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デジタル田園都市国家構想をわかりやすく解説!地方創生の鍵となるか?実現した未来とは

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「デジタル田園都市国家構想」や「新しい資本主義という言葉を耳にしたことはありませんか?政府が掲げる成長戦略の重要な柱の1つですが、まだ新しい取り組みであることもあり、詳しく知らない方もめずらしくありません。

そこで本記事では、デジタル田園都市国家構想の概要や取り組み、実現した未来について詳しく解説します。「聞いたことがある」状態から「どのようなものか理解できた」とより深く知りたい方は、参考にしてください。

デジタル田園都市国家構想とは?

デジタル田園都市国家構想とは、2021年、岸田文雄内閣総理大臣の下で発表された「新しい資本主義」の重要な柱の一つです。人口減少や少子高齢化など地方が抱える問題をデジタルの力で解決し、都市部との格差をなくして、住む場所や能力・貧富に関わらず、誰もが便利で快適に暮らせる社会を実現することを目指します。

デジタルの力で「地域の個性と豊かさ」を活かし、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会、「心ゆたかな暮らし」(Well-Being)と「持続可能な環境・社会・経済」(Sustainability)を実現していく構想です。

政府はデジタル活用によって課題解決に取り組む自治体の数を2024年度末までに1,000団体にする計画で、2021年補正予算と2022年当初予算を合わせ、5.7兆円を投じることでも注目を集めました。

デジタル田園都市国家構想提唱の背景

地方には、人口減少や少子高齢化、産業空洞化などの社会課題があります。そこで政府は2014年より地方の活性化を狙って地方創生に取り組んでいますが、首都圏と地方の転出入均衡達成目標は、いまだに達成できていません。

そんな中、新型コロナウイルス感染症が流行し、地方の活性化が思うように進まないままとなってしまいました。しかし、一方で一部地域ではデジタル技術の活用が進み、他地域の見本となる優れた取り組みも出てきました。また、感染症の影響が長期にわたったことで、地方への移住に対する関心の高まりや人の流れに変化の兆しが見られるようになりました。

こうした国民の意識・行動の変化を受け、デジタルは地方の課題を解決する鍵であると政府は考えます。地方の活性化が喫緊の課題であるとして、官民双方での地方におけるデジタルトランスフォーメーションを積極的に推進していく必要性に気づいたことから、デジタル田園都市国家構想は生まれました。

デジタル田園都市国家構想実現に向けての取り組み

デジタル田園都市国家構想実現のためには、以下の4つの取り組みが不可欠です。

  • デジタル基盤の整備
  • デジタル人材の育成・確保
  • 地方の課題を解決するためのデジタル実装
  • 誰一人取り残されないための取り組み

ここからは、それぞれの取り組み内容を詳しくみていきましょう。

1. デジタル基盤の整備

まず、構想を支えるデジタル基盤の整備が必要です。「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」(令和4年3月29日公表)の実行等により、光ファイバ、5G、データセンターや海底ケーブルなどの通信インフラの整備が推進されています。

総務省の「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」に基づき、地方ニーズに即した整備が実施される予定で、光ファイバの世帯カバー率と5Gの人口カバー率について、それぞれ2027年度末と2030年度末までに99.9%にすると目標が掲げられました。

MaaSなどICT活用による利便性の高い公共交通ネットワークの再構築など、持続可能性を高める支援も実施するほか、海底ケーブルの完成、全国のデータセンター拠点の整備など、ハード面での整備も進められています。

また、既存の技術の普及だけでなく、新しい技術の開発にも力を入れ、日本が世界をリードすることを目指します。

2. デジタル人材の育成・確保

デジタル技術を活用して社会課題解決を進めるにあたり、現状はデジタル人材が質・量ともに不足しています。また、デジタル人材が都市圏に偏在しているという問題もあります。

そこで、政府は「デジタル人材地域還流戦略パッケージ」に基づき、人材の地域への還流促進・労働人口のデジタルリテラシーの向上を掲げています。

<政府の主な取り組み方針>

  • デジタル人材育成プラットフォームの構築
  • 職業訓練のデジタル分野の重点化
  • 高等教育機関等におけるデジタル人材の育成
  • デジタル人材の地域への還流促進

政府は、約230万人の育成・確保が必要と見積もり、2024年度末までに年間45万人育成の体制を整え、2026年度末までに230万人の育成を目指しています。小中高大といった教育機関での教育はもちろん、現役社会人に向けてのオンライン教育や職業訓練なども普及させる予定です。

3. 地方の課題を解決するためのデジタル実装

構想では、ただデジタル活用すればよいのではなく、デジタルの力で地方の社会課題解決や魅力向上を図り、過疎化や少子高齢化といった課題を解決、地方と都市の格差を解消するのが目的です。政府は、次の4つの取り組みを推進しています。

  • 地方に仕事をつくる
  • 人の流れをつくる
  • 結婚・出産・子育てがしやすくなる地域づくり
  • 魅力的な地域づくり

これらを通じ、2024年度末までにデジタル実装に取り組む地方公共団体1000団体の達成が掲げられています。これには、地域ごとの特色を活かした分野横断的な支援が欠かせません。

4. 誰一人取り残されないための取り組み

デジタル田園都市国家構想の実現においては、高齢者や生活困窮者などのデジタル技術に慣れていない・利用していない人も含め、あらゆる人を置き去りにせず、すべての人が豊かさを実感できる環境を整えなければなりません。

決して、デジタル化により格差や分断が生まれないように注意することが重要です。「誰一人取り残されない」社会の実現は、この構想のキーとなる要素といえるでしょう。

<「誰一人取り残さない」ための取り組み>

  • デジタル推進委員の展開
  • デジタル共生社会の実現
  • 経済的事情等に基づくデジタルデバイドの是正
  • 利用者視点でのサービスデザイン体制の確立
  • 「誰一人取り残されない」社会の実現に資する活動の周知・横展開

官民の垣根を取り払い、国・地方公共団体・民間企業・住民などがそれぞれ協力することで、「皆で支え合うデジタル共生社会」の構築、その先にあるWell-Beingの実現を目指しています。

デジタル田園都市が実現した未来

なんといっても、地方での新産業や雇用機会の創出により、東京一極集中が解消されます。地方は人口が拡大し、都市と地方の医療、教育、通信、交通、物流をはじめとしたあらゆる格差がなくなります。

その結果、地方でも都市と変わらない生活が実現するのです。地方に住み、働きながら都市に匹敵する情報やサービスが利用できるようになります。

つまり、デジタル田園都市国家構想とは、地方の「不便・不安・不利」の3つの「不」を解消し、またそれにとどまらず、それぞれの魅力を高める。つまり、Well-BeingやSustainabilityが実現し、国内のどこでも誰もが便利で快適に暮らせるようになるのです。

まとめ

デジタル田園都市構想とは、「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」をデジタルの力で実現していく取り組みであることを説明してきました。「不便・不安・不利」といった地方の「不」を解消し、魅力を高めることを目指します。そして、全国民のWell-Beingを実現する。そのために、政府はさまざまな取り組みを行っているのです。

進化するデジタル技術を活用することにより、持続可能な社会を目指す政府の取り組みにこれからも目が離せません。

PEAKSMEDIA編集チーム

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