用することが増えています。
アクセラレータープログラムの種類
アクセラレータープログラムは、主に下記の5種類に細分化されます。
- コーポレート型(自社実施型)
- Powered by型
- コンソーシアム型
- ビジネスマッチング型
- 伴走型
下記でそれぞれについて解説します。
コーポレート型(自社実施型)
コーポレート型のアクセラレータープログラムは「自社実施型」と呼ばれることもあり、アクセラレーターである大企業・地方自治体等が運営から実施まで一気通貫型でサポートする手法です。
公募・選定・支援・運営までを社内で完結させるのが最大の特徴であり、既にアクセラレータープログラムに関するノウハウを持つ企業が実施することが多い傾向にあります。
Powered by型
Powered by型は、アクセラレータープログラムに特化した運営者が大企業(または地方自治体)とスタートアップとの間に入る手法です。第三者として客観的な立場でアクセラレータープログラムの是非を判断してくれる存在がいるため、双方のメリットや効率を最大化できるのが特徴です。
コンソーシアム型
コンソーシアム型は、地方自治体や地域金融機関など複数の主催者が共同でアクセラレータープログラムを開催する手法です。「コンソーシアム」という言葉自体に「共通の目的を持つ複数の組織が協力するために結成する共同体」という意味があり、複数の事業者が参画します。
また、地方創生など共通の目的を持つ事業者が参画することが多いです。
ビジネスマッチング型
ビジネスマッチング型は、アクセラレータープログラムに特化した運営者が支援対象と支援元をマッチングさせてサポートする手法です。両社の目的が一致する企業同士をマッチングするため、選考の工数を減らしやすく、多様なビジネスプランに適応できます。
伴走型
伴走型は、支援する側と支援を受ける側との間にアクセラレーターが入る手法です。アクセラレーターが、よりスタートアップ企業の内部にまで入り込む特徴があります。
事業に関するアドバイスだけでなく、組織作り・人材採用・スタートアップ企業ならではのアイデアを事業化することなど、具体的な実務に至るまで深く入り込んで支援するのがポイントです。
アクセラレータープログラムの流れ
アクセラレータープログラムは、以下の流れで進行します。
- ビジネスアイデアの募集
- ビジネスアイデアの選抜
- 採択企業の決定
- 支援開始
- 結果発表
それぞれのフェーズについて解説します
ビジネスアイデアの募集
まずは、主にインターネット上でアクセラレーターがビジネスアイデアの募集をおこないます。アクセラレーターがプログラムのテーマを決め、概要を公開する形で募集するのが一般的です。応募時は、考えている協業案を分かりやすく言語化してまとめることが重要です。
その後興味を持ったスタートアップや、自社と関連性があると感じたベンチャー企業が公募を見て応募することで次の「選抜」に進みます。
ビジネスアイデアの選抜
応募された中から、条件を満たしていて支援可能性の高いと感じるビジネスアイデアを絞り込んでいきます。人気の高いプログラムや注目度の高いテーマの場合、選考が複数ステップに細分化されることがあります。書類選考、複数回の面談・面接の他、オフィス見学やミートアップ※などを含むことも多いです。
※ミートアップとは、共通した興味のある分野・趣味などについてインターネット上で告知され、参加者が集まるイベントのこと
採択企業の決定
ビジネスアイデアが決定後、採択企業の決定に移ります。人気のアクセラレータープログラムでは、数百件にのぼる申し込みの中から採択企業を決めるケースもあります。アクセラレーター・採択企業(大企業や地方自治体)・スタートアップ企業の3者がお互いに同意した場合、支援の決定に進みます。
その後、アクセラレータープログラムを行う大手企業や自治体と、参加企業がお互いに出資や協業を希望した場合、出資や契約手続きから実施までの準備を進めます。
支援開始
採択が決定して投資契約が完了した以降は、実際に数週間から数ヶ月程度に渡ってアクセラレータープログラムが実施されます。支援期間は「アクセラレーション」と呼ばれることが多く、事業拡大・企業成長に向けてアドバイスやプロジェクトを進めていきます。
結果発表
支援期間であるアクセラレーションが終了してからは、結果発表に向けて動きます。実際にどの程度ビジネスを拡大させられたか、想定通り動けたポイントと想定外だったポイントがどこかなど、複数の観点からレポートをまとめます。
書面でまとめるだけでなく、社内外の顧客に向けて報告会やプレゼンテーションをおこなうことも多く、規模によってはメディアに掲載されることもあります。
アクセラレータープログラムのメリット
アクセラレータープログラムは、スタートアップ企業側にも大企業・地方自治体側にも多くのメリットがあります。下記でそれぞれの立場で得られるメリットについて解説します。
スタートアップ企業が参加するメリット
スタートアップ企業がアクセラレータープログラムに参加するメリットは、主に下記の通りです。
- アクセラレーターが持つ事業化ノウハウや成長ノウハウを学べる
- 社外からビジネス拡大のアイデアを募られる
- 大企業が持つネットワークやコネクションを利用できる
- ビジネスに関する情報収集に役立つ
スタートアップ企業の課題として、顧客の獲得や製品・サービスの安定供給等が挙げられます。大企業やアクセラレーターのサポートを受けることができれば、その分野に強いプロ集団からノウハウやアドバイスを得られるようになり、スタートアップ企業にとって大きなメリットを得られます。
大企業が運営するメリット
大企業がアクセラレータープログラムに参加するメリットは、主に下記の通りです。
- 自社にはない新たなアイデアを学べる
- 社内のイノベーション創出を刺激できる
- 自社事業に多様性が生まれる
大企業の課題として、既存の事業だけに依存してしまいがちなことが挙げられます。しかし実際には顧客ニーズが刻一刻と変化しているため、一度成功したビジネスモデルに依存するのは危険と言えます。
アクセラレータープログラムに参加してベンチャーやスタートアップのアイデアを見ることで、社内のイノベーション創出を刺激したり自社事業に多様性を持たせたりするヒントが得られます。
アクセラレータープログラムに参加する際の注意点
アクセラレータープログラムに参加することで得られるメリットは多いですが、一方で下記のような注意点・デメリットも存在します。
- 双方の方向性に違いがあるとトラブルに発展する可能性がある
- 競合他社と情報共有することによる機密保持リスクが生じる
- 意思疎通に時間がかかる
アクセラレータープログラムでは、アクセラレーター・スタートアップ・大企業の3者が関与します。特にスタートアップと大企業との間で方向性の違いが生じるとトラブルに発展する恐れがあるので注意しましょう。
もともと別会社にいるメンバー同士なので意思疎通に時間がかかりやすく、プロジェクト内コミュニケーションに壁ができて意思決定のハードルとなるのも注意点です。
また、参加企業に対して知的財産の一部を提供するようなアクセラレータープログラムでは、競合他社にアイデアや情報を抜き取られる可能性もあります。経営にどの程度影響を及ぼすか、メリットとデメリットを天秤にかけながら判断していく必要があります。
まとめ
アクセラレータープログラムは、スタートアップ企業のアイデアをビジネスとして成功させるためのプログラムであり、支援する側である大企業や地方自治体にもメリットがあるのが特徴です。
インキュベータープログラムと比較して短期間で実施されることが多く、効果測定までの期間も短めなので、メリット・デメリットを天秤にかけながら参加可否を判断していきましょう。